オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『ミス・ギャングスター』

육혈포강도단(Twilight Gangsters), 108min

監督:カン・ヒョジン 出演:ナ・ムニ、キム・スミ

★★★

概要

婆さま強盗団。

短評

ベタすぎて爆発力はないが安定感はある韓流コメディ。銀行強盗までしてしまうようなパワフルすぎる老人たちの姿を笑う。ただそれだけの映画ではあるものの、これがなかなか痛快だった。日本で同じ設定の作品を撮っていれば、きっと老人たちのウザさにイヤな現実味があったり、逆にカリカチュアされたキャラクター性が気になってしまうのだろうが、海外の作品であれば他人事である。“韓国のおばちゃん”という属性が、まるで“口うるさい面白黒人”のように上手く機能していた。

あらすじ

日々スーパーで買い物(=万引き)した商品を仲間の老人相手に競売に掛けては小銭を稼いでいるジョンジャ、ヨンヒ、シンジャの未亡人三人。遂に目標金額である837万ウォンに達し、意気揚々と旅行代理店に向かう。三人は高級ツアーでのハワイ旅をずっと夢見てきたのだった。ところが、三人が代金振り込みのために銀行へ向かうと、強盗の襲撃に遭ってしまう。強盗退散後、行員のミスにより振り込みが未完了であったことが発覚し、三人はハワイ旅行の資金を取り戻すべく奮闘するのだった。

感想

ヨンヒの収監中の息子から得た情報を基に張り込みを続け、強盗を拘束した三人。しかし、男は仲間に金を持ち逃げされてしまったと言うため、三人が自ら強盗で旅行代金を取り戻そうとする話である。元々万引した商品を闇市で捌くことで得た金であるため、三人には倫理観など無きに等しいのだが、一応は責任逃れする銀行への復讐譚も兼ねられている。手続き完了の押印がまだだったという理由で振込未完了となるのだが、この場合、旅行代金の管理責任は銀行側にあるはずだから、「奪われたから振込できていません」は通用しないのではないだろうか。“銀行の資産”と“三人の持ち込んだ代金”は本質的に区別されないはずである。

ジョンジャが「ガンで余命僅かだから最後にどうしてもハワイに行きたい」と言い出し、銀行強盗の決意を固める三人。元強盗の男から訓練を受け、遂に本番に臨む。この時の「老人」と呼ぶにはあまりにパワフルだが「強盗」と呼ぶにはあまりに弱々しい、そんなテンプレ描写がなんだかんだで笑えるのだった。いざ本番の強盗の際、行員が「(通報するまでもないな……)」と判断し、“高齢者への寄付金”を渡していたというオチも笑えた。三人は人生の先輩たちへの扱いの悪さを嘆いているが、なんだかんだ韓国は儒教社会である。

寄付金の額が8万ウォン強だったので再挑戦する三人。具体的過ぎる要求額、同じ銀行での強盗、そして老人強盗という珍しすぎる属性。正体がバレる要素しかない。続発する強盗事件を受けて警察がすぐに駆けつけ、最初の事件を担当したヤン刑事(カン・ギョンホン)も「あのおばあさんたちじゃない?」と察する。なお、窓口で奪ったお金は即座にATMで振り込まれており、「それができるのなら最初の時点で……」と思わずにはいられなかった。そこで振り込んだら履歴だって残るだろうに。隅々までツッコミどころを残したポンコツ強盗団なのであった。ただし、スクーター三人乗りの逃走劇ではそのギャップを上手く利用している。

「おばあさん」と呼ぶと「誰がおばあさんだって?」とぶちギレるヨンヒ。そこに冗談の色が一切見えない辺りが強い。彼女こそは“クソババア”の要素を煮詰めた人であり、コメディの面で物語を牽引している。リアルでは絶対に遭遇したくない、比類なき存在感である。ジョンジャは比較的普通のおばあさんなのだが、三人の中で最も若く、また育ちの良いシンジャについては、残念ながら外見的にも演技的にも“作られた感”が強かった。

生活保護を受けるジョンジャの家が半地下だった。やはり貧困の象徴なのだな。