オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『モーガン プロトタイプL-9』

Morgan, 91min

監督:ルーク・スコット 出演:ケイト・マーラ、アニャ・テイラー=ジョイ

★★

概要

山奥の研究所で開発中の美少女型人工生命体。

短評

リドリー・スコットの息子ルーク・スコットの長編映画監督デビュー作。“人工生命体”を扱うという時点で全力で父親にあやかろうとする薄汚い魂胆が透けていてみっともないのだが、父のレガシーを踏襲した上で奥行きのある物語を描くわけでもなく、ただキャストが無駄に豪華なだけの劣化版『ハンナ』だった。芸術の才能は遺伝によるところが大きいと聞くが、地道に経験を積み重ねることなく親が舞台を整えるとこういうことが起こる。やはり世襲はクソである。三十郎氏はアニャ・テイラー=ジョイ目当てに本作を観たのだが、彼女をはじめとする豪華キャストも「親父の方とコネを作りたくて出演しただけなのでは……」としか思えなかった。

あらすじ

山奥にある研究所で“事故”が発生し、本社から危機管理コンサルタントのリー(ケイト・マーラ)が調査のために派遣される。研究所では人工生命体を開発しており、モーガンと名付けらたL-9(アニャ・テイラー=ジョイ)が職員(ジェニファー・ジェイソン・リー)の目を刺したのである。シャピロ博士(ポール・ジアマッティ)がモーガンと面談したところ、博士の挑発を受けたモーガンが暴走し、研究の打ち切りとモーガンの破棄が決定。彼女を愛する職員たちの手によって破棄を免れたモーガンだったが、自分を殺そうとする人間たちに対して反乱を起こす。

感想

何の仕事をなのかよく分からないリーだったが、暴走するモーガンの姿を見て「これが私の仕事よ」と行動開始。終盤までモーガン開発の目的は明示されておらず、彼女の“感情の発達”をミスリードとして使用してはいるものの、人工生命体なんてものを企業が開発する目的は十中八九軍事利用である。そして、暴走する“兵器”とやたらに強い女が戦うとなれば、その時点でオチは読める。「人工生命体に感情を与えると……」という設定が特に掘り下げられているわけでもなく、「実はこうだったのだ」というシンプルな話だったわけだが、そこに意外性はなかった。モーガンに負けた職員の一人ブレンダも無駄に戦いを挑んでいたが、彼女にも何か裏設定があったりするのか。

仮に人工生命体に感情を持たせた影響を描きたかったとしても、本作の展開では暴走が不可避なのか、モーガンの言う通り「学習の途上」なのかの切り分けができない。それなのに「うーん、L-4の方が優秀だから全力投資!」と決断する本社も無能感がある。

というわけで、兵器として開発された人工生命体vs人工生命体の戦い。ケイト・マーラとアニャ・テイラー=ジョイの二人とも十分な訓練を受けたわけではないのだろう。“短いカット”と“寄りのショット”の組み合わせで誤魔化す演出だけで構成されたアクションシーンは、それでも動きのもっさり感を消しきれていなかった。モーガンも月の裏側から来た生き物みたいに顔色が悪い以外には人工生命体っぽさがなかったし、雑な仕事をしたものだと思う。だいたいL-4の外見が人間と区別がつかないのに、後発L-9の肌の色が不健康っておかしいだろ。

モーガンを挑発して噛み殺されるシャピロ博士(口の周りに血のついたジョイちゃんはよい)。あの面談は受け答えの内容ではなく挑発に対する反応を見る圧迫面接だったと思う。暴走して職員を刺したことが分かっている相手に対して暴走を促すようなことをしているのに、いざ暴走した時に全くの無防備なのは何故なのか。あまりに阿呆である。本社的にはモーガンを暴走させた上でL-4のテストをするという狙いがあったのかもしれないが、それでもなおシャピロ博士はただの死にたがりである。「モーガンに入れ込みすぎて職員がアレかも」と想定しているとは言え、エイミー(ローズ・レスリー)たちの行動まで完全に読んでいたわけではないだろうし、旧型との勝負なんてわざわざ職員を死なせなくてもできただろうに。