オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『ホステル ネクスト・レベル』

An Affair to Die For, 82min

監督:ヴィクトル・ガルシア 出演:クレア・フォーラニ、ジェイク・アベル

★★

概要

女の夫に浮気がバレたW不倫カップル。

短評

この邦題をつけた理由が皆目見当のつかない清々しいまでの邦題詐欺作品。スペイン映画らしいのだがアメリカ人がアメリカ国内で英語を話しているし、トーチャーポルノ的な要素は一切ないし、おまけに「ホステル」ではなく「ホテル」が舞台の話である(担当者は区別がつかないのか)。「ネクスト・レベル」は何でもいいから適当に言葉を続けただけとして、『ホステル』要素は一体どこ?邦題詐欺についてはともかく、映画の内容は冒頭の状況設定こそ興味を引くものだったが、そこに続く展開は普通に退屈だった。

あらすじ

夫には急な仕事だと言って週末不倫を楽しむべくホテルにやって来たホリー(クレア・フォーラニ)。浮気相手のエベレットが部屋に残した手紙の指示通り、目隠しと手錠をつけてベッドで待機する。しかし、部屋に現れて彼女との暴力的なセックスを楽しんだのは、なんとエベレットではなく夫ラッセルだった。ラッセルは妻にそうとは告げぬままに部屋を去り、拘束していたエベレットにある指示を与える。そして、その後ホリーに電話し、エベレットに対するものとは相反する指示を与えるのだった。

感想

ラッセルからエベレットへの指示内容は、「好きに妻と楽しんでいいから明日の朝までホリーと一緒に部屋にいろ。ホリーにはバレないようにしろ」というもの。一方のホリーへの指示内容は、「浮気は知ってる。エベレットは危険人物だから逃げろ」というもの。妻子を人質に取られてホリーに逃げられては困るエベレットと、エベレットが怖い奴だと信じ込まされて逃げたいホリーという構図である。

この構図が成立したところで二つの要素が物語を牽引することとなる。一つ目は、ラッセルの目的という謎要素。浮気妻と間男を懲らしめたいことは分かるが、彼が具体的にどうしたいのかという目的がミステリーである。二つ目は、ホリーとエベレットの心理戦。互いに異なる情報を与えられ、それぞれ逆の行動をとるように促されている。黒幕の目的が謎に包まれていることもあり、その展開は予想がつかない。

邦題詐欺にも限度があるというレベルで『ホステル』と無関係な割には面白い導入部だったのだが、その後は残念ながら失速。ホリーとエベレットの心理スリラーは何の見所もないままダラダラと展開し、「もういいから殺し合えよ」としか思えない退屈さ。途中で黒幕だったはずのラッセルが死ぬというサプライズがあって「え、どういうこと?」と驚かされはするものの、不倫以外に何か“匂わせる”ような要素もないため、“真の黒幕”は当然その人ということになって終劇である。このサプライズ演出で閉じかけていた目が覚めはしたものの、それまでの退屈な印象を逆転してくれるには至らなかった。ラッセルが死ぬ必然性がなさすぎる。

グロくもないし、エロくもないしのポンコツ映画ではあったものの、ホリーの性格のクソっぷりだけは笑えて好きだった。夫から「エベレットは女子大生にも手を出して行方不明になってる」と告げられれば、「私以外にも相手がいるんでしょ!」と激怒。キレるポイントはそこなのか。黒幕から「生き残るのは一人」と殺し合うように仕向けられれば、チャンスがあったのに自分を殺さず、「本当に好きだった」と語るエベレットを普通に刺し殺す。そして、最終的には全ての殺人の罪を自分が被ることになると言われ、黒幕の頭を気晴らしのためだけにカチ割る。ナイフの指紋のようなホリーに不利な証拠があるとは言え、あんな監視体勢を整えた部屋という黒幕に不利な証拠があるのだから、裁判で逆転する目は十分にあっただろうに。場合によってはエベレットの件だって情状酌量がありうる。その可能性を自ら捨て去るなんて阿呆である。

真の黒幕であったエベレットの妻リディア(メリーナ・マシューズ)曰く、「夫があなたに夢中になる理由が分かった。すべて持ってるのに満足しないからね」とのこと。権力者好きな女の思考のようだが、同じ考え方をする男もいるのだろうか。三十郎氏には「課外授業が必要?」と学生を誘ってくる年増ババアのホリーよりも若いリディアの方が魅力的に見えた。年増の時点で“全てを持っている”ようには思えない。結局のところ、エベレットは熟女好きだったのか。リディアの考え方は彼女自身の嗜好が反映されたものであり、実はエベレットはホリーと交わって目覚めてしまっただけだったりはしないか。