オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『ラバーボーイ』

Girl House, 101min

監督:トレバー・マシューズ 出演:アリ・コブリン、ジョージ・キャロル

★★★

概要

恐怖のエロサイト視聴者。

短評

チャットレディがガチ恋勢の襲撃を受けるホラー映画。色々とツッコミどころはあるし、どうしても納得できない点も一つだけあるが、楽しい一作だった。友人(エリン・アゴスティーノ)から「他に稼ぐ方法あるでしょ」と正論を言われても「いいの!やるの!」と突き進む主人公はエロカワイイし、そんな彼女の“アイコラ”を作って自室に飾る殺人鬼はキモいし、展開には意外性がなくとも観客を引きつけるだけの魅力(≒エロ)がある。終盤の襲撃シーンの演出にも遊びが感じられてよかった。

あらすじ

父を亡くし、学費を稼ぐためにポルノサイト“ガールハウス”で働くことを決めたカイリー(アリ・コブリン)。ガールハウスはキャストを寮に集めてエロ以外の生活の様子も配信することで人気を集めており、カイリーはたちまち人気嬢へと成長する。視聴者は世界中にいたが、その中に“ラバーボーイ(イケメン君)”というハンドルネームの常連が一人。キモ・デブ・ハゲの三拍子揃ったラバーボーイがカイリーにガチ恋し……。

感想

カイリーとのプライベート配信中に「素敵な人ね」とおだてられ、「これでもか?」とキモい自撮りを送りつけるラバーボーイ。“21世紀のヒュー・ヘフナー”を自称する経営者ゲイリー(“バイ設定”に好色の感がある)は「24時間体勢でセキュリティ・チームが監視してる」と誇っていたが、この件に対応する様子は全く見られなかった。この自撮り写真が寮の掲示板に張り出されているのをラバーボーイが見てしまい、彼が「これはよくないぞ」と寮に襲撃にやって来るという話である。

自撮り送信事件に対応してくれなかったもお粗末だが、“秘密の場所”であるはずの寮の場所がコンピューターに詳しいラバーボーイばかりか、カイリーに現実世界で恋するベンの友人タグボートにも「プロバイダーを調べたら周りに一軒しか家がなかった」とバレるガバガバ具合。「身バレしたらすぐに視聴者をブロックするから大丈夫だよ」とも言っていたが、カイリーが授業に行くとニヤニヤしている男がいるし、バレないはずがない。なお、ベンはカイリーの高校の同級生なのだが、彼もまたガールハウスで彼女を発見して接近している。カイリーは「娼婦と違ってPCが相手」と言っていたが、この世界に「安心安全」は存在しない。

映画冒頭、「イケメン君、あそこを見せてくれたら私のも見せてあげるわよ」と言われて息子を披露し、女の子二人から「ちっさwww」と笑われるというご褒美的イジメを受けるデブ少年。彼が後のラバーボーイである。彼が主犯格(キャムレン・ビコンドヴァ)の脚を折って橋から突き落とすという復讐を遂げたのと同じく、自分のブサイクな顔を笑い者にしたチャットレディたちを皆殺しにしようとする。「オタクを怒らせると怖いぞ」のガチバージョンである。パンチラを見られて「セクハラよ」と文句を言った女(アレクシス・ケンドラ)も一歩間違えば死んでいたのだ。女性諸賢、弱者男性の暴走にはくれぐれもきをつけられたし。

全く頼りにならないウェブセキュリティと同じく、アメフトのLBだった警備員スティーブもラバーボーイに易易と突破される。持ち前のPCスキルで全てのカメラをオンラインに切り替え、殺戮ショーの開始である。なお、ラバーボーイ本人は身バレを嫌ったのか、“魔法の数字”で作品名がやり取りされる日本の配信サイトの竿役のようにマスクを被っての登場となる。

薬中で追放されていたという設定が何も活かされなかったアナ(スレイカ・シルバー)。人気No.1嬢のデヴォン(アリソン・バス)。喘ぎ声のうるさいヘザー(Elysia Rotaru)と彼女に「ちょっとうるさいんですけど」と文句を言いにいったジャネット(Chasty Ballesteros)。そして、サウナに閉じ込めれ、窓を割って脱出するも飛び込んだプールから上がったら……な赤毛レズのミア(ニコル・フォックス)。サウナを遠隔ロックできるという目的不明な上に危険な設定があったりはするものの、ヘザーがディルドでイラマチオされて窒息死したりしていて、楽しい殺戮ショーだった。なお、デヴォンは「お前は外見だけだ」と顔を切られて「これじゃ生きていけない」と自殺するのだが、美人にも性格の悪い人はいるものの、因果関係的には不細工の方が性格が歪みやすい。

エロサイトを扱った映画なので、当然におっぱいがいっぱいである。しかし、一体全体どういうわけだが肝心のカイリーが見せないのである。何故だ。脱ぐシーンでは“手ブラ”をし、それを外すショットは常に後ろから。どうしてだ。他の映画(『アメリカン・パイパイパイ! 完結編 俺たちの同騒会』)ではバッチリ見せているのに。同僚も「いいおっぱいね」と認めるそれを堂々披露してくれればよかったではないか。解せない。

自分が覗き見的エロサイトを通じてカイリーを発見したのに、『裏窓』のリバイバル上映に彼女を誘うという倒錯した性癖の持ち主ベン。彼はルームメイトのタグボートから「見てみろ、めっちゃエロい子がいる」と言われて「カイリーじゃん……」となるのだが、エロ配信サイトなんて結構な料金が掛かるだろうに。そんなポルノ中毒野郎が「自分を磨いて彼女を捕まえろ」なんてどの口で言うのか。ちなみに、“世界中”の視聴者の中には我らが日本も堂々と仲間入りしており、クリーニング屋の親父がオフィスでポルノ鑑賞している。Hentaiの国の面目躍如であった。

映画の冒頭で「暴力男は皆ポルノが好き」というテッド・バンディの言葉が引用されているものの、これは「殺人犯は皆水を飲みます」と同じ話だと思う。