オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『ミッドナイト・スカイ』

The Midnight Sky, 118min

監督:ジョージ・クルーニー 出演:ジョージ・クルーニーフェリシティ・ジョーンズ

★★

概要

北極の天文台にいる老人と地球帰還中の宇宙船の交信。

短評

ジョージ・クルーニーの監督・主演兼任作。「余計なことをしたなあ……」という印象である。基本的には地味な話なので、そのまま内省的な作りにしておけばよかったものを、無理やり盛り上げようとした場面が尽くスベっている。また、「これって科学的にありなの?」と引っ掛かるような描写も多く、物語の核心から少しズレたところで気になる点が多く見られた。既視感があるとは言えど宇宙の映像は大好物だし、二つの軸が繋がる話をシンプルに描くだけでよかったと思うのだが……。

あらすじ

2049年2月。“とある事件”から三週間が経過し、他の職員が全員退避済みの北極の天文台に老天文学者オーガスティン(ジョージ・クルーニー)は一人残っていた。彼が活動中の宇宙船を調べた結果、サリー(フェリシティ・ジョーンズ)ら五人の乗組員が乗船中のアイテル号が地球に接近中であると判明。地球と環境が似た移住候補先である木星の衛星K23から帰還中のアイテル号が通信可能圏内に入ろうとする一方で、オーガスティンは天文台に取り残された少女アイリス(カイリン・スプリンガル)と出会う。

感想

色々と寄り道要素が多いものの、物語の骨格はシンプルである。少女アイリスはオーガスティンの妄想であり、また彼の娘でもあり、さらにはサリーでもあったという話。シリアルが二つあった時点で少女の伏線というよりもアルツハイマーの症状だと思ったため、少女の非実在に驚きはなかった。若い頃にK23への移住の可能性を発見し、仕事に明け暮れて恋人(ソフィー・ランドル)や娘と疎遠になったオーガスティンが、老体に鞭打って娘が生き残るために必要な情報を送ろうとする。言わば、人類の命運を懸けた贖罪の物語である。

この構図自体は悪くなかったと思うのだが、上述の通り、本作には“余計なこと”が多い。天文台では通信できなかったため、オーガスティンは別の観測所へと旅に出る。旅の途中、テント代わりにしたトレーラーが水没するのだが、濡れた服を乾かすこともなく上にダウンジャケットを着ればセーフということになっている。凍るだろ。死ぬだろ。どうしても“困難を乗り越えて”という描写を入れたかったのだろうが、妄想娘との交流を通じて彼の心理面での変化を深堀りしてもよかったのではないか。また、頑張って観測所に行くのはよいが、人工透析必須の設定はどこに消えた。

一方のアイテル号。流星群が衝突して修理中に再び流星群に巻き込まれ、“無重力ゲロ”をするマヤが死亡する。無重力で上手くゲロを吐けるものなのかという疑問はよいとして、マヤの死因が“失血死”であることが気になる(流星→修理→流星の無能感もヤバい)。恐らくは流星群か破損した船体の破片がぶつかって負傷したのだろうが、いずれにせよ“宇宙服を貫通”していることは間違いない。そして、事故の現場は宇宙空間である。失血以前に圧力の問題が生じないのか気になって仕方がない。オーガスティンにせよマヤにせよ、“別になくてもいいシーン”で無駄な疑問を生じさせており、それらは“余計なこと”としか思えないのだった。無重力で飛び散る血液は綺麗だったけども……(ゲロも同じことにならないのか。特殊なゲロ袋なのか)。

放射能に関する描写があり、アイテル号から見える地球ではいくつも場所で煙が上がっているため、きっと世界規模の核戦争でもが発生して地球は滅亡したのだろう。そして、アイテル号の乗組員たちに人類の再建が託されるわけだが、その象徴としてサリーが既に“妊娠”している。無重力ゲロの常連マヤが乗組員なのもどうかと思うが、ミッション中に子作りするような非プロフェッショナルな人材に人類の命運を託してよいのか。て言うか、宇宙での妊娠どころか妊娠状態で船外作業までして大丈夫なのか。大丈夫という設定ではあるのだろうが、ここも大いに引っ掛かってしまった。

マヤは死んでしまったが、地球に家族のいるミッチェルとサンチェスの二人も脱出用ポッドで地球へと帰還することを決意する。残されたのは宇宙妊活バカップルのサリーとゴードンの二人である。“アダムとイブ”の発想があるキリスト教文化圏では受け入れられやすいのかもしれないが、二人から近親相姦で人間の数をどこまで増やせるものなのだろう。もし五人全員のクルーが残っていたとしたら、遺伝子の“多様性”を考慮してオスが順番に種付けするという特殊NTR展開が待っていたのだろうか。赤ん坊は娘とのことだったので、ゴードンは娘にも種付けしなければならない。こう考えるとキリスト教の人類観は完全に変態のそれである。