オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『ザ・タイガー!!!』

Sming(Sming the Hunt Begins), 105min

監督:パン・ウィシットサック 出演:プータリット・プロムバンダル、アティワット・ティーラニティットナント

★★

概要

妖虎vsハンター軍団。

短評

邦題に偽りなくトラが登場するタイ映画。と言っても、“妖虎”なので正確にトラというわけではないのだが、ジャガーをトラだと偽った作品と比べれば問題ないだろう。タイ映画の枠で考えればCGが高クオリティであり、また、妖虎に立ち向かうハンター軍団もキャラが立っている。これはさぞかし面白い妖虎バトルロワイヤルが見られそうだと期待したのだが、どういうわけだかダークファンタジーやホラーの要素に対する諦めが悪く、絶望的にテンポが悪かった。正直に言って、B級アクション映画に特化してくれた方が三十郎氏の好みだったと思う。

あらすじ

タイのジャングル奥地の村では人に化ける妖虎が度々出現しては村人たちを襲っていた。妻を妖虎に殺害されたハンター・ブーンは復讐を誓うものの、頼みの綱であった彼も虎の前に倒れる。困った村人たちはレンジャーに助けを求めるも、相手にしない所長はその日着任したばかりのチャートに一任。村にはチャートの他にも妖虎を狙うハンターたちが集まっており、壮絶な戦いの幕が上がるのだった。

感想

妖虎に立ち向かうハンター軍団を紹介しよう。「密猟者ではないですよ」とは言うものの、どこからどう見ても密猟者な白人三人集。チャートの本来の仕事は密猟の取り締まりなのだが、彼らが村まで乗せてくれると言うため、見て見ぬ振りをする。他にも、黒魔術を操るクメール族の男や棒術を操る中国雑技一家、そして黒犬リトル・ダムを連れた脳筋斧使いハンダー・ダムと、なかなか魅力的な面子が顔を揃えている。

さらには実は生きていたハンター・ブーンも帰ってきて、彼らが特に協力するわけでもない妖虎狩りが始まるのだが、ハンターたちの紹介パートのワクワクがどこに消えたのか分からなくなるくらいに退屈な展開が続く。雑技一家が虎の攻撃をいなしつつ集団で攻撃する描写やダムがノーマル虎の頭をカチ割るシーンは凄く楽しかったのに、いざ“本編”が始まってみると、人に化けた妖虎がピョーンと飛び出てハンターや村人を襲う描写が断続的に続くだけ。同じ展開の連続で流石に飽きる。別にハンターたちが順番にやられていくシンプルな展開で構わないから、とにかく戦ってくれ!

ブーンが帰ってきた時点で察してはいたものの、やはり彼は既に死んでおり、その正体は実は妖虎だった。しかし、妖虎は殺した人間の魂を吸い取ることで化けるらしく、「あ、俺、死んでるやん……」と気付いた直後のブーンの魂が最後に一仕事する。霊体化したブーンが妖虎を取り押さえ、そこにブーンの娘ラムドゥアンがナイフを一閃。父娘共闘の感動的な結末を迎えるのである(それまで写真を撮るばかりで全く仕事しなかったチャートもここで急に覚醒する)。もっとも、そんな展開に素直に感動できるほど三十郎氏はピュアな魂の持ち主ではないため、他のキャラ立ちしたハンターたちが死闘の末に敗れ去る描写を見たかったという感想が強く残った。

“人間に化ける”というのが妖虎の能力なのだが、この能力をホラー方面に上手く活かせていたとは言い難い。白人ハンターを中心に明らかに化けた妖虎にホイホイと釣られては殺される阿呆が多く、“誰も信用できない”という状況がスリルを生み出せていなかった。なお、本来は皆が疑心暗鬼に囚われるはずの状況下において、これを全く意に介さない者が一人だけいて笑えた。ハンター・ダムである。彼は「本物か偽物か分からなくてもとりあえず殺す!」な脳筋スタイルの持ち主であり、それが斧使いという属性に上手く合っている。ただし、妖虎は人以外にも化けられるらしく、愛犬リトル・ダムに化けられると攻撃を躊躇ってやられていた。意外に心優しい男なのであった。

トラのCGについては、外見だけならなかなかのクオリティである。ただし、“動き”についてはまだまだという印象で、雑技一家との戦いはどこかぎこちなく、また、他の襲撃シーンも横っ飛びや画面に向かってくる描写に限定されていた。頑張ってはいたと思うが、技術力的にも本格的なバトルロワイヤルをやるのは厳しかったのだろう。なお、半人半獣の妖虎も登場するのだが、こちらは失笑レベルのCGである。

ザ・タイガー(字幕版)

ザ・タイガー(字幕版)

  • プータリット・プロムバンダル
Amazon