オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『へレディタリー/継承』2

Hereditary, 127min

監督:アリ・アスター 出演:トニ・コレットガブリエル・バーン

★★★★★

概要

地獄の王ペイモンの復活。

感想

プライム特典の終了リストに入ってしまったので観ておくことにした。前回観た時から一年半も経っているのか。時の経過が早い。老化を感じる。一度目の鑑賞ではわけが分からなくてシンプルに怖かったのだが、二度目なのに余計に分からなくなるという事態に見舞われた。今回、特に注目したのは“不可避性”である。その観点から思うことをまとめておきたい。

ピーターが受けている授業で「選択肢の存在は悲劇性を高めるか」という問いが投げ掛けられる(チャーリーの教室の後ろの黒板には「CRITICAL THINKING」の文字が。アメリカでは小学生から始めるのか。三十郎氏は大学からだったぞ……)。一度目の鑑賞時には“どうなるのか”を予想させない、ジャンルミックスの混乱を味わう者が多いのではないかと思うが、そうだと分かっていれば“分かりやす過ぎる伏線”が多いのも本作の特徴である。嫌な予感をさせる描写があり、その通りに嫌なことが起こる。これは『ミッドサマー』にも共通する作風だと言えよう。

本作全体の構図としては、カルト集団による“計画通り”である。アニーの制作するミニチュア模型が実際の部屋に重なる演出が示唆する通り、全てはグラハム家よりも高位の存在の手のひらで転がされていたことになる。ジョーンのような分かりやすすぎる例を除いても、たとえばアニーがグループセラピーに参加するように物語の開始前から仕向けられていたり、チャーリーの死亡が事故ではなかったりと、全てが入念に計画されていたことが節々から窺えるようになっている。この不可避性が悲劇性を弱め、結末で謎の“達成感”を覚えることへと繋がっている。

ペイモンの復活を目論むカルト集団によってもたらされた不可避な悲劇、つまり選択肢などなかったことになるわけだが、果たして本当にそうなのか。(確認できてはいないが)パーティーの参加者に信者がいればチャーリーにナッツ入りケーキを食べさせることはできようが、彼女がパーティーに参加したのはアニーがそう仕向けたからである。これは必然的な出来事とまでは言えまい。また、アニーがジョーンに騙されるのも心情的には自然な流れに思えるが、少なくとも選択肢はあったはずである。

こうして細かい点に目を向けてみると、偶然の要素に支配された悲劇だったのではないかという気もしてくる。しかし、上述の二点がいずれも“アニーのせい”であることを考えると、全ては“エレンの娘”が仕組んだことに思えなくもない。夢遊病者の彼女が無意識で行ったのか。その無意識にはエレンの意向が反映されているのか。ただし、これでもなおアニーには選択肢が残されているように感じられ、どこまで不可避の物語だったのか分からなくなってしまうのだった。これが脚本の粗なのか三十郎氏の読解力不足なのかと言えば後者が有力だが、次に観る時にもまた楽しめるのでお得である。