オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『ドール・メーカー』

Rock Paper Dead, 84min

監督:トム・ホランド 出演:ルーク・マクファーレン、ジェニファー・タイタス

★★

概要

治療を終えて退院したシリアルキラーの話。

短評

「人形作り殺人鬼」というよりも「ジャンケン殺人鬼」な内容だったB級ホラー映画。B級でないところを探すのが難しいくらいの全てがB級な作品であり、“気楽さ”という点ではちょうどよかったものの、だからと言って面白いわけではなかった。血のりの描写こそ気合が入っているが、猟奇的なシーンは少ないし、何と言っても物語の“軸”となる展開がつまらない。まあ、許せるレベルのつまらなさではあったと思う。

あらすじ

女性を拉致しては人形メイクを施して殺害していたピーター。アンジェラ(Courtlyn Cannan)殺害の現場をドイル刑事(マイケル・マドセン)に取り押さえられてしまったものの、幻の双子の弟アーロンの存在を主張したことで心神喪失認定される。それから数年後、バウアー医師の治療を受けて症状の改善したピーターは退院して帰宅するのだが、彼の監視を続けるドイル元刑事の他、モニカ(ジェニファー・タイタス)と名乗る記者が本を書きたいと言って接近してくる。その上、ピーターには未だに“声”が聞こえていた。

感想

てっきり生身の女性を人形に仕立てるシリアルキラーの犯行を描くタイプの映画なのかと思ったら、冒頭でいきなり逮捕である(刑事があと一分早く突入していればアンジェラの命が助かったのに)。「治った」と言って退院したピーターが“声”を聞く描写があるため、彼がその誘惑に抗えなくなる展開かと思いきや、特にそういうこともない。これは意外である。

モニカの正体は被害者アンジェラの妹であり、彼女は復讐のためにピーターに接近していた。「まずは信頼を得るのよ」と語るモニカだが、引っ越しの挨拶で差し入れたカップケーキに毒でも入れておけばその時点で目標達成だったろうし、他にも殺すチャンスなんていくらでもあるのに記者役を演じ続けるのが不可解である。なんだか話を無理やり引き伸ばされている感じがする。

一方のピーター。「彼女は幻じゃない。理想の人だ」とモニカに一目惚れ。実は彼はショタホモおじさんに性的虐待を受けていた過去があり(「人形が好きなんて女みたいだな。俺が女にしてやろう」と)、そのトラウマが原因でシリアルキラーと化していた(ということになっている)。一方のモニカもまた姉を失ってから里親の息子にレイプされたりと大変な経験をしていて、ピーターは彼女から“同じ匂い”がするのは嗅ぎ取ったわけである。その通り、復讐を果たさんとせん彼女の姿は立派な殺人鬼の貫禄であった。ただし、この設定は面白かったと思うものの、姉の殺害当時「14才」だったと語るモニカが、それから“数年後”ではなく“数十年後”にしか見えないという違和感は凄かった。

「アーロンは自分の生み出した幻だ」と自分に言い聞かせるピーター。この手の描写がある場合、十中八九の確立でアーロンは実在する。本作はその存在を“どんでん返し”としてオチに持ってきているものの、伏線はフェアだった。モニカに惚れているはずのピーター(=アーロン)が巨乳のミニスカJKゾーイ(アンナ・マーガレット)のパンチラ(白)に「うひょおお」となっていたりして、“二重人格”かのような描かれ方がしている。本来は“再発”と受け取るべきなのだろうが、逮捕前に二重人格を匂わせる描写がないため、そこまで大きくミスリードすることなく正体を明かしていたことになるのか。

「人形」の要素は、母の形見の人形を見ていたらおじさんに“女の子”にされてしまったことと、殺害の際の人形メイク。邦題的には分かりやすいと思ったのかもしれないが、あまり目立ってはいなかった。原題『Rock Paper Dead』はジャンケンの英語訳である「Rock paper scissors」をもじったもの。ショタホモおじさんが「ジャンケンに勝ったら負けた方に何してもいいんだよ」と言って常に反則勝ちしていため、ピーターにはそのトラウマが強く植え付けられている。そのトラウマの発露として、“緊張すると手をグーチョキパーしてしまう”という描写には笑うしかなかった。

EDロール後にマイケル・マドセンら出演者たちが法廷のセットで踊る謎の映像が流れる。なんだったんだ、あれ……。ある意味では本作最大の見所かもしれない。

ドールメーカー(字幕版)

ドールメーカー(字幕版)

  • ルーク・マクファーレン
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