オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『ザ・タイガー 救世主伝説』

El Ardor, 100min

監督:パブロ・フェンドリク 出演:ガエル・ガルシア・ベルナルアリシー・ブラガ

★★

概要

土地収奪部隊vs地元民。

短評

アルゼンチン映画。トラの襲撃に悩まされる地元民のためにガエル・ガルシア・ベルナルが救世主として立ち上がる話……ではなかった。トラが救世主として地元民のために戦う話でもなく、そもそもトラは出てこない。出てくるのは「タイガー」ではなく「ジャガー」である。邦題(及び字幕)詐欺はともかくとして、内容的には非常に地味であり、重苦しい雰囲気とポンコツ気味な主人公とのギャップをどう受け止めたものか分からずに困ってしまった。

あらすじ

アルゼンチン、パラナ川流域のジャングルでは古代より救世主召喚の儀式が行われていた。暴力を用いた土地の収奪に苦しむ農園主ジョアンが救世主を召喚してみると、川から一人の男(ガエル・ガルシア・ベルナル)が出現。男の出現も虚しく、ジョアンは襲撃者に土地を、そして命を奪われてしまうのだが、男は連れ去られてしまったジョアンの娘(アリシー・ブラガ)を追って行動を開始する。

感想

冒頭に救世主伝説について文字で紹介があり、その直後にガエル・ガルシア・ベルナルが川から上がってくる。ジョアンもこの男に土地の命運を託している風であるため、この無口で神秘的な雰囲気の男が伝説の救世主なのかと期待するわけだが、これがとんでもない役立たずなのである。

収奪者による夜襲を受けた際、男は娘の料理を手伝っていて、家の外で人が殺されているのに隠れたままで何もしない。娘が勇敢に立ち向かって捕らえられてしまおうとも、男はなおも隠れたままで、ジョアンが契約書にサインさせられた後に首を切られる様子をただ見守っているだけなのである。ぜんぜん救世主じゃねえ。後に「出ていっても皆殺しにされただけだし……」と理由を口にしていたが、「救世主」と呼ぶにはあまりに頼りない。

それもそのはず。男はかつてジョアンたちと同じように住む土地を奪われた“ただの人間”であり、森を彷徨っていたらタイミングよくジョアンの前に現れただけということが判明。そんな男が結果的には救世主となるまでを描いた作品ということになるのだが、その活躍は非常に地味であり、ある種の信仰が伴わない限りは観ていて楽しいものではないと思う。

ポンコツ救世主伝説。娘がレイプされそうになったところを救い出し、自らが交わる男。無口であっても南米人は情熱的である。行為後、男たちは寝落ちしていしまい、そこにレイプ未遂男が出現。女は気付いて起きるのだが、男の方は寝たままである。やはり頼りない。そんな絶体絶命の状況を助けてくれるのがジャガーなのだが、“内なる存在”といったわけでもなさそうだし、ただ都合よく使われていただけの印象だった。

IMDbの第二ジャンルが「Western」となっていることからも分かるように、土地の収奪者と流れ者が戦うという構図は西部劇そのものである。そのジャンルを象徴するかのように、最後は敵のボスと一対一で撃ち合うのだが、互いにライフルを構えた状態で、しかもほぼ外さない距離での勝負となると、勝敗を決める要素は何なのだろう。スタートの合図があって早撃ち競争するわけでないし、相手に遠慮せずに先攻した方が勝ちそうなのだが。

ちなみに、「トラ」の模様は「縞柄」である。そして、ヒョウ属である「ジャガー」の模様は「ヒョウ柄」なのだが、斑模様が大きめの種類がジャガーらしい(ジャガー>ヒョウ>チーターの順で大きい)。また、アメリカ大陸に分布しているのもジャガーだそうである。「ヒョウかな?ジャガーかな?」と迷うことがあったとしても、トラだと勘違いすることはないかと思うが、その見分け方を覚えられたのが本作最大の功績と言えるだろう。次に判断が必要となった時には忘れているかもしれない。