オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『Mr.&Ms.スティーラー』

Lying and Stealing, 99min

監督:マット・アセルトン 出演:テオ・ジェームズ、エミリー・ラタコウスキー

★★★

概要

美男美女の美術品泥棒。

短評

エミリー・ラタコウスキー出演最新作。「泥棒」と「美男美女」の組み合わせとなれば、誰だって“騙し合い”を想像するかと思うが、全く捻りのない展開が逆に意外だった。予定調和的どんでん返しが待っているのだろうと思ったら、それすらないという正直な一作である。主演の二人が共闘を始めてからの“本編”が失速しているという欠点はあったものの、序盤の盗みの手際は美しく、それなりには楽しめた。エミリー・ラタコウスキーが出ていなければそもそも観なかったかと思うが、彼女の美貌ありきの評価であることは認める。

あらすじ

父の残した借金を返すために美術品専門の泥棒をしているアイヴァン(テオ・ジェームズ)だったが、そろそろこの世界から足を洗いたいと考えていた。そんな折、“仕事場”のパーティー会場でエリスと名乗る女優(エミリー・ラタコウスキー)と立て続けに出会う。後日、エリスがアイヴァンの家を訪ねてくるのだが、果たして、彼女の目的とは……。

感想

邦題のパクリ元である『Mr.&Mrs. スミス』のように互いの素性を知らぬ泥棒二人のカップルが仕事上で競合して……という話ではない。二人がパーティーで出会って物語スタートである。エリスがアイヴァンの仕事場に二連続で出現した時点で彼女も同業者なのだと思ったし、二人の泥棒が競い合うというのもよくある話だろう。また、アイヴァンがエリスを仲間に迎え入れる理由が“美貌”以外にないため、最後は「全てエリスの手のひらの上で転がされていました」というオチが待っているものなのだと完全に思い込んで映画を観ていた。

しかし、エリスが「プロデューサーの枕拒否して干された。悔しかったからネックレス盗んだけど、バレて借金返してる」と告白。これもどうせアイヴァンを騙すための嘘なのだろうと確信していたのだが、ところがどっこい本当なのである。最後の最後のタネ明かしがないのである。かくして二人(+1)の共同作戦が幕を上げるのだが、ちんけな詐欺稼業に従事していたエリスに出来ることなど色仕掛けの他には何もなく、アイヴァンが一人で美術品を盗むシークエンスの方がよほど楽しいという残念な展開だった。ある意味では騙されたので驚いたわけだが、犯罪映画を見慣れたことによる先入観がない限りそうはなるまい。そちらの驚きばかりが先行し、本来の意図された“逆転劇”は全くどうでもよかった。

本作は2019年の作品なのだが、エミリー・ラタコウスキーにそこから映画の仕事がなかったのは、結婚・妊娠・出産と色々重なったからなのだろうか(テレビ映画がポスプロ中らしい)。アイヴァンの雇い主であるディミトリが娼婦を呼ぶためにおっぱいは見られるものの、ラタコウスキーは“脱いでも見せない”という残念な描写に留まっている。背中と下着のみである。彼女はいつから見せなくなってしまったのだろう。あんなパーフェクトボディの持ち主なのに。本作では“枕を拒否して干された女優”という役柄を演じているが、特に演技力があるわけでもないのだから、見せないと本当に仕事がなくなるのではないか。もっと見せびらかしてくれよ!

金属製のアート作品を“風船”と入れ替えて盗んだり、キャンバスから外した絵画をタキシードのジャケットに隠したりと、アイヴァンによる盗みの描写は面白かった。彼がベトナム戦争の伝説的兵士から“ヒトラーの絵画”を盗む展開は、それだけで『ドント・ブリーズ』的な話が成立しそうだったものの、あっさり成功してしまって残念。

Mr.&Ms.スティーラー(字幕版)