オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『ゾンビ津波』

Zombie Tidal Wave, 86min

監督:アンソニー・C・フェランテ 出演:アイアン・ジーリング、エリック・チカシ・リンズビクラー

★★★

概要

波乗りゾンビ。

短評

シャークネード』の監督&主演の最凶コンビによる最新作。サメをゾンビに、竜巻を津波に置き換えただけのアイディア一発ネタ映画のはずなのだが、期待していたよりも全然“普通”だった。食人やゾンビ退治のグロ描写は上出来と褒めてもいいくらいだし、BGMもシリアス風で、ネタ映画的爽快感は割と薄い。『シャークネード』のことを知らない人が本作を観るのかは不明だが、ネタ映画だと認識しない人もいるのではないかと思う。楽しめないことはなかったが、肩透かし感があったのも事実である。

あらすじ

東南アジアの美しい海辺の町エムリスに住むハンター(アイアン・ジーリング)。彼が友人レイと釣りを楽しんでいると、なんと竿に掛かった獲物は死体だった。死体を届け出るために港に戻ろうとするハンターだったが、蘇った死体がレイの姪ジェイダを襲う。死体の正体はゾンビであり、無数のゾンビを乗せた津波が町を襲おうとしていた。

感想

「竜巻」と「サメ」の組み合わせがサメの“無限供給”という意味不明な事態を生み出すものであったのに対し、同じく荒唐無稽であるはずの「津波」と「ゾンビ」の組み合わせが相乗効果を発揮することは特にない。単純にゾンビが津波に乗って町にやって来るだけである。津波被害とゾンビ襲来との両方に同時対処しなければならないということもなく、津波が来た後は一風変わった設定のゾンビと普通に戦うだけの普通のゾンビ映画に近い作品となっている。

ゾンビの詰まった津波なのだから、それこそ“無数”のゾンビが襲来してもよいはずなのだが、何種類かのCGを使い回せばよいだけのサメとは異なり、ゾンビを演じるのは人間である。したがって、等間隔の距離を保って上陸してくるゾンビの数はサメと比べて圧倒的に少なく、『シャークネード』的カオスを期待した者はここで肩透かしを食うことになる。ゾンビを一網打尽にする作戦も、“潮溜まりに電流を流す”というショボいものである上に数がとても少なく、「これだけでいいの?」感があった。ゾンビは比較的“無限発生”させやすい悪役のはずだが、予算の都合次第でそうでもないらしい。

「死体の正体はゾンビだ」とか「津波よりもゾンビに対処するのが大事だ」といった予想を次々に的中させる辺りはフィンのような頼れる主人公のハンターだったが、本作の彼はそこまで絶対的な存在ではない。彼が「助けに行く」と言った直後に対象が死亡したり、家族を守るべく奮闘したフィンとは対称的に「俺には何もない……」と弱音を吐いたりもする。実は“シャークネード的価値観の解体”という裏テーマでもあったりするのではないかとすら思えてくる。最後まで生き残ったものハンター以外はケンジーチェリー・キャシディ)、サム(テイタム・チニキー)、テアニ(テオドラ・ディック)の女性三人だったし、もしかすると最近流行の“脱男性的ヒロイズム”なのかもしれない。本作でそんなことをして何の意味があるのかはさっぱり分からないが。

チェーンソーを適当に振り回していただけの時代の方が圧倒的に強そうだったが、アイアン・ジーリングのアクションだけはパワーアップしている。ハンターは“電流ソード”を武器に戦うのだが、これがチェーンソーのように一撃必殺とはならず、ゾンビと普通に“格闘”している。ケンジーと共闘して粉砕機にゾンビを突っ込むシーンなんかは普通に格好よかった。対するゾンビの方にも何故か格闘スキルがあるし、泳ぐし、頭を切られても死なない。この設定をストーリー進行だけでなく対ゾンビ戦にもう少し活かせればよかったかとは思うが、それは流石に求めすぎか。雰囲気だけはシリアス風であるが、ネタ映画であることを忘れてはいけない。ドラムスティック男やウクレレ男のような間抜けな死に方、電流ソードのようなヘンテコ装備を楽しんでこその一作だろう。

原題こそ『Zombie Tidal Wave』だが、ハンターがちゃんと「ゾンビ・ツナミ」と言ってくれる。

ゾンビ津波

ゾンビ津波

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