オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『エルフ 〜サンタの国からやってきた〜』

Elf, 96min

監督:ジョン・ファヴロー 出演:ウィル・フェレルジェームズ・カーン

★★★

概要

エルフに育てられた人間のおっさん。

短評

シーズンにはまだ早いがクリスマス映画。本作はファミリー映画ということで、ウィル・フェレル主演作としては下品さを抑えた平和な仕上がりとなっている。しかし、それで彼の持ち味が完全に損なわれてしまうというわけではなく、“心は子供で身体はおっさん”という痛々しいキャラクターは完全にハマり役だった。暗めの髪色のイメージが強いズーイー・デシャネルがブロンドで出演していたが、美人は髪の色を問わず美人だった。

あらすじ

孤児院へ配達中のサンタクロースの袋に忍び込んだ一人の赤ん坊。サンタクロースは彼に気付かぬまま北極にあるサンタ工房へと帰ってしまい、バディと名付けられた赤ん坊は工房で働くエルフに育てられることになる。時は流れ、エルフとして育てられたバディ(ウィル・フェレル)だったが、周囲よりも明らかに身体が大きく、また工房での仕事にも向いていない彼は、遂に自分がエルフではないという事実を知ってしまう。バディの養父は彼の実父ウォルター(ジェームズ・カーン)がニューヨークにいることを明かし、バディは父に会うべく旅に出るのだった。

感想

流氷に乗って北極を旅立ち、遂にニューヨークに辿り着いたバディ。徒歩のみでニューヨークに到着するまでにどれくらいの時間が掛かるのかといった疑問が浮かびはするものの、ファンタジーなのでスルーである。大都会のド真ん中で下半身がもっこりタイツなエルフ衣装を着たおっさんがハシャぐ図というのは、なんとも気味が悪くて素敵なのだが、クリスマスシーズンのアメリカならばそこまで悪目立ちしなかったりするのだろうか。実際、バディはデパートの玩具売場のマネージャーから「サボってないで働け」と従業員だと勘違いされたり(従業員くらい把握しろ)、ウォルターから「クリスマスの歌のサービスの人」だと思われたりしている。エルフは意外とポピュラーな存在らしい。日本で「エルフ」と言うと『LOTR』のレゴラス的な高貴な種族が想像されるが、本作では「小人」のイメージだった。

おっさんバディから「パパ!僕だよ!」と言われ、「金が欲しいのか?」と訝るウォルター。しかし、バディが母の名前を出したことから「え、もしかして……」となる。ここですぐに“DNA検査”が登場して実子だと確定させる辺りがアメリカ的だと思ったのだが、本人も知らなかった隠し子の存在が発覚した後、ウォルターの妻エミリーが「あら、素敵じゃない」と受け入れてしまう寛容さが更にアメリカ的だ感じられた。なかなかできることではないと思う。しかも隠し子はもっこりエルフコスのキモいおっさんだし。

その後の展開は、とりあえずウォルター宅に身を置くことになったバディが家や仕事を滅茶苦茶にしたことから追い出されるも、最後はサンタパワーと家族の絆で大団円というお決まりのもの。デパートの仕事で出会った美女ジョビ(ズーイー・デシャネル)とくっつくところまでお約束どおりである。したがって、バディが“家や仕事を滅茶苦茶”にする描写が見所となるかと思うのだが、“悪意のない阿呆”の演技においてウィル・フェレルは他の追随を許さぬ圧倒的能力を有している。彼の才能なくしては、本作は観ている方が恥ずかしくなるようなZ級映画にすらなりかねない内容だっただろうが、それでも面白いのである。

エルフは甘いものしか食べないらしい。パスタにメープルシロップをドバドバとかけてエミリーに眉をひそめさせるのだが、アメリカ人もまた日本人の感覚からすれば信じられないくらい何にでもシロップをかけがちなイメージがある。また、マックグリドルのように醤油と味醂の組み合わせとは異なる「甘辛」が意外にいけることを踏まえると、バディの手料理もいける人にはいけるのかもしれない。試す勇気はないけれど。