オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『ミック・テイラー 史上最強の追跡者』

Wolf Creek 2, 106min

監督:グレッグ・マクリーン 出演:ジャン・ジャラット、ライアン・コア

★★★

概要

オーストラリアの陽気な連続殺人鬼。

短評

オーストラリア製実録スラッシャー映画。本作はシリーズの二作目らしいのだが、一作目を観ていなくても特に問題なく楽しめた(『ウルフクリーク/猟奇殺人谷』の続編であることが分かりづらい邦題だが、そうと知っていれば観なかったのでむしろよかった気もする)。内容的にはゴリゴリのオーストラリア訛りな英語を話すおっさんが理不尽に外国人観光客を狙うという“反観光キャンペーン”みたいな一作である。おっさんの陽気なキャラクターと相当に残酷な描写の組み合わせ、割とキツめのグロ一辺倒なのかと思いきや唐突に繰り出される笑い。中盤以降は若干失速した気もしたが、オーストラリアに行ってみたいという気持ちをしっかりと失わせる映画だった。

あらすじ

点数稼ぎのために実際には制限を超えていないスピード違反の車を取り締まる悪徳警官たち。しかし、その日は相手が悪かった。彼らが止めてしまった男ミック・テイラーは、違反切符を受け取った後、二人の警察官を悠々と殺害して立ち去るのだった。彼の次の標的となったのは、ドイツからオーストラリアにやって来てヒッチハイクで旅をしているカップル。キャンプが禁止されている国立公園内で野営中の二人にミックが近づき……。

感想

“おっさんが主役”な邦題とパッケージの雰囲気も手伝ってか、序盤のミックには“ダークヒーロー”の感がある。ネズミ捕り警官たちは殺されてスカっとするし、禁止エリアで焚き火の始末もせずにキャンプする外国人も非常に迷惑である。そんな“悪者”たちをミックが退治していく映画なのかと思いきや、彼がカップルの男を解体中に女(シャノン・アシュリン)に逃げられ、彼女が助けを求めた男ポールこそが本作のメイン被害者であると判明。彼は純然たる“巻き込まれ型”であり、ミックが彼を執拗に狙う理由は“お楽しみ(=レイプ)”を邪魔されたからというもの。前作を観ていれば分かっていたことなのかもしれないが、やはりとんでもない異常者なのだった。

野営をする前、ヒッチハイクで乗せてもらえずに「博愛精神はないのか!」とキレるカップルの男。なんと傲慢なことだろうか。そうした描写もあって彼らが“始末されるべき存在”に思えたのだが、実際には男の「ちゃんと地図で確認した」という言葉が真実だったのだろう。なお、この“乗せてもらえない”という描写はポールの時にもあり、ミックから逃げている時に車がガス欠になりかけた彼が通り掛かった車に助けを求めると、やはりここでも素通りされてしまう。「ヒッチハイカーが無視されてしも仕方がない」と思うのは同じはずなのに、絶望感がまるで違う。上手い対比だと思った。

警察官を狙撃し、見事に頭を撃ち抜くミック。ここで半分に割れた頭の描写が秀逸であるため、“グロ”という面での期待が一気に高まる。その後も、カップルの男の解体シーン(ミックが「ロバなみ」と評するイチモツにはボカシあり)、さらなる狙撃、クイズに正解できないと切り落とされる指、そして半分腐った死体が溢れかえる監禁用の地下空間と、キワモノ映画的な楽しみに事欠くことはなかった。ミックがポールとのカーチェイス中にカンガルーの群れを次々と轢き殺すシーンなんかは笑えるのだが、他は割とガチめでキツめのやつである。

ポールを監禁し、「オーストラリアンクイズ大会」を開催するミック。全10問の内5問に正解すれば解放されるが、クイズに間違う度に指を一本切り落とされるという恐怖のルールである。このクイズ大会では「合ってたけどムカついたから」と“俺様ルール”を発動してポールの指を切るミックの理不尽さの他に、ミックが外国人、特にイギリス人に対して抱えている複雑な感情が明らかとなる。カンガルーを轢き殺すシーンはギャグっぽいのだが、ミック本人にとっては外国人観光客もまた同じ“駆除すべき害獣”に他ならないのだろう。

実話レベル「Based」となっており、映画の最後にポールの証言を基に制作された旨が明かされるのだが、ミック・テイラーのキャラクターは創作なのだろう。「田舎ヤバい」系の怖さの一つに、異常者が何をしていても周囲に誰もいないから気付かれないというものがあるかと思うが、オーストラリアの広大過ぎる大地はその設定に必要以上の説得力を与えていた。

ちなみに三作目の制作が予定されているそうである。