オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『Man On Fire』

Man on Fire, 92min

監督:エリ・シュラキ 出演:スコット・グレン、ジェイド・マル

★★★

概要

元CIAと美少女。

短評

トニスコ監督の『マイ・ボディガード』ではなく1987年版。日本では劇場未公開かつパッケージ版販売なしとのことで、原題通り『Man on Fire』というタイトルで配信されている(Filmarksでは原作と同じ『燃える男』になっていた。どちらが正式なのかは不明)。トニスコ版よりも一時間ほど短いため、同作と比べて非常にシンプルな話とはなっているものの、“影のある男”の物語を手堅く仕上げていたと思う。ただし、心情描写が流石にシンプル過ぎるとは思う。

あらすじ

ベトナムベイルートでの体験から心に傷を負った元CIA特殊部隊隊員のクリーシー。彼は仲間のデヴィッド(ジョー・ペシ)からの紹介でイタリアの裕福な夫妻の警護の仕事を引き受ける。ところが、バレット夫妻には12才の娘サムがいて、これを知らされていなかったクリーシーは「ガキの面倒なんて……」と反発。仕方なく仕事を続けるクリーシーだったが、自分に懐くサムに心を開くようになる。

感想

PTSD持ちで子供嫌いなクリーシーだが、彼は非常に“チョロい”。少女との交流を通じて凍てついた心が徐々に……という過程は無いに等しく、割とすぐに“落ちる”。そのため、ドラマとしての重みはどうしても薄れてしまうのだが、これは“美少女の力”ということで納得するより他にないだろう。どんなに硬派を気取った男であろうと、美少女と子犬には弱い。これは世の理である。強い男を味方につけた美少女と犬だけは誘拐したり殺したりしてはいけないのだ(e.g. 『コマンドー』『ジョン・ウィック』)。

美少女の魅力の前に速攻で完落ちしたクリーシー。硬派気取りなキャラクターが信じられぬ程のメロメロぶりである。運動会で勝てるように練習に付き合い、フェンス越しに手を触れ合いながら歩き、挙げ句は自身の知り合いの結婚式にまで同行させる。ちょっとアブないおじさんの臭いがしないでもない。なお、サムはその結婚式の帰り道に誘拐されており、クリーシーは職務怠慢もいいところなのだった。

凍てついた心を融かしてくれた少女が誘拐され、“燃える男”と化したクリーシー。ただし、彼は誘拐の際に負傷しており、ヴィジランテものの復讐者としては“最強”という程ではなかった。したがって、アクション映画としてのエンタメ性はイマイチになってしまうのだが、足を引き摺りながらも任務を遂行していく哀愁漂う姿こそが本作の魅力かと思う。ラストショットが“引きの画”になっているのも、本作の“静かさ”を象徴していた。

ジョー・ペシジョナサン・プライスといった意外な大物が出演していた。もし、クリーシー役がスコット・グレンではなくジョー・ペシだったとしたら、誘拐犯への復讐はもっと血なまぐさいものとなっていたことだろう。そんな感じの映画も観てみたい気がするのだが、ジョー・ペシが相手だと、何かが起こる前に彼が喚き散らして犯人が退散してしまうか。ちなみに、ペシが劇中で『Johnny B.Goode』の弾き語りを披露している。なかなか上手い。

犯人の手掛りを追ってポルノ映画館にやって来たクリーシー。ここで彼がゲイのラッビアに対し、股間に銃を突き付けて脅していたのが笑えた。ラッビアはクリーシーにトイレに誘い込まれていたため、もしかするとビンビンだったのかもしれない。「そんな気はない」という意味で股間の銃を萎えさせたのだろうが、サムには即落ちだったクリーシーである。仮にラッビアが美少年であれば、こちらも“目覚めて”いたかもしれない。

プライムビデオの紹介文に「誘拐が多発するメキシコシティ」とあるが、本作の舞台はイタリアはコモ湖畔である。『マイ・ボディガード』の説明を流用したのだろう。