オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『ザ・クーリエ』

The Courier, 99min

監督:ザカリー・アドラー 出演:オルガ・キュリレンコゲイリー・オールドマン

★★

概要

配達人の女。

短評

随所に頭の悪さが滲み出ているアクション映画。「頭の悪いアクション映画」という言葉はポジティブな意味で用いられることもあるかと思うが、本作はその限りでない。本来の意味の通りダメな映画である。そもそもの状況設定、登場人物の意味不明な行動、ショボいアクション、意図されているはずの状況と実際の画面の乖離、そして何故か主人公よりも目立ってしまう“やられ役”たち。最後のやられ役の部分だけは無駄に気合いが入っていて笑えたのだが、映画全体としては共演シーンのない豪華キャスト二人を無駄遣いしただけのポンコツだった。

あらすじ

一代で犯罪帝国を築き上げたマニングス(ゲイリー・オールドマン)が逮捕され、その裁判が迫っていた。マニングスによる殺人現場を目撃した証人ニックはロンドンからのビデオ中継で証言する予定だったものの、その会場に運び屋の女(オルガ・キュリレンコ)が現れる。その運び屋はマニングスが送り込んだ刺客……ではなく、警備を担当する内通者シモンズ(アリシア・アグネソン)が罪をなすりつけるつもりで呼び寄せたのだったが、彼女は元軍人の敵に回してはいけない相手だったのだ。

感想

“舐めてた相手がヤバかった”のオルガ・キュリレンコ版である。「なんかハメられちゃったみたいだし、あんたのこと助けてあげる」と証人を逃がそうとする展開にはまるで説得力がないのだが、B級アクション映画の主人公は理由もなく正義の人なのが常である。これはスルーしても構わない要素だろう。むしろ厳重な警備体制を敷いているはずの会場に部外者である配達人を呼んでおいて、「やられちゃいましたぁ」とするつもりだったシモンズ捜査官の知能をこそ疑うべきである。仮に配達人が凡人だったとしても、責任問題及び内通疑惑の追求は避けられまい。

さて、ご自慢のバイクに証人を乗せてさっさと逃げ出してしまえばよさそうなものだが、恐らくは予算の関係でビル内での戦いとなる。折角のロンドンという舞台だが、これはスケジュールを合わせると無駄に予算が嵩むために共演シーンのないオルガ・キュリレンコゲイリー・オールドマンに物理的な距離を取らせることが目的だったのだろう。ここにも低予算によるショボさの印象が先行するが、好意的に捉えるならば“逃げ場のない状況”を用意したとも言える。その絶望感が全く感じられないとは言え、刺客たちとの戦いのショボさに比べればどうということはない。

とりあえずその場にあった車に乗った配達人。しかし、バイク乗りである彼女は「だから車は嫌い!飛び降りるわよ!」と乗り捨てする。よくある演出だとは言え、走行中の車からの“決死の飛び降り”が見られるのかと思いきや、なんとその場面は映らない。代わりに既に乗り捨てられた車が敵の元に辿り着き、中に誰もいないのに銃撃を受ける様子だけが映し出される。配達人が「飛び降りる!」と宣言したのだから中に人がいなくてもサプライズにはならないし、オルガ・キュリレンコに飛び降りスタントが無理でもスタントダブルを使えばよい。謎の演出だった。

その後も止まらない謎演出。配達人のヘルメットには暗視スコープ機能が搭載されているため、彼女はビルの電気を落として戦おうとする。しかし、緊急用の赤い照明が煌々と灯っており、敵が必死に懐中電灯を使って彼女を探いている画が不自然でしかない。なお、配達人は“暗闇”からサササッと敵に忍び寄ってカッターによる攻撃を加えるのだが、この動作がなんともノロい。さらに、その敵を倒した後は同じ赤い照明の下で別の敵と普通に近接格闘を繰り広げており、明かりではなく暗闇という設定がどこかに消え去っていた。

「シリアで兄を殺されたの」と証人に明かす配達人。彼女の兄は味方を誘き出すためにスナイパーになぶり殺しにされたそうである。そのトラウマと戦う演出なのか、本作の敵も一番強い奴はスナイパーである。ただし、彼とは近接戦闘による勝利を収めており、それで「スナイパーに勝った」としてよいのかは疑問が残った。配達人がスナイパーにロープで首を絞められ、そのロープをナイフで切るシーンがある。その後、腕で再度締め上げられてて“落ちる”のだが、ロープではなく敵に突き刺せばよかったのでは?

オルガ・キュリレンコのアクションがショボい一方で、彼女にやられる敵側の描写だけは謎の気合いに満ちていた。“轢き殺された男”の頭が“挽き殺された”になっていたり、主人公ではなく敵の方が長々と階段をゴロゴロと転がり落ちたり、急ブレーキで吹っ飛ばされた男の後頭部が欠けていたりする。明らかに力の配分を間違ってはいたものの、本作における数少ない魅力的な要素ではあった。