オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『新感染半島 ファイナル・ステージ』

반도(Peninsula), 115min

監督:ヨン・サンホ 出演:カン・ドンウォンイ・ジョンヒョン

★★★

概要

ゾンビ半島から現金奪取計画。

短評

新感染』の続編。同作の続編としては完全にガッカリ、アクション映画としてはそこそこという印象である。ゾンビものの続編においてゾンビの存在感が薄れてしまう現象が起こりがちだが、本作もその例外ではない。本作は他に『ワールド・ウォーZ』くらいしか思い浮かばない規模の“CG全特化”な迫力に振り切ろうとはしていたものの、登場人物の行動に必然性が感じられず、終始“どうでもいい戦い”が繰り広げられていた。

あらすじ

ゾンビパンデミックはたった一日で韓国全土を壊滅させた。それから四年後、香港に逃れていた元軍人のジョンソクは失意の日々を送っていたが、現地マフィアのボスから韓国内に残された2000万ドルの回収任務を押し付けられる。首尾よく金を積んだトラックを見つけたジョンソクたちだったが、何者かの襲撃に遭い、ゾンビたちが押し寄せてしまう。現地で「野良犬」と呼ばれる生存者の姉妹に窮地を救われたジョンソクは、彼らと再びトラックを奪還しようとする。

感想

ジョンソクたちを襲ったのは“631部隊”。生存者救出が彼らのミッションだったが、取り残されたことから絶望し、現地で傍若無人の振る舞いを見せている。ゾンビものの話が進むと必ずと言ってよいほどに“人間vs人間”の戦いが待っているが、本作もそのタイプである。ゾンビ・アポカリプスにおいて自分たちのコミュニティを確立しているという意味では、『ウォーキング・デッド』の総督編の辺りだろう(同作はそこで脱落した)。確かにゾンビは出てくるが、主人公たちの行動を“邪魔する存在”くらいの扱いに過ぎない。

この631部隊が本作の悪役ということになるのだが、彼らの一部しかトラックと引き換えに香港に行けることを知らないため、ジョンソクたちとの全面対決に至る必然性が薄い。トラックを取りに行くとジョンソクの義兄の生存が判明し、彼を救出しようとしたことから襲われるものの、ジョンソクが義兄を救う強い動機が全く感じられなかった。一方の631部隊についても、「なんか知らないけど襲われたから倒してやる!」のノリ、つまりは反射で“撃退”に留まらず“追跡”をしており、こちらの行動も非合理的と言わざるを得ない。また、最後にトラックを奪ったソ大尉がマフィアに殺されていたが、ジョンソクたちがこの展開を予想していないのも不自然なまでの阿呆さである。全体的に展開が雑だった。

最後は韓国映画らしいお涙頂戴の人情展開だったが、ミンジョンに「娘を二人を任せた!」と言われて大人しく逃げるジョンソクが主人公というのはいかがなものか。そこは「ここは俺に任せろ!」だろうに。それでこそ彼らの過去の設定が活きるというものである。また、「やっぱり死ぬのやめた!」と翻意したミンジョンがゾンビの群れを抜けてくるのを、ジョンソクだけでなく国連軍も支援すべきだったと思う。この終盤の演出は全体的に“くどかった”。

暗闇からゾンビの群れが湧いてくる演出は好きだったものの、夜のシーンが大半の理由は別にある。ゾンビ、ジョンソク軍、631部隊の三つ巴のカーチェイスが本作の大きな特徴となっており、その多くはCGで描かれている。これはそれなりに楽しかったが、CGであることを隠しきれておらず、なんだかテレビゲームのムービーパートを見ているようだった。抜群のドライビングテクニックで大群を轢き殺すのは爽快なのだが、ゾンビの怖さは全くなかった。

前作と比べてゾンビの存在感以外に人間のキャラクターも圧倒的に薄くなっている。正直に言って、特定の誰かに“助かって欲しい”という映画の根幹とも言える感情がまるで湧いてこない。皆、勝手にやってくれ、である。また、荒んだ生活を送っていたはずのジョンソクが“さらさらヘアー”だったり、ソ大尉がまるで軍人に見えない貧弱な身体だったりして、どうにも手抜き感が否めなかった。『マトリックス4』みたいに無理やり撮らされた事情でもあるのだろうか。エンタメ映画としてノルマだけを消化したような。

朝鮮半島でゾンビパンデミックを免れたのは北朝鮮だけだそうである。地続きなのに完全に封じ込めた北朝鮮は超優秀である。難民の受け入れ先が日本から急遽香港へと変更される描写があったが、国際的な批難を浴びそうな一方で、現地民としてはその方がマシというコロナ禍と同じ構図が皮肉だった(現実世界では受け入れ拒否しても防ぎ切れないのが難点だが)。