オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『ミッドサマー ディレクターズカット版』

Midsommar, 170min

監督:アリ・アスター 出演:フローレンス・ピュー、ジャック・レイナー

★★★★

概要

ホルガ村の夏至祭。

感想

前回の鑑賞からそれほど経っていないのでどうしようかと思ったが、お気に入りの作品の「ディレクターズカット」であれば見逃す手はないという結論に達した(同じ事情はあるが『パラサイト』のモノクロ版も観ようと思う、と思ったらプライムビデオで配信されることが分かった)。23分長くなったことで作品の印象が大きく変わることはなかったが、クリスチャンのダメ男ぶりが強調されたことによって結末の必然性が高まっていたと言えるだろうか。ちなみに、劇場公開版との違いはどうながさんがまとめてくださっているのでリンクを貼っておく。

クリスチャンは確かにダメ男なのだが、三十郎氏が彼を非難したいのは学問関係である。前に観た時よりも彼の“ネタパクリ”が酷い心象を覚えた。一方、ダニーとの関係についてはクリスチャンに同情的であり、「この女、めっちゃ面倒くせえ」と感じられて仕方がない。追加された口論のシーンでクリスチャンが「いつも俺に非があると感じさせる」と告げるのも「よく言った!」なのである(最も共感できるのは「はよ別れろ」と煽るマークなのだが)。したがって、“最後の笑顔”が意味するところの“救済”に今ひとつノリ切れず、自分でもわけの分からない感情がこみ上げてきた前回よりも評価を一段階下げた。性差別的であることを承知で書くが、このメンヘラ映画が好きだという女は高確率で地雷だぞ。

本作の恐ろしさの根底には、ホルガ村の住人たちが“善意”で儀式を行っていることがあるように思う。これは『へレディタリー』にも共通する要素であり、それ故に両作ともにバッドエンドとハッピーエンドが混在した特殊な結末を迎えることになる。とは言え、村人たちは儀式遂行のためではなく秘密を守るための殺人も行っているわけで、普通の意味での恐ろしさである悪意が介在している点も見逃せない(ダニーがクリスチャンを選ばなかったら彼はどうなっていたのか)。他にも“奇形”と“裸の老婆”が同作と共通しているが、これは監督のトラウマネタか何かなのだろうか。そして、お婆ちゃんたちが儀式の最中に自らの乳を揉むのは何故なのか。そんなセクシーアピールされてもチンコシナシナですよ。

ペレがアメリカ留学していたのは外から人を連れてくるためなのだろうが、アーミッシュにも似た制度があることを思い出した。若者が一定の期間、外の世界でセックスやドラッグを好き放題に楽しみ、それでも戻ってくるのかを決めるというものである。ホルガ村の場合はどうなっているのだろう。裏切らなそうな奴が選ばれていたりするのか。

ホルガ村の夏至祭は9日間に渡って行われるとのことだが、劇中ではそれよりも短い時間しか経過していない。つまり、本作には“その後”があることになる。歴代の女王が登場しないことを踏まえれば……とか色々と考える余地があるわけだが、それも本作の魅力の一つと言えるだろう。劇中で描かれていることだけでなく、(実際にはなくとも)一つのコミュニティや儀式が“存在する”かのように錯覚させるだけの説得力がある。

R-18版で配信されているのでクリスチャンのチンコが無修正だった。本物なのだろうか(ブラブラする動きはリアルそのもの)。こころなしか“赤かった”気がする。