オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『セックスで繋がる三つの世界』

Zoom, 97min

監督:ペドロ・モレッリ 出演:アリソン・ピル、ガエル・ガルシア・ベルナル

★★★

概要

豊胸手術したラブドールメーカー、股間が縮んだ映画監督、小説を書くモデル。

短評

カナダ・ブラジル合作のコメディ映画。三つの世界が入れ子的かつムカデ人間的なウロボロスとなっている変わった構造を持つ一作である。本作には『ZOOM ズーム』という原題準拠の真っ当な別邦題もあるようなだが、ビデオ通話アプリ(及びそれを題材とした映画)と紛らわしいのでこの邦題となったのだろう。“セックスで繋がる”というほどではなかったものの、エロに釣られた三十郎氏が納得できる程度にはおっぱいも出てきたし、頓珍漢な世界観が楽しかった。

あらすじ

オーダーメイドのラブドール作りを仕事としているエマ(アリソン・ピル)は、余暇を利用して理想の男性像である映画監督エドワード(ガエル・ガルシア・ベルナル)を主役としたコミックを描いていた。彼女は理想の女性像であるモデルのミシェル(マリアナ・シメネス)に近づこうと豊胸施術を受けるものの、大きくしすぎて後悔する。そのミシェルは、美貌以外に取り柄のない存在として扱われることにウンザリとしており、小説を書こうとしていたのだが、なんとその主役はエマだった。そして、エドワードが撮影中の映画の主役というのが、なんとミシェルだったのである。

感想

「ミシェル→エマ→エドワード→ミシェル→以下無限」という構図である。この構造にどんな意味が込められているのかといった小難しいことはさっぱり分からないものの、それを気にせずとも楽しめる内容だった。まず、エマの職業が“ラブドール作り”という時点で可笑しいし、彼女が恋人ボブから「人形とヤッてるみたい」と言われて豊胸施術を後悔し、その八つ当たりでエドワードの股間を小さくしてしまうという展開も笑える。唯一シリアスな感じだったミシェル編でさえ、エドワードの事情に左右されてバカな話に変わっていく。個別の話としても、別の世界線から影響を受ける話としても、コメディとしては申し分ない。

有り金を注ぎ込んで手術を受けたはよいが、元に戻すための金がなくなってしまったエマ。困った彼女に(ミシェルの書いた通りに)コカインが間違って届き、出荷予定のラブドールに隠してカナダからアメリカへと密輸することになる。ラブドールの注文者は「亡くした(=寝取られた)妻とそっくりの細身巨乳で」とオーダーしており、エマも「どんな注文にも対応できる」と言っている。その作りは非常に精巧であるものの、やはり“非生物”を相手に欲情できるというのは、ある種の才能が必要なのではないかと思った。エマの恋人ボブが彼女のシリコン巨乳にそう感じたように、やはり少し不気味である。これは未体験故の偏見なのだろうか。この世界にはラブドール専門の風俗店も存在するらしいのだが、一度体験してみれば意外といけたりするのか。

女たらしの映画監督だったものの、股間が縮んで自殺を考えるほどに悩むエドワード。彼は下半身の悩みと同時にスタジオのお偉方からの「芸術路線はやめて爆発シーンを入れろ」という要求に頭を悩ませている。スタジオのお偉方が女性であるため、下半身のサイズが回復さえすれば両方の悩みが一挙に解決となるのだが、股間に悩みを抱える男の姿というのはどうしてこんなにも楽しいのだろう。ペニス増大器具をシュポシュポやってその場を凌ごうとしたり、怪しいエログッズ屋で“スーパー・ペニス”を購入したり(窮地に追い込まれたエドワードが“スパムメール”からエログッズ屋に辿り着く展開は爆笑した)。サイズには問題ないのに使う相手がいない三十郎氏としては、いくらでも相手がいるのに使い物にならない男の姿を見ているのは非常に気分が良かった。

そして、ミシェル。彼女がエマの理想像でありながらも悩みを抱えているという事情からドラマが生まれそうな感じがしたが、特にそういう展開はなし。エドワードもまたエマの理想が投影された存在であるため、世界観とは異なり、各主人公の心情の面では循環をなしていない。“自分に憧れる主人公”を描くというのは非常に歪んだ性格の持ち主だと思うのだが、彼女には循環を構成するための“一つのピース”以上の役割は与えられていない印象だった。そのキャラクター性が“頭空っぽ扱いがイヤなモデル”という設定と一致しており、これもある意味ではメタなネタなのか。