オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『未成年』

미성년(Another Child), 95min

監督:キム・ユンソク 出演:キム・ヘジュン、パク・セジン

★★★★

概要

親に不倫された二人の女子高生。

短評

舞台劇原作の韓国映画。毎日映画を観ては感想を書いている三十郎氏としては、これを言うのは強く躊躇われるのだが、感想を言葉にしづらい一作である。各場面ごとに複雑な感情が様々に惹起され、“どう感じたのか”を貧弱な語彙でまとめてしまうと、却って作品を貶めている気がしないでもない。したがって、当ブログを読んでも作品の良さは伝わらないかもしれないが、それでもとてもいい映画である。

あらすじ

父デウォンが不倫していることを知ってしまった女子高生のジュリ(キム・ヘジュン)。その上、相手は学校で不良と噂される同級生ユナ(パク・セジン)の母ミヒ(キム・ソジン)。戸惑うジュリは勉強も手につかなくなり、学校でもユナと激しく対立するのだが、さらにはミヒの妊娠まで発覚してしまう。

感想

状況設定はなかなか重い。ジュリにとっては、それまで当然の存在だった家庭が父の不倫によって崩壊しようとしている。クラスでは委員長を務め、塾通いして大学を目指す優等生な彼女にとって、それは正に青天の霹靂である。彼女が不倫を“なかったこと”にしたがるのも当然だろう。一方のユナは、母はシングルマザーで自身はコンビニバイトとジュリのように恵まれた境遇ではないが、無責任な母の代わりなのか現実を重く受け止めている。二人とも自分には全く責任のない出来事によって人生が大きな転機を迎えようとしている。そして、それが決して好ましい転機ではないという認識は一致している。

不倫の当事者ではない娘たち二人、そしてユナからの電話で不倫を知ってしまったジュリの母ヨンジュ(ヨム・ジョンア)がジタバタしている一方で、当事者のデウォンとミヒは至ってお気楽。デウォンは皆が知っているのにバレてないと思っているし、ミヒは娘に何と言われようと「うるさい!私だって幸せになりたいの!」と譲らない。当事者たちの無責任さが主人公の女子高生二人の悲痛さを際立たせる。特にデウォンの頼りなさには皆呆れ返ることだろう。

そうこうしている内にミヒが切迫早産。それまでは激しく対立していたジュリとユナだが、“弟”を前にして生命の神秘を感じ、徐々に連帯感が生まれはじめる。状況自体はかなり重いのだが、二人の学校でのケンカが激しすぎたり(教師曰く「強化ガラスだぞ」)、来院したデウォンが二人から逃げ回ったりとコミカルな描写も見られ、また、出産以降は「どうにかなったりするのかな」という希望も垣間見えてくる。赤ん坊、つまり“生命の力”というものは凄い。そこに投下される爆弾はあまりにも強烈なのだが、最後の“遺灰牛乳”が象徴しているように、二人は今回の経験を“自分の一部”としてこれからも生きていくのだろう。この出来事を“通過”できるのは、きっと彼女たちの年代だけである。それよりも幼ければ受け止めきれず、それよりも年を取っていれば一生引きずるか、あるいは現実逃避するに違いない。

ジュリの母ヨンジュのキャラクターが興味深い。母親、妻、そして一人の女──彼女を構成する様々な要素が葛藤する。彼女は「これから“自分が”どうするのか」で頭が一杯のはずなのに、それよりも他者を気遣う人物である。朝食を食べなくなったジュリを裸足で追いかけて弁当を渡し、憎いはずのミヒの入院代を肩代わりし、ユナにも「あなたは何も悪くない」と気遣う。もっと怒ってもいいはずなのに気丈に振る舞うのは、そうすることでしか自分を保てないからなのか。彼女が“自分を維持"するために、不倫発覚までは無頓着だった身なりに気を使うという演出も上手かった。「性欲?愛?」との詰問も面白い(デウォンが答えられないのがまた何とも)。

娘から「不倫相手が結婚してくれるわけないだろ」と正論を突き付けられても無視して出産し、出産後も無責任に食っては寝るの入院生活を送るミヒ。最後の最後までどうしようもないダメ男であるデウォンと同じく彼女もまたどうしようもないダメ女なのかと思ったが、一つサプライズがあった。若い内にユナを産んで“自分の人生”がないと感じていた彼女が、将来がないと知りながらも不倫に浮かれ、挙げ句は子を産んだのは現実逃避だったのだろうが、出産後もなお母性を発揮しなかった裏には隠された事実が。その事実を知ったユナが、母を責めつつも見捨てられない場面は本作屈指の名シーンかと思う。願わくは、赤ん坊の死と共に逃避を終えたミヒの人生が好転せんことを。彼女は立派に娘を育てたのだから。

どこまでもいいところのないデウォンなのだが、この男を演じているのが監督キム・ユンソクである。一晩かけて用意した台詞を妻が聞いておらず、それでなんとかなるとばかりに繰り返すシーンが最高だった。俳優としての活躍が有名な人であり、本作が監督デビューらしいのだが、これはまた韓国映画界にフォロー対象が生まれたかもしれない。

未成年(字幕版)

未成年(字幕版)

  • ヨム・ジョンア
Amazon