オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『キャッシュトラック』

Wrath of Man, 119min

監督:ガイ・リッチー 出演:ジェイソン・ステイサムホルト・マッキャラニー

★★★

概要

警備会社に就職したハゲの秘密。

短評

世界一格好いいハゲに髪を生やして失敗に終わった『リボルバー』以来となるガイ・リッチージェイソン・ステイサムのタッグの復活作。今回はちゃんとハゲている。本作は『ブルー・レクイエム』というフランス映画のリメイクらしいのだが、“らしい”のか“らしくない”のかよく分からない不思議な一作だった。ガイ・リッチー特有の軽薄さが封印されて重厚な雰囲気の物語となっているが、構成に変化があるとは言え“ネタバラシ方式”は健在。一方のステイサムも、近年のイメージ通りに“無双”するのかと思いきや、意外に脆い姿も披露する。いくつかの難点はあったかと思うが、常に厳しい表情を崩さない謎の男を演じるステイサムは抜群に格好よかった。劇場を出る時にはステイサムのように眉間に皺を寄せてみたくなるが、三十郎氏の顔ではどうにも締まらない。

あらすじ

武装強盗に襲われる危険と常に隣り合わせの現金輸送車の警備。そんな危険な業務を担うフォーティコ社は先日も死者を出したばかりだったが、パトッリク・ヒルジェイソン・ステイサム)という新人が入社。荒くれ者ばかりの警備員たちの中にはイギリス出身で愛想の悪いHをよく思わない者もいたが、ある日の業務中に上司ブレットが人質に取られた際、Hは驚異的な戦闘スキルで犯人たちを皆殺しにする。その英雄的行動が讃えられる一方で、彼の正体の疑問を抱く者も出てくる。果たして、Hの正体と目的は何なのか。

感想

最初の二度の強盗撃退シーンは正に“ステイサム無双”。一度目は拳銃一つで顔色も変えずに重武装の相手6人(?)を次々と射殺し、二度目なんて彼の“顔を見ただけ”で相手が逃げ出していく。あまりに無双が過ぎるので笑ってしまう程だったが、これもステイサムならば許される。

二度目の時に犯人が逃げ出した理由は、流石に「ステイサムがあまりに強そうだから」ではない。実はHの正体はマフィアのボスであり、手下たちが「え、親分やんけ……」と気付いて逃げ出したのである。Hは武装強盗の一団に息子を殺されてしまったが、組織による懸命な“捜査”が実ることはなく(Hは手下に八つ当たりしないが怒らないのが逆に怖い。あんな上司がいたら恐怖と心労でハゲる)、最終手段として警備会社に自ら潜入捜査して同じ強盗団が襲ってくるのを待っていたのである。

多くのガイ・リッチー作品において、Hの正体や目的が“オチ”として「実はこうでしたー」と最後にネタバラシされるケースが多いように思う。しかし、本作は序盤こそHの“謎”でぐいぐいと物語を引っ張るが、その正体や目的は中盤で明かしてしまう。その後、犯人側の視点から息子殺害の件と次の標的が描かれ、最後にHと衝突する展開である。入社直後のHの行動が「実はこうでした」というネタバラシ的演出はあるものの、あまりガイ・リッチーらしくはない、言わば「正統派」な構成となっている。

このらしくない構成自体は特に問題なかったと思うのだが、Hの「実はこうでした」にせよ、犯人の描写にせよ、もう少しスッキリさせることができたのではないかと思う。重厚な雰囲気の物語なので、一定のペースを崩すことなく物語を進行させたかったのではないかと思うが、説明的な描写が親切すぎて少々クドいように感じられた。Hと犯人の正体が分かってしまえば、後は最終決戦に向けて突き進むに決まっているのだから、犯人視点の描写はもう少し削ってもよかったのではないか。考えてみると、ステイサムのファンを公言しているくせに三十郎氏が彼の活躍をスクリーンで拝むのは『エクスペンダブルズ3』以来である。本作も映画館なので集中して観られたが、自宅鑑賞だと「中盤のテンポが悪い」と不満が大きくなっていたかもしれない。

そして迎えた最終決戦。“顔を見ただけで逃走”の後は鳴りを潜めていたステイサム無双が遂に復活するかと思いきや、無双してるけど意外にポンコツという謎展開。手足を拘束された状態から逆転したり、『ジョン・ウィック3』の敵の如き防弾仕様の装備を身に着けた犯人に立ち向かう姿は無双そのものなのだが、自身も敵のヘルメットを拝借していなければ頭を吹っ飛ばされていたという脳筋な戦い方をしたり、簡単に背後を取られて殺されかかったりする。演じているのがステイサムなので不死身でも不思議ではないのだが、背後を取って殺す気で撃った奴がとどめを刺さなかったのには違和感があった。阿呆だろ。

背後からサブマシンガンで銃弾を浴びせられたにも関わらず生きていたH。ここからの逆転方法については伏線が分かりやすすぎたので驚きはなかったが、最後に仇を始末するシーンは格好よかった。また、仇が“最後の一人”となる過程についても、『ダークナイト』の冒頭を想起させるような「one less share」な展開が犯罪映画らしくて楽しかった。

警備会社の内通者としてデイナ(ニアム・アルガー)が怪しいと睨んだH。ヤることをヤッた後に尋問するのがなんだか可笑しかった。ところで、彼女が疑われたのは件の強盗事件とは無関係な引退資金をタンス預金していたからということになるのだと思うが、Hがそれに気付くような描写は何かあっただろうか。偽身分証などを発行してくれる女(レベッカ・カルダー)が持ってきた調査資料に記載されていたということでよいのか。

内通容疑者の筆頭候補としてミスリード役を勤めるデイヴだが、チンピラ役からマフィアのボス役へと成り上がったステイサムとは対称的に、ジョシュ・ハートネットは雑な扱いを受けるようになったものである。H無双に感化されて共闘するのかと思いきや……なのだから笑うより他にない。