オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『アトラクション 制圧』

Притяжение(Attraction), 117min

監督:フョードル・ボンダルチュク 出演:イリーナ・スタルシェンバウム、ライナル・ムハメトフ

★★

概要

宇宙船がモスクワに墜落する話。

短評

ロシア製の大作SF映画。かつての『ソラリス』のような思弁的SFとは異なり、近年のロシア産SF映画にありがちなハリウッドに負けじとCG技術を見せびらかすことが自己目的化している点は、阿呆な三十郎氏にとって親切でよいと言えなくもない。しかし、宇宙船の墜落やメカメカしいビジュアルの宇宙人出現といった導入部こそ魅力的だったものの、その後は「え、もう予算なくなったの?」とガッカリさせられるような描写ばかりが続き、宇宙人の正体が判明してからは本当にどうでもよくなった。これでは続編を観ようかすら迷うところだが、邦題に「侵略」とあるので、次作こそは本格的な戦いが待っているものと信じたい。

あらすじ

モスクワ上空に隕石雨が降り注いだ日、隕石だけではなく巨大な宇宙船までもが降ってくる。宇宙船はそのままモスクワ市内へと墜落し、出てきた宇宙人と接触したレベデフ大佐は「危害を加えなければ大丈夫っぽい」と判断。モスクワでは民間人と宇宙人との接触を阻むべく戒厳令が敷かれるものの、大佐の娘であり、墜落時に親友スヴェタ(ダリヤ・ルデノク)を亡くしたユリア(イリーナ・スタルシェンバウム)が(親友をほったらかしてセックスしていたくせに)「このまま黙ってられるか!」と蜂起。彼女は恋人チョーマや彼の友人たちと軍の監視を潜り抜けて禁止エリアへと侵入する。

感想

禁止エリアでエイリアンと接触したユリア。エイリアンのメカメカしいデザインは実は“スーツ”であり、中に“本体”が入っていることが明らかとなる。そして、その本体というのが、“地球人と同じ外見の生き物”なのである。その上、へイコンと名乗る宇宙人はイケメンであり、即座にロシア語を理解して話せるようになる。これは誰だって察する。主人公のキャラクターが女で、敵かと思われた宇宙人が(イケメンの)男。このロミジュリ的な構図から導かれるものは一つしかない。彼らは当然のように恋に落ちる。ヘイコンは「我々は不老不死だから感情がないのです」と語るが、そんな事情は「テンプレ」という圧倒的力を前にしては全くの無力である。

宇宙人の側には侵略の意図はなく、地球を観察していたら隕石がぶつかってステルス機能が失われて墜落しただけらしい。それでも「宇宙人は本当に危険ではないのか」という緊張感があって然るべきなのだが、ヘイコンが全くの無害であるためにそれもない。そもそもすぐにロシア語を理解できる能力があるのなら、軍部と最低限のコミュニケーションを取ればいいのに。なお、宇宙人は「未開人に接触したら大変になるから隠れてたんだけどね」と語っていたが、隕石の衝突すら予測できない連中に未開人扱いされるのは納得いかない。偉そうにしやがって。

これでは本当に冒頭の墜落シーンだけでCG技術を見せびらかす場がなくなってしまうため、一応は終盤に一波乱用意されている。ユリアとヘイコンの浮気を知ったチョーマが「宇宙人許すまじ!」と墜落時に亡くなった人々の遺族を率いてレジスタンス化し、ロシア人らしく“バット”を手に取って宇宙人へと挑む。何もないよりはマシだったかと思うが、「対宇宙人戦争」としてはスケール感に乏しいのは事実である。また、遺族を率いることで「人類vs宇宙人」を演出してはいるものの、実際には寝取られ男が間男に復讐しようとしているだけのショボい話である。なんだか女性主人公が覚醒して戦うことすらないヤングアダルト小説の映画化作品的などうでもよさだった。これだけ主人公側が猪突猛進の脳筋集団ならば、むしろヘイコンを拉致したことで全面戦争を招いてしまう展開の方が楽しかったのではないか。予算が足りないのだろうけれど。

ロシアンCGの技術力以外に見所がもう一つ。宇宙人の用いる素材には水を操る能力があり、ユリアはそのことに“シャワー中”に気付く。この時、湯気で曇ったガラスの向こう側にあるはずのそれが見えそうで見えず、でも一瞬だけ見えたような気もして、男性観客の半分くらいは水の描写に気付かないかもしれない。水滴で曇りが取れた隙間からほんの一瞬だけ見えたような気がするし、見えたことにしておいた方が幸せな気もする。再生と停止を繰り返すと色の違う部分があるような気がするのだが、それであるという確信は持てない。

アトラクション 制圧(字幕版)

アトラクション 制圧(字幕版)

  • イリーナ・ストラシェンバウム
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