オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『アトラクション 侵略』

вторжение(Invasion), 133min

監督:フョードル・ボンダルチュク 出演:イリーナ・スタルシェンバウム、ライナル・ムハメトフ

★★★

概要

宇宙人、再び。

短評

『アトラクション 制圧』の続編。「制圧」と「侵略」とではどちらかが先なのか分かりづらいが、本作の冒頭に“前作の復習”があるのでもし間違っても安心である。本作からソニー・ピクチャーズが資本参加したらしく、予算のペース配分を誤ってクライマックスに近付くほどつまらなくなるということはなかった。ただし、ロシア産CGの見本市としての魅力が向上している一方で、「世界の中心は、わ・た・し♪」なストーリーの骨格には何の変化もなく、話は普通につまらなかった。終盤の“水責め”の描写が凄いので一応は満足できたが、前半は観るのを止めたくなるくらいにつまらない。

あらすじ

宇宙船がモスクワに墜落してから三年。ロシア軍は密かに宇宙人の技術分析を進めており、彼らと接触したユリア(イリーナ・スタルシェンバウム)もまた研究対象となっていた。24時間監視付きの生活に嫌気の差したユリアが酒を煽っていると、なんと姿を消したはずのヘイコンが出現。ヘイコンはユリアを連れ去り、再会を喜ぶ二人は情熱的に交わるが、技術流出を防がんとせん宇宙人によるモスクワ侵略が彼らが待ち受けていた。

感想

宇宙船がワープに耐えられないので地球に戻って潜伏生活を送っていたヘイコン。「ちゃんと働いてるよ」と無職を見下す地球的感覚も身につけている。ロシア軍がユリアを研究しすぎるとマズいとのことで彼女を誘拐し、ユリアも「私はヘイコンと二人で生きていくわ」と父に連絡。これでめでたしめでたし……となるわけがなく、父への電話から居場所を探知されて軍が送り込まれる。最初はヘイコンがいなくてメソメソし、次に再会してイチャイチャし、そして軍に追われて愛の逃避行。これは強烈にどうでもいい。

技術の流出をヘイコン以上に懸念する宇宙人AI“ラー”。これがロシアのデジタル機器を全てハックし、軍に偽指令を与えてユリアの命を狙わせたり、「ユリアは爆破テロ犯」というフェイクニュースがバラ撒かれて一般市民から狙われたりする。なんとも遠回りで非効率な方法を選ぶAIである。『デューン』に出てきた昆虫型殺人デバイスみたいなのを使って一発で終わらせられないのか。軍に追われ、宇宙人も追われ、「私は人とは違うの」と民草を見下す特別なユリア様の逃避行は続く。寝取られ男のチョーマも登場して彼女を救ってくれるし、どこまでもスペシャルな主人公様である。

フェイクニュース作戦でも思ったように効果が上がらず、宇宙人によるユリア殺害計画は最終局面へ突入。モスクワを“水のドーム”が覆い、内部が水没していく。これも随分と遠回りで非効率な方法ではあるが、最終的にはユリアの抹殺が可能ではあるだろう。展開はともかく、このシーンのCG描写は凄いので、「導入部がいいだけの竜頭蛇尾」という前作の愚を繰り返すことは回避できていた。単純な予算の多寡だけでなく、話の構成が大事なのである。

水没していくモスクワを目の当たりにし、「狙いは私でしょ!」「私を殺せば終わるなら殺しなさい!」と宣言するユリア。その言葉が本当ならば自ら命を絶てばよいだけなので、「殺しなさい!(チラッチラッ)」と「人類のために犠牲なる覚悟はある(あるとは言ってない)」アピールだけはしておきたい感が隠しきれていない。また、ユリアが死んだ時点で攻撃終了となる程度に彼女の状態をラーが把握できているのなら、やはりこんな大規模攻撃を仕掛ける必要は全くなかったということになるだろう。地球への技術流出が宇宙の平和を脅かすと懸念しなければならない程に科学的には進歩しているらしいが、扱う側のオツムのレベルは地球人以下である。

「全宇宙よりもユリアだ!」と頭をジョニーに支配されて地球人レベルに成り下がったヘイコンの活躍もあり、見事に宇宙船を撃墜して地球は救われる。しかし、よく考えてみれば、ユリア一人分の技術流出を阻止するためだけにこれだけの大規模侵攻が必要だと考えるような宇宙人なのだから、宇宙船一機を奪われたとなれば、それこそ全人類を滅ぼすレベルの全面攻撃に打って出ると考えるのが自然ではないだろうか。映画の冒頭で「愛する人がいないなら宇宙など価値はない」というホーキング博士の言葉を引用していたが、それはユリアとヘイコンだけの都合であって、大人しく犠牲になってもらっていた方が人類のためというものである。大変に迷惑なので、死ぬか、二人で宇宙に行くかしてもらえないだろうか。

この結末を踏まえれば、“最終決戦”を描く続編が製作されて然るべきという気がするのだが、もし作られたとしてもユリアを中心に世界が動くという物語の構造は変わらないのだろう。

アトラクション 侵略(日本語字幕版)

アトラクション 侵略(日本語字幕版)

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