オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『ブラックシープ』

Black Sheep, 86min

監督:ジョナサン・キング 出演:ネイサン・マイスター、ピーター・フィーニー

★★★

概要

恐怖ノ遺伝子組み換え羊。

短評

ただいまプライムビデオ。ネトフリ予算では逆に実現しなそうなポンコツ映画を観ようと思ったら、これが意外に高クオリティで驚いた。本作はニュージーランド製ホラーコメディなのだが、アニマトロニクス・特殊メイク・CGの三つが期待を遥かに上回る内容となっていた。程よくグロく、程よく笑える。こんなポンコツ系企画にどうしてここまでの予算と技術が集まったのか。ニュージーランド国民の羊への愛の現れなのか。

あらすじ

幼い頃に兄アンガスにお気に入りの羊を殺され、トラウマを負ったヘンリー。それから15年後、牧場を離れて暮らしていたヘンリーだったが、自身の持ち分である土地を兄に売却するために帰省。一方、アンガスは“スマート牧場”の実現のために羊の遺伝子組み換え研究を行っており、それに反対する環境保護団体が研究所に侵入。その結果、凶悪化した羊が流出してしまい、人々に襲いかかるのだった。

感想

可愛い羊さんたちが襲いかかるアニマルパニック系ホラーコメディである。“羊恐怖症”を患ったヘンリーは“羊渋滞”に怯えきっているが、こんな渋滞なら巻き込まれてみたいと思うほどの可愛さである。そんな可愛い羊が人間を襲うというギャップだけでもそれなりに楽しいのだが、本作は予想の斜め上をいくような凶暴ぶりを披露して笑わせてくれる。「ちょっとモフモフしてやろう」くらいの軽いノリだったり、あるいは「動物映画なら子供に見せても大丈夫かな」なんて思っていると、ヘンリーのようにトラウマを負いかねない。

マック夫人がウサギを調理している普通のはずのシーンだけでも苦手な人にはダメなレベルかと思うが、可愛い羊の群れからは信じられない程にグロいシーンが多い。しかもそれが結構なクオリティなのである。羊に襲われて血がピューっと吹き出すくらいであれば、低予算ホラー映画の笑える描写の範疇だろう。ところが、皮を剥がれ、開腹された羊が実験室に吊るされているのなんてリアルすぎて引くくらいだし、凶暴化した羊の群れが人々を襲って阿鼻叫喚に陥るシーンもそんじょそこらのゾンビ映画を悠に超えるクオリティなのである。研究所の廃棄用の穴もヤバい。まるで期待していなかっただけに思わず嬉しくなってしまった。

羊の凶暴化には伝染性があり、噛まれた人間は“羊人間”と化す。このバカバカしさも楽しかった。とりわけ好きだったのは、羊人間と化した兄アンガスに対してヘンリーが牧羊犬と共に立ち向かうシーン。ワンワンと吠えれば怯むし、「お座り」の指示にだって従う。これはもうズルい。なお、兄アンガスは遺伝子組み換えの件がなくとも少年時代から心に闇を抱えているとしか思えず、ヘンリーよりもよほどセラピストが必要だと思った。

完全にコント枠の環境保護団体。ヒロインの名前が「エクスペリエンス」というのはどの程度のボケなのか分からないが、菜食ネタが楽しかった。羊人間と化したグラントの口の周りに血がついているのを見たエクスペリエンスは、「お肉、食べてしまったんですか」と場違いな反応を披露する。「シーフードは好き」と言っていたのでビーガンではないらしいが、本作のクライマックスを見れば、誰もが食肉の危険性について考えざるを得ないはずである。メタンガス!メタンガス!

ブラックシープ(字幕版)

ブラックシープ(字幕版)

  • ネイサン・マイスター
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