オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『ザ・ファイブ・ブラッズ』

Da 5 Bloods, 155min

監督:スパイク・リー 出演:デルロイ・リンドーチャドウィック・ボーズマン

★★

概要

ベトナムに金塊を掘りに行く老帰還兵たち。

短評

スパイク・リー監督作は強烈なメッセージ性ありきだと分かっているのでどうしても気後れする。しかし、『ブラック・クランズマン』のように実際に観てみると普通に面白いというケースもあるため、本作にもそれを期待したがダメだった。本作にはベトナム戦争を戦った帰還兵たちが埋めておいた金塊を掘り起こしにいくという“本筋”と、黒人差別史他のお勉強的な“本編”の二つの要素があるのだが、後者に全特化すぎて前者にあるはずの“面白さ”がほぼ全放棄に終わっていた。ネトフリなしで実現しなかった企画ではあるらしいものの、スタジオ製作ならばもう少しバランスが取れていただろうと思う。

あらすじ

かつて“ブラッズ”としてベトナム戦争を共に闘ったポール、オーティス、メルヴィン、エディの四人。現代のベトナムで再集結を果たした彼らには二つの目的があった。一つ目は、戦闘中に命を落としたノーマン(チャドウィック・ボーズマン)の遺骨を掘り起こして祖国へと帰国させること。そして二つ目は、密かに埋めてあった金塊を掘り起こすことだった。父のメールを盗み見したポールの息子デヴィッドも加わり、五人はベトナムのジャングルに足を踏み入れる。

感想

“本筋”の設定はとてもコメディっぽい。「ジャングルのことなら知ってるぜ!」と強気なところで、所詮は終戦から40年以上が経過した“老人軍団”であり、金塊探しも苦戦は必至のはずである。ところが、様変わりした都市部とは対称的に変わらぬ姿を保つジャングルに苦労することもなく、“ウンコしようとして穴を掘ったら金塊があった”というコメディみたいな方法であっさりと発見する。遺骨も簡単に見つかるし、設定から期待された本筋は“ようやく始まったと思ったら即終了”である。これにはガッカリさせられた。道中で腰痛を訴えるオーティスをネタ扱いすることなく、復員兵病院処方のオキシコンチン依存問題に絡めた時点で確定していたことではあるのだが、本作が笑えそうな要素を笑いに繋げることはない。

アメリカ建国から続く戦争と黒人の関係、ベトナム戦争公民権運動、そして今なお残る“アメリカ戦争”の爪痕。てんこ盛りセットである。スパイク・リー的には前者の要素が絶対に欠かせないのだろうが、作劇としては金塊探しをコメディと割り切り、その先に戦争の爪痕の要素を持ってきた方がギャップによるインパクトが生まれただろう。本作の場合、出発前から「黒人は搾取されてきた」という主張が全開なので、アメリカがベトナムでやったことに対する反省要素がおまけ程度になってしまっている。“間違いだった戦争”であるベトナム戦争が、その行いや不確かな目的によるものではなく、“優先すべき国内問題があった”という形でまとめられていた。これでは「間違った戦争に参加してベトナム人を殺したけど黒人は被害者だから」という贖罪からの“逃げ”である。

「これから金塊を探しに行きます」という本筋開始までに一時間、その後すぐに金塊&遺骨発掘が終了し、残りは仲間割れを含む金塊争奪戦が描かれる。老兵たちが現役さながらの活躍を披露する姿を見たいところだが、それもほぼないと言ってよい。ポールがPTSDを発動するというベトナム戦争映画らしさもあったが、流石にあれもこれもと欲張りすぎである。トランプいじりまでやる必要なんて全くなかっただろう。観客に“突きつける”メッセージは「戦争と黒人の関係」に特化し、残りは“読み解かせる”くらいにしておけば二時間強にまとめられたのではないかと思う。

“お勉強要素”の演出にも疑問を覚えた。会話中に“隙あらば”と色々な人物や事件の固有名詞が登場し、詳しい説明があるわけでもなく写真(か絵)と名前が映し出される。映画が終わった後に調べることを前提にした演出ではあるのだろうが(それとも一時停止なのか)、そんなにたくさん出てきても覚えきれない(気になってググったのは「カリー中尉」の話くらい)。知っている人にはわざわざ紹介する必要もないだろうし。この演出に象徴されるように、“物語”と“メッセージ”が一体化しているのではなく、一階と二階に分離している印象を受けた。

戦時中の回想シーンでポールたちに白いヒゲが生えたままなのは何故なのか。いくら黒人が老けて見えづらいとは言え、流石に45年後と同じ外見なのはいかがなものか。せめて剃れよ(最後の写真だけは剃っているのだし)。