オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結』

The Suicide Squad, 132min

監督:ジェームズ・ガン 出演:マーゴット・ロビーイドリス・エルバ

★★★

概要

タスクフォースX vs 巨大ヒトデ。

短評

続編なのかリブートなのか分かりづらい位置づけがDCEUの混迷を象徴しているような気がするが、シリーズ屈指の期待はずれだった“前作”よりは遥かに面白かった。ギャグがスベっていたり、相変わらずハーレイ・クインを除いた敵も味方も魅力薄という欠点がありはするものの、やはり“R指定作品”となった効果は絶大である。躊躇のない攻撃スタイルや破壊描写は、ただ笑えるだけでなく、主人公たちが“ヴィランであること”を捨てていなくてウキウキする。「俺は悪党なんだぜ」と無理やり強調しなくても“ナチュラル”にそうなる。全体の筋書き自体は前作と大差ないものの、紹介パートが減った分だけ自由に使える割合が増加したことも奏功していたように思う。

あらすじ

フラッグ大佐やハーレイ・クインマーゴット・ロビー。インスタやめたらしい)らが招集された“決死部隊(スーサイド・スクワッド)”ことタスクフォースX。その任務は反米クーデターが起きた南米の島国で研究されている“スターフィッシュ計画”を潰すことだったが、味方の裏切りに遭って部隊は壊滅してしまう。しかし、ウォラーは彼らを陽動として切り捨て、ブラッドスポート(イドリス・エルバ)をリーダーに据えたチームBで作戦を遂行しようとするのだった。

感想

今回のスーサイド・スクワッドのメンバー。主人公ポジションのリーダーはブラッドスポート。スーパーマンを重体にしたこともあるというスナイパーである。スナイパーという設定がデッドショットと完全に被っているのだが、“娘のため”という動機まで被せる確信犯だった。なお、後者の展開にはひと笑い用意されており、部隊の設定の説明が不要であること以外にも前作の存在が利用されている。きっと本作を観た人の多くが前作のダメさを再確認するのではないかと思うが、ちゃんと役に立っているのである。きっとその敬意を込めたチームAの壊滅展開だったのだ。

もっこりブリーフのこちらもスナイパーであるピースメイカー(ジョン・シナ)、女版ウイラードの如くネズミを操るラットキャッチャー2(ダニエラ・メルシオール)、水玉のノーマン・ベイツことポルカドットマン、そしてサメのナナウエ(シルヴェスター・スタローン)。それぞれに一応は役割が与えられてはいるものの、全体的に見た目のインパクトやバカバカしさが前提の感は否めなかった。ただし、ナナウエは“コソコソと動く”だけで、ポルカドットマンは“巨大母親”の描写で笑えたため、思いっきり狙ったギャグキャラのはずが完全にスベったイタチのウィーゼルよりは遥かにマシだったと言えよう。あれをオチに持ってきたのはウケるキャラだとでも思ったのか。

そして我らがハーレイ・クイン。完全にヒーロー化された単独映画の時よりも遥かに輝いていた。アクションの動き自体も、そして2Dアニメーションと組み合わせたメルヘン戦闘も、他のキャラよりも格好よさと愉快さのバランスが上手く取れている。実に楽しそうに人を殺していて良い。彼女が崩れ落ちる塔の中で槍を拾った時の表情が最高に可愛かったのと、監禁から脱する時に両脚に挟まれて首を折られるヒゲ親父が羨ましかった。

ただし、ハーレイ・クインが敵側の大統領に求婚されて「あら素敵」となるのは、いくらジョーカーから卒業したとは言え、キャラクター的にどうなのかと思う。また、“ピンクと青”から“赤と黒”になったのは原作準拠らしいのだが、どうして両サイドの髪色に合わせたアイメイクまでやめてしまったのだろう。あれがある方がずっと可愛く見えると思うのだが(本作では終盤のメイクが崩れた顔の方が白塗り感が減じて可愛く見えた。そもそも明るい画面との相性が悪いだと思うが)。なお、人気キャラだから生かしておきたかったのだろうが、フラッグや彼女を救出に向かわせるのはウォラーらしくない判断だと思った。

スターフィッシュ計画には実はアメリカも関与しており、その証拠を葬り去ることこそがウォラーの目的だったと明らかになる。ここでフラッグが「知る権利!」とか言い出すのは唐突かつキャラ違いもいいところだと思うし、その後、ブラッドスポートたちが「そうは言っても市民を見捨てるわけにもいかんやろ」となるのもお約束どおり。作劇としては決して褒められたものではない。はっきり言って、かなり下手な脚本である。しかし、そんなことがどうでもよくなってしまうくらい絶賛したくなるのが、ウォラーの部下が彼女を殴り倒して対ヒトデ戦を支援すること。このシーンにどれほど溜飲を下げたことか!くたばれ、ウォラー!おかげで悪党たちの行動にも説得力が生まれるというものである。どんな悪党も、隊員の生死を賭けの対象にしていた職員たちも、ウォラーよりはマシな人間性の持ち主なのだ。

ウォラーが解き放たれたヒトデを放置して最終的にどうするつもりだったのかが気になる。ヒトデは存在自体がバカバカしくて楽しくはあったものの、相変わらず倒されるためだけに存在する物語上の必然性なき悪役だった。展開とビジュアルありきでキャラクター性は無きに等しい。ただし、ヒトデを退治する際に“主人公”がただ怯えているだけというのは笑えて好きだった。“小さな者が内部から破壊する”というのもコロナ禍映画的か。

EDロール後に絶対に何かあるだろうとは思って待っていたが、あまり面白いものではなかった。彼を主役にしたTVシリーズが来年配信予定とのことだが、映画も続編を作るのだろうか。もし次作があった場合、“キャラクターを自由に殺せる”という飛び道具が使いづらくなると思うのだが、果たして、本作の大きな魅力であった奔放さを維持することは可能なのだろうか。

フラッグ大佐のTシャツが可愛すぎて気になる。マッチョなイケメンが着ているからギャップで可愛いのであって、三十郎氏が着ても勘違いしたキモいおっさんにしかならないのだろうが。