オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『シン・ジョーズ 最強生物の誕生』

陸行鮫(Land Shark), 74min

監督:チェン・シユー 出演:リクン・ルオ、シー・メイ・リー

★★

概要

遺伝子操作されたサメ。

短評

中国製のサメ映画。邦題(あるいは英題)も設定も、色々と既視感のある一作だったのだが、少なくとも“本家”である無印の『シン・ジョーズ』よりはマシな映画だったかと思う。邦題について言及するならば「シン」の要素は同作の方があったかとは思うものの、中国製パニック映画らしく良いともダメとも言い難い中途半端なクオリティのCGを出し惜しみしておらず、真っ向勝負な作品に仕上がっていた。まあ、サメが暴れているだけの映画には間違いないが、ちゃんと暴れるので割と見られなくはない。

あらすじ

中国の深海研究センターではガン治療のためにサメの遺伝子研究が行われていた。しかし、オスのはずが妊娠したサメが突如として暴走をはじめ、防弾ガラスを突き破ってセンター内部へと侵入。サメハンターの宋や研究員の叶博士らはなんとか地上へと脱出したものの……。

感想

サメの遺伝子研究を深海施設で行っているという設定(そしてビジュアルも)があまりにも『ディープ・ブルー』すぎる気はするものの、この設定自体は他作品でもパクられすぎて、もはや「パクリだからダメだ」とは言えないレベルに達している。『MEG』にだって同じような施設が登場した覚えがあるし、サメ映画において「遺伝子操作」は、そして“割と予算のあるサメ映画”において「海中センター」は、欠かせない存在となっている。

サメの侵入を許してからしばらくは、『パニック・マーケット』よろしく半水没した施設内で棚に登ってサメの攻撃を防ぐ。それが終わると、どういうわけだか水上ではなく陸上へと続くトンネルを抜けて地上に出るわけだが、なんとサメがミミズと融合して陸上でも活動できるようになっていたという話。色々と出し惜しみがない。陸に上がったサメが都市部を襲うシーンもあったりと、「とりあえずできることは全部やってみた」という印象だった。ただし、エキストラを大量動員した都市部のシーンは割と短めで、予算事情が見え隠れしていなくもなかった。

とういわけで英題の『Land Shark』な展開になったわけだが、これまた“本家”の『ランドシャーク』よりは遥かに、遥かによく出来ていたと言えるだろう(海中センターの水深よりも低いハードル)。普通にCGのサメが暴れ回るだけで、同作に比べれば『ジュラシック・パーク』前後の作品以上の違いが生まれる。あとはミミズよろしく地上を這いずり回るサメ相手に、少女を救い、悪い社長が「こいつは生物兵器にするぜ」と言い出し、そして最後はサメハンターがなんとかしてくれる。キャラの濃いデブが美味しいところをもっていく点と言い、ハチャメチャやった割にはテンプレ通りながらも手堅くまとまっていた。

短い尺の中に見所が詰まっていたとは思うのだが、なんとなく「普通に面白かった」とまでは褒められない。結構頑張っていたとは思うのだが、非シリアス作品としては“ネタにならない”のが今ひとつだったのだろうか。陸上を這いずり回るサメというだけで十分に阿呆なはずなのに、他のサメ映画群が先鋭的すぎて感覚が麻痺している。

キャラクターの名前が漢字表記だったのは割と珍しい気がする。悪い社長が「銭社長」という名前なので、守銭奴の彼の名を“意訳”したのかと思いきや、ちゃんとエンドロールにも「銭」の文字があった。ちなみにデブは「ブー」と呼ばれていた。このデブが「ブー理論だ!」と言って“味付けした魚”でサメを誘き寄せるシーンがあるのだが、タレをぬっただけの魚を海中に沈めてしまって何か意味はあるのか。それでもフレイバーが残るくらい強烈な味付けだとすると海洋汚染が心配になるが、その辺りも中国映画的ということで。

コメディの要素は凡庸だったが、海で牛の頭が釣れれば「魚が食べたかったんだろ」と、オスザメの妊娠が発覚すれば「閉じ込められて落ち込んだから女々しくなった」と即座に反応するセンスはなかなかのものだと思う。