オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『エンドレス・エクソシズム』

The Possession of Hannah Grace, 85min

監督:ディーデリク・ヴァン・ローイェン 出演:シェイ・ミッチェル、カービィ・ジョンソン

★★

概要

悪魔に取り憑かれた死体。

短評

死んだ後も乳と股間を隠すポーズを取り続ける、恥じらいに満ちた死体が気になって仕方のないホラー映画。他にも余計なところばかりが目につく一作だった。構成にやや難があること、ドッキリ系の恐怖演出が多い割には映像的なインパクトが薄いこと──ホラー映画としての基本的な要素にも欠点が多く、“悪魔に取り憑かれた死体”という素材のポテンシャルを十分に活かしきれていなかったように思う。

あらすじ

とある事件からトラウマを負って警察を辞め、依存症の克服に取り組んでいたメーガン(シェイ・ミッチェル)。彼女は次のステップとして、霊安室での夜勤の仕事を始めることにする。しかし、ハンナ・グレース(カービィ・ジョンソン)という少女の遺体が搬入されてきた夜、機器の不調といった不可思議な現象が発生し、メーガンは怖ろしい体験をすることとなる。

感想

主人公メーガンには“精神不調”という要素があるものの、映画の冒頭で既に悪魔祓いのシーンを見せているため、一連の出来事が彼女の幻覚によるものだというミスリードは機能しない。心霊系ホラー映画の如く“じわじわ”とした描写で尺を稼いで入るものの、メーガン以外にとって悪魔の仕業であることは既知の情報なのである。(侵入の描写が雑すぎる)ホームレスの正体についてはそれなりに上手くいっていたかと思うが、冒頭の映像は要らなかったのではないか。「一度殺したのに」というのも、死体から異常が発生すればその時点で役に立たない設定に帰してしまう。

メーガンを取り殺すチャンスがいくらでもあるというのに、彼女以外の関係者ばかりを狙って殺すハンナこと悪魔。この悪魔は“サイコキネシス”を用いるのだが、やはりこれは画的に地味である。メーガンがトラウマを負った事件も“同僚が目の前で死ぬ”というショボい描写に抑えられており、“ドーンッ”とやって驚かせがちな割には映像的な破壊力は控えめだった。その代わりなのか、ハンナが“四足歩行”することで悪魔感を演出しているものの、相手をビビらせる目的がある場面以外でこれをする必要性は感じられない。どちらかと言えば、全裸状態での直立二足歩行を避けることでおっぱいを隠すことが目的であるように思われる。

劇中でもメーガンが「なんで無事なの?」と問われる場面があるのだが、特に答えが明示されることはなかった。下記リンク先の岩石入道氏の解釈によると「精神不安定で取り憑きやすいメーガンを乗っ取るつもりだったのだろう」とのことなのだが、それだと悪魔がメーガン以外を殺してハンナの身体を回復させた行動と矛盾する気がしなくもない。無理筋ではあるが悪魔なりのリスクヘッジだったのか。なんと小賢しい。

なお、悪魔が誰かを殺すごとにハンナの身体が回復すると分かった後は、「どうせメーガンは殺されないし、他の奴をどんどん殺してきれいになった状態のおっぱいを見せておくれ」とばかり思っていた。そんな“全裸なのに見えないおっぱい”ばかりが気になる一作なのだが、一瞬だけ見える場面が一応あった。て言うか、記録写真の撮影の時に姿勢を変えなくてもいいのか。職務怠慢だろ。

悪魔的な話とは別の部分でメーガンのキャラクターが怖ろしい。彼女は別れた恋人アンドリューから「受け取った荷物の中にザナックスが入ってなかったんだけど?」と問われると、「何で私って決めてかかるわけ!」とキレる。しかし、それまでに彼女が何度もザナックスに頼りそうになる場面があるため、観客には逆ギレであるとバレバレである。彼女を心配するリサ(スタナ・カティック)にザナックスが見つかって問い詰められた時にも「じゃあ持っていけばいいでしょ!」と逆ギレしていたし、メンヘラというのは面倒なものだと思った。なお、メーガンはアンドリューのIDを利用してボストン市警のデータベースにも不正アクセスしており、性格以外に倫理観についても問題を抱えている。