オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『ファンタズム』

Phantasm, 88min

監督:ドン・コスカレリ 出演:A・マイケル・ボールドウィン、ビル・ソーンベリー

★★★

概要

出歯亀少年と霊園の秘密。

短評

全五作のシリーズ一作目。謎多き物語であるが故に展開が読みづらく、ホラー映画として重要な不気味さが及第点に達していた。宇宙規模の壮大さも“匂わせる”だけに留めており、単純に「何が起きてるの?」だけで引っ張る力が十分にあった。「それらが全て……」という結末については上手くオチをつけたとは思うものの、逆にこの先の続編がどうなるのか不安な要素ではある。シリーズを象徴しているらしい銀玉(シルバー・スフィア)は少々安っぽかったが、その攻撃描写は面白かった。

あらすじ

友人の葬儀に参列するためモーニングサイド霊園を訪れたジョディ。彼の弟マイクはその様子を遠くから双眼鏡で覗いていたが、葬儀後、大男(アンガス・スクリム)が棺を持ち去る現場を目撃する。後日、兄がナンパした女と墓場で交わる様子を覗いていたマイクだったが、小人たちに襲われてしまう。ジョディは弟の話を信じようとしなかったものの、霊園では何かが起きており、それは兄弟に襲い掛かろうとしていた。

感想

棺を持ち去った不気味な大男の名前は「トールマン」。彼が銀玉を用いて人々を襲うチープなホラー映画なのかと思っていたら、小人たちの登場で様子が変わってくる。“襲う”という要素よりも“何かが起きている”という要素がより重視されており、それはショッカー演出によるものとは異なる類の恐怖を生み出す。要するに、なかなか雰囲気が良い。

シルバー・スフィアによる襲撃演出は、銀玉が変形して頭に突き刺さり、頭を抉って血を背後に排出するというもの。血糊の量が豪快で三十郎氏好みだったのだが、犠牲者が倒れた後に失禁するという細かさも見られた。小人やトールマンとの戦い、あるいはカーチェイスと車の爆発炎上のように派手な演出も多いものの、銀玉の存在を筆頭に“何が起きているのか”という物語の核心は一向に見えてこない。

霊園の秘密を探る内に、どうやらトールマンが死体を小人化し、他の惑星に転送して奴隷として使役しているらしいということが明らかとなる。なんだか急に壮大な規模の話になったが、これでシルバー・スフィアの存在にも説得力が出てくるというものである。三十郎氏はそこで一度納得してしまったのだが、その後のオチのつけ方が上手かった。

実は、全てはマイクの悪夢だったのである。両親の亡くした彼は、次は兄が自分を置き去りにしてしまうことを恐れており、一連の出来事はその恐怖が投影されたものであったと。三十郎氏が“宇宙的パワー”で納得した現象も、“少年の悪夢”の方がより筋が通る。切り取った指が邪悪な昆虫と化すのも、美女の正体がトールマンだったのも、悪夢である方が納得できる。あれだけ兄弟が銃を持ち出して好き勝手やっていれば、彼らだけの問題では済まないだろう。

美女がトールマンに化けた時、これではトビーは死んでも死にきれまいと思ったが、実は出歯亀少年の助平根性が反映されたものだったのか。「〇〇に似てて抜けない」現象である。ああ、怖ろしい。

さて、夢オチと分かった後にマイクがトールマンに襲われる二段オチだったが、続編の展開はどうなるのだろう。悪夢だと分かった上で、マイクが内面の恐怖に立ち向かう話になるのだろうか。それだと流石に五作品も続かない気がするのだが……。主人公を変えて同じことを繰り返すわけにもいかないだろうし。果たして。