オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『アーミー・オブ・ザ・デッド』

Army of the Dead, 148min

監督:ザック・スナイダー 出演:デイヴ・バウティスタ、エラ・パーネル

★★★

概要

ラス”ゾンビ”ベガスからの現金“救出”作戦。

短評

ニ年ぶりのネトフリ生活。前回の一日三本体制は睡眠時間が削られてキツかったので、今回は無理せず二本体制を維持しようと思う(もう若くないのだ)。さて、『ドーン・オブ・ザ・デッド』以来となるザック・スナイダーゾンビ映画だが、OPクレジットは文句なしに「最高!」、高知能ゾンビ“アルファ”の存在が明かされる導入部は「面白そう」、ただし、そこから先は……という竜頭蛇尾極まる一作であった。スナイダー作品らしく映像的には見応えのあるシーンも多いのだが、いかんせん無駄要素と冗長さが目立ってしまっており、序盤の高い期待感故に残念な印象を強く残す一作となった。

あらすじ

軍が極秘に輸送中だったゾンビが流出し、近くにあったラスベガスはたちまちゾンビに飲み込まれる。ただし、生者の救出作戦や街全体の封鎖が成果を上げ、ラスベガス以外へと波及することはなかった。封鎖されたベガスの核攻撃による掃討が決まり、地下金庫に眠る2000万ドルの“救出作戦”がスコット(デイヴ・バウティスタ)へと持ち込まれる。スコットは仲間を集めて封鎖エリアへと入るが、そこは高知能で動きが俊敏な進化型ゾンビ“アルファ”の王国だった。

感想

ゾンビ流出の原因は“口淫運転”中の対向車との衝突だし、OPクレジットでは完全にやり過ぎな肉体破壊描写でゾンビが弾け飛ぶし、この時点では非常にコミカルな路線であることが予想される。アゲアゲである。その後もゾンビで実験して罠を回避するようなコミカルな描写はあるものの、全体的には湿っぽい物語となっており、「あれ……?」と拍子抜けすることになった。どうしてOPクレジットの路線を貫徹しなかったのか。ゾンビ映画におけるシリアス路線なんて低予算でもできるのだし、スナイダーらしく頭空っぽで映像に全振りでよかったではないか。

特にイラつかせられるのはスコットの娘ケイト(エラ・パーネル)の存在である。可愛いし無駄にセクシーだったが、物語的には邪魔でしかない。“主人公の娘”という立場を最大限に悪用して傍若無人に振る舞うお決まりの“足手まとい役”なのだが、本作の設定であれば他に描くべき要素はいくらでもあり、そんなテンプレ要素に尺を使っている場合ではない。スナイダーには娘の自殺という事情があり、言わば“復帰作”である本作に何かしらの思いを込めたかったのは理解できる。しかし、この程度の下手な贖罪では亡くなった娘も浮かばれないだろうし、いっそのことケイトの存在を丸ごと削ってほしかった。

まったく楽しめないわけではなかったものの、コメディ路線同様に“面白くなりそうな要素”を上手く活かせていないと感じられる点が多かった。たとえば、進化型ゾンビ“アルファ”は、タイトルが示す通りに“軍隊のように統率されたゾンビ”のはず。アルファが攻撃の回避行動を取る辺りはゾンビらしくなくて新鮮なものの、“知能”という面では王と王妃がいることくらいにしか特徴が見出だせず、ただ早くて強いだけのゾンビだったように思う。肉があれば群れて行動するのはノーマルゾンビも同じである。ゾンビトラも格好よかったが、ゾンビであることが外見以外に影響していない。

現金救出チームについても同様である。スコットのかつてからの仲間はともかく、案内人のコヨーテ(ノラ・アルネゼデール)や監視役のマーティンは腹に一物抱えており、仲間の内での疑心暗鬼という要素がある。ヘリコプター操縦士のピーターズの「トリアージ」という台詞が象徴しているようにメンバーの重要度には明らかに差があるし、スコットも自身との“近さ”によって報酬金額を変えている。この辺りの複雑な状況をもっと展開に反映させてみてもよかったのではないかと思うのだが、“善玉”は仲良くなり、“悪玉”が裏切りと、非常にシンプルな展開に終始していた。

なんだか文句ばかりだが、ゾンビ映画としての“基本的なところ”は決して悪くない。ゾンビのビジュアルや戦いの描写、荒廃したラスベガスのワクワク感、お馴染みの“物資調達”のアレンジ版のような行動目的。普通にやるだけでも間違いなく面白くなったと思うのだが、ゾンビ映画らしからぬ長尺が全体の印象を損ねていた。撮影監督ラリー・フォンとのコンビが解消された影響なのか全編がキメキメの映像というわけではないものの、スナイダー映画なので安っぽさはない。しかし、“画力”だけで保たせる程の魅力はなく、「これならシンプルに……」と思わずにはいられなかった。