オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『リトル・モンスターズ』

Little Monsters, 93min

監督:エイブ・フォーサイス 出演:ルピタ・ニョンゴ、アレクサンダー・イングランド

★★★

概要

幼稚園の先生vsゾンビ。

短評

オーストラリア製のゾンビコメディ。子供たちを守るために先生とダメ男が頑張る話とは言え、ゾンビの能力があまりに高いと守るどころではなくなってしまうため、“ノロい奴”が出てくる方の平和なゾンビ映画である。割とグロい食人シーンがある割には“ほっこり”とした内容で、のんびり楽しく観られる一作だったかと思う。キャロライン先生のプロ根性は凄い。

あらすじ

喧嘩続きだった恋人サラ(ナディア・タウンゼンド)と別れ、姉テス(キャット・スチュワート)の家に身を寄せた路上ミュージシャンのデヴィッド。甥フェリックスを利用した復縁作戦も既にサラが寝取られていたことで失敗に終わってしまう。「居候するならせめて何か手伝え」ということでフェリックスの幼稚園への送迎を任されたデヴィッドは、ウクレレテイラー・スウィフトを奏でるキャロライン先生(ルピタ・ニョンゴ)に一目惚れ。なんとか彼女にアピールすべく、プレザント・バレー牧場への遠足の手伝いを買って出たデヴィッドだったが、牧場の隣にある米軍実験施設で事故が発生し、ゾンビが牧場に押し寄せてくるのだった。

感想

「これはゲームよ」と言って子供たちを怖がらせないように気遣うキャロライン先生。ゾンビ発生という異常事態に直面し、何よりも先に子供のことを考えられる辺りが素晴らしいプロフェッショナリズムである(ベスの回答のように金を稼ぐだけが“プロ”ではないのだ)。その上、“綺麗で優しい”というだけでなく、必要に応じて相手を脅したり、ゾンビの群れにスコップ片手に突っ込んでいくという逞しさまで披露する。問題児っぽい子供の扱いも上手く、もし三十郎氏に子供がいれば彼女に見てもらいたいと思わせるような先生だった。そんな理想の先生に「(子供たちは)前に立つ私を何も疑わず見てくれる」と言わせる演出も上手い。

一方のダメ男デヴィッド。間男を殴り飛ばそうにも返り討ちに遭い、自慢のヘビメタソングは園児受け最悪、トラクターもろくに運転できない。何一ついい所がないように思えるデヴィッドだが、一応は彼こそが主人公である。そんか彼が“実はいいヤツ”な面を見せ、子供たちのために身体を張るという展開はお約束通りであるものの、キャロライン先生ならばデヴィッドさえも“感化”できそうだという謎の説得力があった。

撮影のために牧場を訪れていた人気子供番組の司会者テディ。彼もお約束通りにクソ野郎である。しかし、「アクターズスクールでアル・パチーノから学んだのにこんな仕事したくねえよ。あ、ウンコ漏らしちゃった」と涙ながらに語る彼は、ハートフル過ぎて少しコメディ要素の薄い本作にあっては貴重な存在だった。「収録に来た母親たちと寝るだけが救いなんだ」という告白が妙にリアルである。

“再生プロジェクト”によってゾンビを発生させた実験施設は、地元オーストラリアではなく“米軍”のもの。牧場内に生存者がいるのかを確認することもなく「よし、空爆だ」と決定する横暴さを見せる米軍だったが、オーストラリアにも日本と同じような“属国意識”という劣等感があったりするのだろうか。ただし、プロトコルに逆らって「子供は撃てない」と“情”を優先する人間味もまたアメリカ人らしさだったかと思う。

これだけでは“子供向けゾンビ映画”の感すらあるが、ゾンビの描写自体はかなり気合いが入っていて好印象である。平和一辺倒だと物足りなさを感じるし、ゾンビに立ち向かうキャロライン先生の勇気の価値の低下を招きかねないが、本作にはそれがない。

映画でよく耳にする「douchebag」の語源が分かった。女性の膣を洗う道具なのだとか。へぇ~。