オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『フロンティア』

Rubezh(Frontier), 99min

監督:ドミトリー・チューリン 出演:パヴェル・プリルチニー、クリスティーナ・ブロスカヤ

★★★

概要

時をかけるちょい悪ビジネスマン。

短評

ロシア製の“SF戦場ミステリードラマ”。メインの部分はタイムトラベルものなのだが、これだけ多くのジャンルを組み合わせれば(そして無理やりすぎて破綻していなければ)単純に新鮮である。多少の疑問がないでもないが、話の出来自体も悪くなく、戦場のシーンも迫力がありと(そこにスーツ姿の現代人がいるのも面白い)、CGの使用が自己目的化しがちな近年のロシアンエンタメ映画の中にあっては比較的面白い部類だったかと思う。

あらすじ

都市開発を手掛けるビジネスマンのミハイル・シューロフ。彼が取り組んでいる現場には第二次大戦中の塹壕の遺跡や遺体があり、開発は抗議を受けていた。抗議活動をする女(クリスティーナ・ブロスカヤ)が美人だったため、ミハイルはとりあえず彼女の話を聞いてみることにするのだが、その最中に突如として塹壕が崩落。ミハイルが目を覚ますと、なんとそこは第二次大戦の戦場だった。

感想

理屈は分からないが(最後に一応“分かった感じ”にはなる)ミハイルが過去と現在を行き来し、彼の家族の歴史を知るという話である。抗議女(名前は最後に明かされて「リザ」)から「アレクセイ・シューロフって人もここにいたのよ。あなたの先祖じゃないの?」と言われるも「親父が孤児院でつけられた姓だから関係ねーよ」と返すミハイルだったが、やはり先祖だったという展開と迎える。

これ自体はお決まりの流れなのだが、ミハイルが過去へと飛ばされたり、現在の世界の一部が過去化したりと、“何が起きているのか”が皆目見当がつかないため、物語の牽引力が失われることはない。ミハイルが「こうすれば戻れるに違いない」と考える方法は、「いや、それ根拠ないよね」といまいちノレないのだが、ある意味では上手いミスリードとして機能していたと言えるだろう。「何が起きてる?」と「どうしたら戻れる?」で話を引っ張っておいて、遂に“本編”が登場する形である。ジャンルミックスの特性を上手く利用していた。

実はミハイルは崩落事故によって昏睡しており、全ては彼の精神世界における話だった。ミハイル及び観客が“現実”だと捉えていた世界が第一層、タイムトラベル先だと捉えていた世界が第二層という構図である。これでどうしてミハイルの脳内にない情報を知りうるのかについてはスルーするより他にないのだが、伏線の描写は上手かった。戦場ではやたらと青とピンクのカラーパウダーが舞っており、ちょっとしたインドのお祭りのようになっている。これは照明弾と何か関係でもあるのかと思っていたら、第一層の照明も同じ色をしていて、両方とも現実世界ではないことを示唆していたわけである。

第二層の世界に対してミハイルは不干渉であるはずが、どういうわけだか怪我をしたり、怪我をすると第二層内の人間に認識されたりする。これは接触するために必要な設定だったのだろうが、ルールとしてはかなり不明確だった。まあ、精神が過去に飛んでいる時点でルールなんてあってないに等しいのだけれど。

引き抜いた金具を元の位置に戻せば帰れると信じて失敗し、次は先祖の死に際を見届ければ帰れる信じて失敗しと、いちいち根拠なく奮闘するミハイル。そんな彼の真の任務は、そうとは知らぬまま戦場へ向かった祖父アレクセイに恋人が妊娠したという手紙を届けることだった。ミハイルは祖父に「生きて帰れ」と命じ、そこで意識を失う。これが通常のタイムトラベルものであれば、死んだはずの祖父を死なせなければ自分が誕生しなくなることを恐れそうなものだが、精神世界の話なので問題ないのか。そうなると改めて“ミハイルの知り得ない情報”が気になってくるわけだが、実は全て彼の脳内で創り上げられた偽歴史という可能性もあったりはしないだろうか。

フロンティア(字幕版)

フロンティア(字幕版)

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