オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『英雄は嘘がお好き』

Le Retour du héros(Return of the Hero), 90min

監督:ローラン・ティラール 出演:メラニー・ロランジャン・デュジャルダン

★★★

概要

偽英雄の帰還。

短評

二人の名優を主演に迎えたフランス産コメディ。フランス映画らしさを感じさせないベタベタなコメディではあるものの、ベタに楽しかった。全体的には予定調和以外の何物でもないのだが、状況設定、キャラクター、演技、そして下ネタの要素がバランスよく揃っており、フランス映画らしからぬ“ちょうどよさ”を感じさせる一作となっている。ラブコメ的な作品ではあるものの、三十郎が苦手な「ラブ」の部分については完全におまけ程度の扱いであり、これがまたちょうどよかった。

あらすじ

ヌヴィル大尉(ジャン・デュジャルダン)との婚約が決まったポリーヌ(ノエミー・メルラン)。しかし、大尉はすぐに戦場へと招集され、彼が毎日書くと約束した手紙は待てど暮らせどやって来ない。傷心のポリーヌは体調を崩して寝込むようになり、そんな妹の姿を見かねた姉エリザベット(メラニー・ロラン)が一計を案じる。彼女は大尉に成りすまして手紙を書き、妹を励まそうとするのだったが……。

感想

調子に乗って話を盛りすぎたエリザベット。大尉の英雄譚は街中で噂となり、「妹も元気になったし、この辺で終わりにしとくか」と大尉の死を示唆する手紙を執筆。ポリーヌもニコラという別の相手を見つけて結婚したのだが、それから三年後、大尉が乞食のようなみすぼらしい姿となって帰ってきたからさあ大変、という話である。

この状況設定であれば、エリザベットによる偽手紙執筆をメインとし、最後に大尉が帰ってきて大団円という展開でもそれなりに面白くはなっただろう。大尉役に大物を起用する必要もないため、きっとギャラ的にも安上がりだったはずである。しかし、大尉役に名優ジャン・デュジャルダンを起用しただけのことはあり、彼のコメディアンぶりがなかなか面白い。戦争終結によって帰還したわけではなく、脱走兵として逃げ戻ってきた彼の“すっとぼけ”ぶりが大きな見所となっている。彼はエリザベットが広めた偽の英雄譚に全力で乗っかるのだが、その胡散臭さと言ったらない。いい意味での軽薄さに満ちていた。

その一方、自分の創り上げた英雄像を大尉に乗っ取られるのが気に食わないエリザベット。演じるメラニー・ロランは本作が初のコメディ映画出演だったらしいののだが、こちらもベタベタな演技を披露している。大げさに騒ぎ立て、大尉を失墜させようと画策し、そして恋に落ちる。“恋に落ちる”の部分がいささか予定調和が過ぎると感じたのだが、(大尉のキスが“腑抜け”で)「あれ?これは違うんじゃない?」と思い直していて笑った。それまで激しく敵対していたのに、脱走兵の存在を軍に知らせようとして「それじゃマジで殺されるんですけど」と大尉から真顔で言われるとすぐに思い直す展開も唐突に感じられたが、これも人間臭さか。

偽の名声を武器に投資を募り、「ピラミッド式」と呼ぶネズミ講を企てる大尉。「詐欺じゃねーか」と怒ったエリザベットが暴露しようとするものの、これに大尉が「彼女と結婚することにしました」と発表して対抗。すると今度はエリザベットが……といった具合になかなかの好敵手ぶりを披露する二人。エリザベットは分け前を要求することで詐欺を容認していたものの、終劇前にその破綻が示唆されている。その意味においては、再び戦争に駆り出されたのをいいことにいち早く逃亡を決めた大尉の方が一枚上手だったか。やはりダメ人間としての年季の入り方が違う。

内容は差し控えられているものの、エロ小説の如き手紙を大尉に返信していたポリーヌ。彼女が夫ニコラに退屈し、大尉を誘惑するシーンが笑えた。彼女は女たらしと言われる大尉がドン引きする性癖の持ち主なのだが、これまでよく夫に隠し通したまま二児をもうけたものだと思う。なお、ポリーヌの過激な手紙の内容が露見し、ニコラが大尉に決闘を挑むのだが、彼が意外にも銃の名手である展開が笑えた。