オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『モースト・デンジャラス・ゲーム』

Most Dangerous Game, 127min

監督:フィル・エイブラハム 出演:リアム・ヘムズワースクリストフ・ヴァルツ

★★★

概要

人間狩り大会 in デトロイト

短評

人間狩りもの。プライムビデオでは一本の映画として配信されているが、元々は1話当たり7~10分程度のミニシリーズを再編集したものらしい。なんでもモバイル端末での視聴を前提として作られた作品なのだとか。言われてみれば、確かにハンターに自滅の傾向があってアクションシーンが盛り上がり切らなかったり、同じような展開の繰り返しに感じられる部分はあったかと思う。ただし、“郊外のどこか”で開催されるケースの多い人間狩りをデトロイト市内で行うという設定は楽しく、また、誰がハンターなのか分からないという状況もスリリングだった。

あらすじ

激しい頭痛に悩まされていたダッジリアム・ヘムズワース)は、ある日、路上で倒れ込んでしまう。彼が搬送先の病院で下された診察は、なんと余命僅かの脳腫瘍だった。ビル建設の事業が暗礁に乗り上げて無保険のダッジは、看護師から紹介された“ティロ・ファンド”という団体に助けを求める。しかし、その責任者であるマイルズ(クリストフ・ヴァルツ)が切り出した提案とは、ダッジが莫大な賞金を懸けた人間狩りの獲物になるというものだった。

感想

「どうせ死ぬんだから最後にひと稼ぎしようぜ」というのがマイルズの提案である。ダッジには妻ヴァレリーサラ・ガドン)と彼女のお腹の中に息子がいるため、「借金だけ残して死ぬのはイヤでしょ」と煽られて賞金総額2450万ドルのゲームに参加させられる。ゲームのルールは、24時間逃げ切れば獲物の勝利というもの。この間、1時間毎に報酬が振り込まれ、その度に専用のスマホから15秒間ハンターへ位置情報が送信される。獲物は誰かにゲームのことを話してはならない。デトロイト市内から出てはいけない。財布を回収されて現金を使用してはならない。なお、獲物、ハンター共に銃の使用は禁止である。

自分を殺そうとする追手から主人公が逃げるという状況は、アクションスリラーのテンプレ中のテンプレである。群衆の中の誰が敵なのか分からない。逆に群衆に隠れて身を隠してみる。こうした描写はもの凄く“普通”なはずなのだが、「人間狩り」という設定が一つ付与されるだけで、なんだか新鮮に感じられる不思議である。“都市部での人間狩り”という設定それだけで、単なるアクションスリラー映画ともホラー的な人間狩り映画とも異なる印象を与えられるらしい。発想の勝利である。

人間狩りというゲームは山奥や人里離れた“専用会場”で行われるケースがほとんどなのだが、都市部が舞台であれば、誰がどこで襲いかかってくるか分からないという不安が倍増である。したがって、序盤は非常にスリリングなのだが、五人のハンターが姿を見せてしまってからは少々失速した感は否めなかった。ハンターの中にはクルーズ船の乗員に化けている者がいるのだが、ダッジが船に乗るのかなんて分からないわけで、それは流石に準備がよすぎるだろう。青スーツ男以外は参加資格を得られる超富裕層に見えないという問題もある。敵の意外性という意味では、青スーツ男と一緒にエレベーターに乗り合わせた赤ん坊連れ女が襲いかかってきた方が楽しかったとは思う。

五人のハンターにはそれぞれ歴代アメリカ大統領の偽名が与えられている。ソシオパス顔のイギリス人はニクソン、レッドネック顔はレーガン、牧師に化けた黒人はカーター、カンフー使いのアジア女はケネディナターシャ・リュー・ボルディッツォ)。白人男性には共和党を、有色人種や女性には民主党をという遊びである。最後に登場する五人目LBJ民主党なのに白人男性だったので、きっとゲイという裏設定があるに違いない。ちなみに、都市部での開催に伴い、非常に重要となるのが“掃除人”の存在なのだが、彼には“コネル”という名前が与えられている。『ゾディアック』でお馴染みの『もっと危険なゲーム(The Most Dangerous Game)』の著者リチャード・コネルからの引用だろう。ヴァルツの演じたマイルズ・セラーズにも元ネタがあるのだろうか。

実はダッジはガンなどではなく、ローマ時代以来2000年に渡って連綿と続いてきたゲームのために全てを仕組まれていたと判明。それがバレた時、マイルズはダッジの親友ルーガーが協力者として薬を盛っていたと言うのだが、最終的にルーガーはダッジの味方で、「疑ってごめん」と謝られていた。となると、ダッジの頭痛や失神を招いた真犯人は誰だったのだろう。何か見落としたか。