オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『カムガール』

Cam, 94min

監督:ダニエル・ゴールドヘイバー 出演:マデリーン・ブルーワー、パッチ・ダラー

★★★

概要

エロ配信サイトのアカウント乗っ取り被害。

短評

エロ配信サイトをテーマにしたなかなか現代的なホラー映画。てっきり「これは主人公の意識の問題なのだろうな」と思っていたら、意外に現実的なオチがついていた。もっとも、どの見方をしても現代のSNS及びテクノロジー社会の一端が垣間見えるため、ミスリードはミスリードで面白い内容だったかと思う。そして、最も戦慄すべきが、事件が解決した後の結末というのがまた面白い。「こんなヌルい内容で客がつくのか」と疑問に思うようなエロ配信ではあったものの、ホラー映画としては見応えがあった。

あらすじ

エロ配信サイトで“ローラ”という名前を使用して人気を集めているアリス(マデリーン・ブルーワー)。彼女はフェイク自殺配信などで注目を浴び、ランキング上位入りを目指していた。ある日、彼女はサイトにログインできなくなっていることに気付く。ところが、“ローラ”は現在配信中であり、自分と瓜二つの女にアカウントを乗っ取られてしまったのだった。

感想

三十郎氏は“意識と現実の乖離”なのだと思って本作を観ていた。つまり、人気を集めるためにローラの配信内容が過激化していく一方で、本人であるアリスの意識はそれについていけず、両者の間にズレが生じているのだと。アリスが自分からローラを切り離すことで配信していると考えたわけである。つまりは妄想オチである。そうではないことを示す描写もあるのだが、オチを明確にせず、メタファーとして処理することは可能だっただろう。

本人が望んでいない過激な配信や家族バレによる関係悪化などの恐怖は、アカウント乗っ取りという事情がなくとも成立する。“セルフ投げ銭”で順位を上げようとするのもあり得る話なのだろう。本作には別のオチがついたが、これはこれでエロ配信ホラーとして面白い視点かと思う。

アリスが色々と調べている内に“ローラ”とストーカー客ティンカーとの繋がりを見抜き、彼が真相を暴露する。はっきりしない物言いではあったものの、偽ローラの正体は“ディープフェイク”ということだったのだろう。この可能性は全く考慮していなかったため、「ああー、現代だとそういうこともあり得るのかー」と素直に感心させられた。

理屈的にはよく分からない“直接対決”でアカウントを取り戻し、パスワード変更ではなくアカウントを削除したアリス。これで彼女の恐怖体験が終了したのかと思いきや、本当に怖いのはここからだった。彼女はヘアメイクと名前を変えて新たにアカウントを作り直し、再度エロ配信をスタートするのである。

アリスが体験する恐怖というのは、“何者かが自分に成りすましている”ことだとばかり思っていた。ところが、この結末から分かるのは、彼女が“自分の築き上げた人気を奪われる”ことを恐れていたということである。実は配信の過激化や家族バレは特に問題ではなく、自分がいるはずの、望んでいた“順位”に他人がいることに恐怖している。これがSNS社会の承認欲求である。“奪われる自己”というのは、もはや肉体と共にある自分自身ではない。インターネット上の虚像である。その虚像が本体となっているのが現代社会なのだ。

「バイバトロン」という“イカセマシン”がどんなものなのか気になった。他の配信内容は割とヌルい内容で、エロ配信サイトなのにYoutuberみたいな食事配信とかやって客がつくのかと疑問に思った。三十郎氏はエロ配信を嗜まないので分からないが、普段の姿(大嘘)を知っている方が興奮するという理屈なのか。