オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『ゾンビのジョンおじさん』

My Uncle John is a Zombie!, 81min

監督:ロバート・L・ルーカス、ジョン・A・ルッソ 出演:ジョン・A・ルッソ、サイファ

概要

食人欲求を制御できるゾンビ。

短評

ポンコツゾンビ映画。珍作映画を専門に扱う岩石入道氏のブログ『極寒の国より/珍作映画を求めて』でその名を覚えたのだが、本作を制作した「itn distribution」は最低限の水準を悠に下回る珍作を発信することで悪名高いらしく、ロゴが見えた瞬間に覚悟を決めるか撤退するかのいずれかを選択すべきである。本作の内容も、脈略のないストーリー、「安っぽい」という言葉では言い表せない安っぽさと、ひたすらに虚無だった。

あらすじ

ゾンビが人類を襲撃してから50年が経過。人類はゾンビに打ち勝ったものの、彼らを全滅させられたわけではなかった。また、ゾンビ化した近親者を匿う者もおり、その中から食人欲求を制御することのできる個体が誕生する。ジョンおじさんは姪のサイファイや甥のオスカーの助けを借りて人間としての機能を取り戻し、歩行や会話、そして性交までも可能となったのだった。

感想

報道によって人気者となるジョンおじさん。有名となったことで出現する彼を狙うゾンビ狩り集団。これら二つの軸が物語の中心だが、物語と呼ぶほどの話でないことはお察しの通りである。ジョンおじさんをめぐる珍騒動をコミカルに描くというのが本作の基本的な構図ではあるものの、“逆に面白い”の水準にすら達していない映画では笑うこともできず、出演者を少し気の毒にすら思いながら退屈な時間を過ごすことになった。一応の“筋”があるのは評価すべき点なのかもしれないが、ジョンおじさん以外にフォーカスしたことで話の印象が散漫となり、何をしているのか分からない場面も多い。

「おじさん」と言うよりも「おじいさん」なジョンおじさん。彼を演じるジョン・A・ルッソは、本作の監督・脚本・主演の全てを兼任している大戦犯である。「いい年して何やってるんだ……」と呆れること必至だが、もしかすると彼の名前に聞き覚えのあるゾンビ映画愛好家もいるかもしれない。なんと彼は『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』の脚本をロメロ御大と共同執筆したゾンビ映画界のレジェンドなのだ。その彼がどうして齢80近くにもなって本作のようなポンコツの制作に乗り出したのかの経緯は不明だが、この事実を知れば、改めて「いい年して何やってるんだ……」と呆れるしかない。

有名になったジョンおじさんがCMに出演しまくるネタや、ゾンビになっても性欲が衰えないジョンおじさんのネタはしつこくて笑えなかったが、面白かったネタが二つ。一つ目は、ゾンビの放尿。緑色だった。二つ目は、差別ネタ。40年前のゾンビ殺しで起訴された老保安官が黒人女性から「白人ゾンビより黒人ゾンビを多く撃ってた」と非難され、「殺すべきね」とその場で撃ち殺される。不謹慎ながらツボだった。

ゾンビというのは、基本的には特殊メイクと演技だけで表現可能であり、低コスト故に低予算映画界の王様的なジャンルとなっている。“低予算の割には”という類のグロ描写の出来が魅力となっていることも多く、ゾンビに襲われた人間の破壊描写も低予算で達成する方法が確立しているのだろう。しかし、本作に見られる人間の臓物は類稀な登場頻度とクオリティの低さであり(色付きの“紙”に見えた)、本作のポンコツぶりを決定づけていた。また、銃口には赤い塗装が確認でき、アレック・ボールドウィンのような事故が決して起こらないことがよく分かった。