オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『新アリゲーター 新種襲来』

Alligator Alley(Ragin Cajun Redneck Gators), 88min

監督:グリフ・ファースト 出演:ジョーダン・ヒンソン、リッチー・モンゴメリー

★★★

概要

赤首の新種ワニ。

短評

クオリティの低さ故の結果ではなく最初から狙ってバカ映画をやっているタイプのワニ映画。一般作品の枠ならば低クオリティだがワニ映画の枠であればそこそこというレベルのワニCGが象徴するように、これが“意外といける”。変異したワニの襲撃とド田舎のロミジュリを組み合わせたストーリーにもプラスアルファがあり、これがまたバカらしくて笑えた。一歩間違えば『丘ジョーズ』になりかねない設定ではあったものの、同作と比べれば遥かに高クオリティである(同作よりも低クオリティの作品を探す方が難しいだろうが)。

あらすじ

大学入学以来、4年ぶりに故郷へと帰ってきたドウセット家のエイブリー(ジョーダン・ヒンソン)。彼女の父ルシアンはシーズン入りを控えるワニ狩りを前に浮かれていたが、ロビショー家が川に廃棄した化学薬品入りの密造酒により新種の獰猛な赤首ワニが出現していた。赤首ワニの犠牲者が出たことによりルシアンたちは退治に乗り出すものの、長年の確執を抱えるドウセット家とロビショー家の溝が埋まることはなく……。

感想

一部役者との直接の接触がある場面では模型を使用しているものの、ワニの描写は基本的にCGである。これが決して高クオリティとまでは褒められないのだが、かと言ってそこまで酷いわけでもない。クオリティ云々はさておき、“画面に出すことが憚られるレベル”でないのが非常によかった。出し惜しみがないのである。ワニが普通に出てきて、普通に人を襲う。B級パニック映画で出し惜しみしたところで誰も恐怖を感じてくれはしないため、人間がギャーギャー騒いだり、ワニの仕業かどうかで揉めている様子だけを延々と見せられるよりはよほどよい。

化学薬品の不法投棄により変異した新種ワニ。ありがちな設定ではあるものの、尻尾に生えた棘を発射する攻撃方法は新鮮だった。しかし、ただそれだけであれば“少し変わったワニ”の枠を出ないのだが、面白いのはここからである。ワニとの戦いで負った傷が化膿し、最終的には“ワニ人間”、否、ワニそのものになってしまう。普通にワニを描くだけでも映画として成立しそうなクオリティだっただけに、まさか棘とは別の形の“飛び道具”が出てくるとは思わなかった。バカすぎて一本取られた形である。ちなみに、ワニ肉を食べてもワニ化する。一体密造酒に何を入れたのか。

「ワニ狩り」と「密造酒作り」という特に名家でもなさそうなくせに長年に渡りいがみ合っているドウセット家とロビショー家。両家の子息エイブリーとデイサンが恋人どうしで、家名を気にするのが恥ずかしくなるようなド田舎ロミジュリを演じている。お約束的展開であれば、ワニとの死闘を経て二人が結ばれるのだろうが、本作はここにも変わり種を仕込んでいる。なんとデイサンもワニ化し、ご都合主義的に人間に戻ることもないのである。「何か新しいものを作りたい」という制作者の気概が伝わってくるではないか。

自分の家族がワニ化してしまった事実に気付きながらも、「このままだと村が危険だから皆殺しにする」と覚悟を決めるエイブリー。ワニ化した父ルシアンとは意思疎通できていたのに容赦ない娘である。ロビショー家の主ウェードも「ドウセット家との確執にここで終止符を打つ!」と乗り気で、ここに至るもなおしょうもないロミジュリモードを続けている。無駄に火薬を使用した最終決戦でワニが退治されたことよりも、ルシアンとウェードが相討ちになって両家の迷惑ないがみ合いが終結したことの方が村人たちにとってハッピーというエンディングだった。まったくもって涙と感動の対決シーンにはなっていない。本当にバカな話だよ。

赤首ワニとの戦いから一年、エイブリーはデイサンとの間にできた子を出産し、ワニになったままのデイサンと二人と一匹で暮らしている。そして、何をして生計を立てているかと言えば、なんとワニ革を売っている。夫がワニで(法的に結婚できそうにないから恋人のままか)、ワニ革を売る。サイコパスの所業である。とてもじゃないが「私は動物を保護するビーガンよ!」と言っていた女だとは思えない。戦いは人を変えてしまう。また、ロミジュリを演じていた二人の再会も四年ぶりとのことだったが、交わったのはデイサンにワニ化の徴候が出はじめた後だったと思う。子供も変異したりはしないのだろうか。