オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『ハッパGoGo 大統領極秘指令』

Misión No Oficial(Get the Weed), 74min

監督:ダニー・ブレックナー、アルフォンソ・ゲレロ、マルコス・ヘッチ 出演:ダニー・ブレックナー、ホセ・ムヒカ

★★★

概要

極秘任務:大麻不足を解消せよ。

短評

「世界一貧しい大統領」として有名になったホセ・ムヒカ本人が出演しているウルグアイのモキュメンタリー映画。「大麻を合法化したけど国内需要を満たすための商品がない……」「そうだ!大麻大国アメリカから輸入しよう!」という南北アメリカ大陸における麻薬貿易のルートを逆転させる構図が面白い一作だった。本筋とは全く無関係な描写も多いものの、ムヒカ元大統領が「こういうユーモアも必要なんだよ」と語る通り、バカバカしさの中に皮肉が光る一作だったかと思う。

あらすじ

ウルグアイ国内で大麻が合法化され、薬剤師のアルフレドは大麻ブラウニーを販売するも、大麻仕入元が密輸業者だったために逮捕されしまう。合法化後は軍が栽培する予定だった大麻供給の見通しは立っておらず、国民の不満が高まっていた。そこでムヒカ大統領は、アルフレドに釈放と引き換えに国外からの供給ルート確立の極秘指令を出す。アルフレドは母タルマと共にアメリカへと飛び、ムヒカ大統領がオバマと会談する訪米の日までにアメリカの大麻事情を探る。

感想

密輸業者を撲滅するために大麻を合法化したはずが、密輸によって大麻需要を満たそうとするハメになるという皮肉な話である。麻薬というものはコロンビアやメキシコといった中南米の“特産品”とされているが、本作を通じて見えてくるのは、(恐らくはウルグアイ政府の不備を皮肉る意図もあるのかとは思うが)アメリカ国内で合法か違法かを問わず、いかに大麻が浸透しているかということである。

大麻の合法化を目指す集会や宗教、そして栽培センター等を訪問するアルフレドたち。アメリカにおける大麻合法化は州単位だが、いかに広く愛好されているのかが伝わってくる。もっとも、関係者がちょっと“ハッピー”な感じの人々だとは言え、“合法側”からはウルグアイへと大麻を輸入するヒントを得られない。“突撃パート”的な描写については、あくまでアメリカ国内の“表側”の事情を紹介する程度に留まっていたものの、これが“裏側”の場面で効いてくる。

ルフレドたちはタイムズスクエアでの聞き込み調査からジャマイカ系がニューヨークの大麻を牛耳っているという情報を入手。サッカーを通じて仲介者と仲良くなり、遂に密売人に接触するのである。合法描写の際にも顔にモザイクが掛かっている人がいたのは肖像権の関係なのか分からないが、明らかにフェイクである取引の場面で密売人にモザイクが掛かっているだけじゃないというのが、なんだか無性に可笑しいのである。本物と偽物が同じトーンで描かれているために、偽物も少しだけガチっぽくなっていて笑えた。虚実が上手く入り乱れていた。

ルフレドたちが護身術や射撃を習ったり、任務を忘れて恋人とイチャついてムヒカに怒られたり、母タルマと協力者タトががSMプレイに興じていたりと、大麻とは無関係な描写も多い。非常に短い作品なので、それらの無駄な遊びを入れる必要があったのかは疑問だが、“ちゃんと”しすぎることでコメディという“体裁”が損なわれることを避けたのか。

ムヒカの出演シーンで好きだったのは、アルフレドに前払いの料金としてカボチャを与えるというもの。質素な生活を送ることや庶民感覚が“良い政治家”であることとそのままイコールになるとは思わないが、ある種の身分制と化している世襲議員たちに見習ってほしい面はある。