オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『ブードゥーマン』

Voodoo Man, 62min

監督:ウィリアム・ボーダイン 出演:ベラ・ルゴシジョン・キャラダイン

★★★

概要

死者を復活させるブードゥー教の秘技。

短評

1944年のベラ・ルゴシ主演作。『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』以降のイメージがどうしても強く、あまりそういった印象は受けないものの、一応は“正統派”のゾンビ映画ということになるらしい。ゾンビとは、人肉を食らって数を増やす顔色の悪い死者ではなく、ブードゥー教の儀式で死体を復活させた走狗なのである。そんな根本設定を思い出させてくれる本作は、ホラーとしてはポンコツだったが、そのポンコツぶりに在りし日の怪奇映画の匂いを感じることができた。

あらすじ

とある通りで若い女性が車ごと消えてしまう事件が続発していた。映画会社に勤めるラルフが婚約者ベティの家へと向かう道中、ガス欠を起こして立ち往生。偶然に通り掛かったステラという女性に乗せてもらうも、こちらもガス欠。助けを求めて付近の民家へと向かったラルフだったが、その間にステラが姿を消してしまう。

感想

実はステラがベティの従姉妹で、「可怪しい、来ない」と警察に連絡。そこで浮上するのがラルフが助けを求めて門前払いされた民家ということになるだが、そこでは22年前に妻イヴリンを亡くしたマーロウ博士(ベラ・ルゴシ)が、ブードゥー教の秘術を用いて誘拐した女性たちの魂や生命力を転化しようとしていたという恐ろしい話である。

ただし、博士の目論見は確かに恐ろしいのだが、その実行者としての資質には疑問符をつけざるを得ない点が本作の面白さである。そもそもの大前提として、博士は「愛しの妻を復活させるぞ!」と計画を立て、偉そうに手下たちを使役しているだけで、本人はほとんど何もしていない。「このドナーは妻にピッタリ!」「ダメだったか、でもこのドナーなら!」と、ただワガママを言っているだけなのである。どアップで捉えられた彼の表情には迫力があったが、「大丈夫だ、怪しまれてない」と言って全力で怪しまれていたりして、ポンコツ以外の何者でもなかった。

そんなポンコツ博士に代わって実務を担う手下たち。ガソリンスタンドを訪れた女性の存在を博士に知らせるニコラス。彼は単なる連絡係ではなく、なんとブードゥー教の神官である。妻とドナーの間になんやかんやと言いながら座っているだけの博士に代わり、実質的に儀式を取り仕切るのがニコラスなのだが、こいつが凄い。曰く、「ブードゥーは万能なのです!」。彼は博士の願望を実現するだけに留まらず、対象を“遠隔操作”までできるのである。単純に移動させるだけでなく車の運転までさせられるし、本物の能力者だった。どうしてこの男がポンコツ博士の下で下働きのような真似をさせれているのか不思議である。何か弱みでも握られているとしか思えない。冷凍保存もしていないのイヴリンの姿を22年前に死んだ時のまま保つ技も凄かった。

失踪事件の記事を読んだラルフの上司が「このネタで何か企画を」と言い出した時点で予想できるのだが、「~という話だったのさ」というメタフィクショナルなオチである。加えて、「タイトルは『ブードゥーマン』」「主演はベラ・ルゴシで!」と来るのだから、なかなか徹底していたと言えるだろう。これは恐怖を和らげる意図の演出なのか。それとも、博士がポンコツであることを認識した上でコミカルなオチにしているのか。昔の映画の本来の見方は分かりづらい。