オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『ファインド・ミー』

Come and Find Me, 111min

監督:ザック・ウェドン 出演:アーロン・ポールアナベル・ウォーリス

★★★

概要

姿を消した恋人の正体。

短評

恋人が失踪したので行方を追うと……というサスペンス映画。普通に楽しめはしたものの、本来は90分の枠で作るべき話を無理やり110分まで引き伸ばした感は否めなかった。オチを踏まえれば、きっとドラマやロマンスの部分に重点を置きたかったのではないかと察せられるが、そこが上手く描かれていたとは言い難いし、むしろ話が破綻するような気さえしてくる。“隠されし真実”を掘り起こすとろくなことにならない。「去る者は追わず」な男でありたいものである。

あらすじ

ある朝、デヴィッドが目を覚ますと、恋人クレア(アナベル・ウォーリス)が姿を消していた。行き先の手掛かりもなく、警察も相手にしてくれず、そのまま迷宮入りかと思われたが、クレアの友人だと名乗るバックが家を荒らして何かを探してる場面に遭遇し、彼女が何か怖ろしいことに巻き込まれたのではないかと心配になる。クレアの捜索を再開したデヴィッドは、庭に埋められていたフィルムを手掛かりに真相を探ろうとするのだが、そのフィルムを狙う勢力とのトラブルに巻き込まれてしまう。

感想

現在と過去の時系列が入り乱れている。外見が変わらないので分かりづらい部分もあるが、基本的には“クレアがいる方”が過去である。その過去編で明かされるのは、クレアが家族の話をするのを頑なに拒むといった内容。つまり、彼女はワケアリである。

デヴィッドが発見したフィルムには怖そうな男が写っていて、色々やっている内にクレアが政府機関で働くスパイのような人物であると判明。彼女が残したフィルムを持っていたためにデヴィッドの身も危険に晒されるという展開である。この事実が明らかとなる過程はスリリングで面白かったのだが、過去編の描写が彼女のワケアリ設定以外には特に活かされておらず、テンポの悪さを感じさせた。

スリラーに緩急をつける意図が感じられるわけでもないのに、なぜテンポを落としてまで過去編を挿入したかと言えば、きっとデヴィッドにクレア捜索を諦めない動機を、最後に彼女が助けに来てくれる展開に説得力を付与するためなのだろう。恐らくは“クレアの正体”はマクガフィンでしかなく、二人のラブストーリーがメインなのである。

ただし、その視点から本作を振り返ると、根本的な疑問が湧いてくる。クレアは以前にもデヴィッドとは別の男の前から同じく突然姿を消しており、諦めなかったデヴィッドの想いが実ったとは言え、クレアからデヴィッドへの感情はどうなのかという問題である。今回は上司の不正を知ったことで逃げざるを得なかったようだが、クレアは名前を変えては別人としての生活を繰り返しているようなスパイなのだから、デヴィッドだって所詮は“使い捨ての竿役”でしかなかったのではないか。全然ハッピーエンドではないのではないか。

デヴィッドの方にせよ、どうしてもクレアを諦めきれないというよりは、“怪しげな証拠”が出てくれば調べざるを得ないように思える。そのせいで危険な目に遭えば撤退を考えるのが合理的な人間というものだが、疑念が確信に変わってしまえばそうもいかない。映画の最後の状況であれば二人は一緒に逃亡生活を送るより他に選択肢がないわけだが、デヴィッドにとってはクレアがスパイだと知った上で一緒にいたいのかについて再考の余地があるだろうし、クレアにとってはデヴィッドが足手まといとなりかなねない。これでは誰も幸せにならない。とりあえず再会を果たした二人だったが、遠からずその関係は破綻するのではないかと思う。その時、見捨てられたデヴィッドはどうなるのだろう。