オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『デッド・ウィッシュ』

The Final Wish, 95min

監督:ティモシー・ウッドワード・Jr 出演:マイケル・ウェルチ、リン・シェイ

★★★

概要

願いを叶える壺。

短評

(このジャンル以外で見たことはない)リン・シェイ出演のホラー映画。「謎のアイテムで願いを叶えた引き換えに……」という展開はホラー映画のテンプレなのだが、「願いの叶う道具を手に入れたぜ!ひゃっはー!」とハッスルした奴が痛い目に遭うのではなく、意図せずしてその持ち主となってしまった主人公が“巻き込まれる”タイプの話である。特に新規性があるというわけではなかったものの、“謎”を物語の中心に据えたことでホラー映画として最低限必要な“雰囲気”は最後まで貫徹できていた。

あらすじ

優秀な成績でロースクールを卒業して司法試験を突破したものの、非アイビーリーグ出身であることから不採用が続いていた弁護士のアーロン。家賃を滞納して部屋から追い出され、ジリ貧となっていた彼に父の訃報が届き、シカゴからオレゴン州の実家へと帰ることになる。葬儀の後、骨董品を愛好していた父の遺品の中から発見した骨壷が気になって手元に置いたアーロンだったが、彼の周囲で奇妙な出来事が起こるようになる。

感想

「それは願いを叶える悪魔の壺だったのです」という話である。「犬がうるせえ!」と願えば犬が死に、「男前になりてえ……」と願えば交通事故に遭って顔面再建手術を受けてイケメン化する(なお、本人は「俺、イケメン……」とうっとりしていたが、軽い口唇口蓋裂的な傷跡が消えたというだけで見違える程に男前化はしていなかった)。

こんな便利アイテムはヤバい代物に決まっているのだが、調子に乗って願いを叶えまくるわけではないのでバカ映画感はないし、そうとは知らずに願ってしまうアーロンの“コンプレックス”も絶妙だった。所詮は地方都市のシカゴの法律事務所のくせに一丁前にアイビーリーグ卒を要求するとは贅沢である。また、アーロンがイケメン化を願うのも、想い人リサ(メリッサ・ボローナ)が元アメフト部エースのDV野郎と結婚していて、「どうしてあんな奴と……」と批難して「嫉妬乙」と返された直後なのが最高に情けなくてよい。

そうこうしている内に現実ではありえない現象が起きていたことが発覚し、「いやいや、これは流石に可怪しいぞ」と壺のことを調べると……という流れ。そこで「七つ目の願いを叶えるとヤバい」という事実が前の持ち主から伝えられるのだが、本作と同じく願いを叶える呪いのアイテムを扱った『セブン・ウィッシュ』がそうであったように、欧米では「7」という数字に何か因縁があるのだろうか。ラッキーセブンじゃないのか。

七つ目の願いがヤバいと分かっているのにアーロンが願う流れは葛藤皆無の雑さに閉口させられたのだが、それ以上にその願いが叶う際に入浴していたリサが風呂から上がると、おっぱいと股間に都合よく“泡”がついている方が気になった。グラビアアイドルのイメージビデオじゃないんだから。「こいつが死ぬのだろう」と思っている奴が死ぬだけなので怖いシーンではないものの、一応は緊迫しているはずの雰囲気の中で笑わせにきているとしか思えない。

雰囲気には引き込まれるものがあったが、デジタルノイズみたいにチカチカする悪魔の造形は普通だし、人の死に方にも目立つところはない。この全年齢対応的ホラー映画における最も怖ろしい描写は、やはりリン・シェイの怪演だろう。三十郎氏が彼女を知ったのが『インシディアス』の霊能力者役であるため、「ヤバい壺なんです。助けてください」と“相談される役”を演じそうなイメージがあるのだが、『ザ・グラッジ』でもそうだったように、メンヘラ婆の方が本業なのだろうか。これは普通に怖い。本作に壺が存在せずとも、「父が死んで帰省したら母親がメンヘラ化していた」という話で一本の映画が作れる。