オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『ライアー・ハウス』

Breathless, 91min

監督:ジェシー・バジェット 出演:ジーナ・ガーション、ケリー・ギディッシュ

★★★

概要

強盗と妻と妻の親友、他。

短評

スリル皆無のスリラー。世の中には「コメディ・スリラー」というジャンルがあるらしく、何を間違っても“breathless”な一作ではなかった。コメディなので内容はグダグダそのものだし、展開も力技に拠るところが大きいのだが、低予算会話劇の割にはそこそこ楽しかったと思う。何かあった時に備え、一家に一台は電動肉切り包丁を常備しておきたいと思った。

あらすじ

「大変なことになった」と言って親友タイニーを呼び出したローナ。タイニーがローナ宅に到着すると、そこには失神したローナの夫デイルが転がっていた。ローナ曰く、話題となっている銀行強盗の犯人がデイルで、この家の中に10万ドルが隠されているのだと。自分に黙って高飛びしようとしていた夫を拘束し、銃を突きつけて10万ドルの在り処を吐かせようとするローナだったが、銃が暴発。デイルを撃ち殺してしまう。

感想

ローナたちに課せられたミッションは、「デイルの遺体の始末」と「10万ドルの捜索」の二つ。途中、保安官(レイ・リオッタ)や薄らハゲの探偵がやって来るも、女二人がギャーギャー騒ぎながら、高校中退の知能をフル回転させて難題を乗り越え……とはならない話である。邦題が盛大にネタバレしているし、尋問中のローナに対してタイニーがとっさに「撃っちゃダメ」と言うので、彼女がデイルと浮気していることは簡単に分かる。また、パッケージが「全員、嘘つき」と盛大にネタバレしているが、実はローナの方も……という話である。

10万ドルの捜索を後回しにして、まずは遺体の始末に取り掛かる二人。失業中の技能講座で技術習得したというタイニーが電動肉切り包丁でデイルを切り分け、ミキサーに掛けたり、排水管洗浄剤で溶かしたりする。ご家庭で簡単にボディを透明にするテクニックが披露されていて楽しいのだが、結局透明にはなっていなかったので、あまり参考にはならないかもしれない。もしもの事態に備えて電動肉切り包丁があると便利そうだと思ったのだが、“目的”を考えれば、そんな便利アイテムなしで苦労させた方がよかったのではないか。

ローナはタイニーとデイルの浮気を探偵を使った調査で把握しており、二人への復讐を目的としていた。全ては彼女の掌の上で……という話だったわけだが、金の臭いを嗅ぎつけた探偵が乗り込んでくるのは想定外だったろうし、タイニーにデイルを解体させること以外はあまり考えていなかったのではないか。「ド田舎の銀行にそんな大金があるなんて」という10万ドルも、逃走の元手にはなれど残りの人生を悠々と過ごせる金額ではない。田舎では保安官の裁量が大きいのかもしれないが、三人も殺すのと引き換えに手に入れる額としては小さいように思う。

解体という目的遂行については、「あんたがやってよ!」という女二人の押し付け合いが妙にリアルで、他の嘘よりも上手く観客を騙せていた。

最後は大団円だったことになっているが、デイルの手を持ち去って退場した犬のアールくんのその後が気掛かりである。彼はあの荒野で生き抜けるのか。