オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『007 カジノロワイヤル』

Casino Royale, 131min

監督:ジョン・ヒューストンケン・ヒューズロバート・パリッシュ、ジョセフ・マクグラスヴァル・ゲスト 出演:ピーター・セラーズウルスラ・アンドレス

★★★

概要

皆007で、皆ジェームズ・ボンド

短評

最新作の公開を控えてクレイグボンドの復習をする前に一休みして番外編その一。タイトルは似ているが1967年に公開された“コメディ映画”の方である。組織の金を失ったル・シッフルがカジノで挽回しようとする点は同じなのだが、あとは自分が今何を見せられているのかたまに分からなくなるくらいには混乱した一作だった。率直に言えば、この映画が面白いのかつまらないのかすらよく分からないくらいのカオスである。制作背景も本編に負けず劣らず混乱していたようだが、よくこんなわけの分からんものを作ったものだと思う。本作を一言にまとめれば「シッチャカメッチャカ」なのだが、そのせいで逆に一見の価値はあるように思えてくる。

あらすじ

隠居生活を送っていたジェームズ・ボンド卿(デヴィッド・ニーヴン)の自宅をMたち諜報の世界の重鎮たちが訪れて助けを乞う。曰く、世界中の諜報員が続々と暗殺されているのだとか。要請を断ったボンドだったが、謎の組織に自宅を爆撃され、その際に命を落としたMの後を継ぐことに。彼は敵を混乱させるために全ての諜報員を“007”ジェームズ・ボンドとすることを決め、旧知のスパイであるヴェスパーや『バカラの必勝法』を著したイヴリン、そして自分とマタ・ハリの間の私生児であるマタ・ボンドをスカウトする。

感想

監督6人、脚本11人の超大作である(非クレジットを含む)。この情報だけでも本作がいかに混乱した過程を経て完成された、そして出来損ないの映画なのかが伝わってくるが、その陣容は意外にも豪華である。ジョン・ヒューストン監督の名を知らない映画ファンはいないだろうし、脚本にも非クレジットながらビリー・ワイルダーが参加していたりする。キャストの方も大物オーソン・ウェルズを筆頭に、“本家”から引っ張ってきたウルスラ・アンドレスウディ・アレンジャン=ポール・ベルモンド(ちょい役)まで出演していて、「普通に作れば普通に面白くなったんじゃないか」と思わずにはいられなかった。これを「もったいない」と思うべきか。それとも「奇跡のコラボレーション」と呆れるべきか。

“コント”の時間が始まる度にストーリーを見失いかけるので一応整理しておくと、組織の金を使い込んだル・シッフル(オーソン・ウェルズ)のオークションによる金策をマタ・ボンド(ジョアンナ・ペティット)が妨害し、それならばとル・シッフルが出てきたカジノでイヴリン(ピーター・セラーズ)がバカラ勝負。イヴリンが見事に勝利を収めるもル・シッフルに拉致されるという展開は三十郎氏の知っている『カジノ・ロワイヤル』と同じだが、そこから先はUFOが空を飛び、そしてアメリカからの援軍と称して西部劇の世界の登場人物が駆けつけたりと、壮絶なカオスだった。

そして、ル・シッフルの属する組織“スメルシュ”のボス“ドクター・ノア”の正体が、ボンドの甥ジミー・ボンド(ウディ・アレン)だったというオチ。彼の「チビと美女しかいない世界を作るんだ!」という性的劣等感がダイレクトに反映された陰謀の全容には笑った。まとめてみると理解できるストーリーがあるような印象を受けるが、各シーンを見ている間はかなりの確率で「あれ、今何してるんだっけ?」である。ピーター・セラーズオーソン・ウェルズ嫌いが混乱のそもそもの原因らしいのだが、車に乗り込んで拉致されたヴェスパーを追跡しようとするイヴリンが何の説明もなく拘束されていたりして、筋の通らなくなっている箇所も多い。

他の豪華出演者。Mの未亡人に扮して遺品のカツラを受け取り、ボンドに惚れてしまうマクタリ夫人ことミミ役にデボラ・カー。“マクタリ家の伝統”の風景には多い混乱させられた。“ミス・太もも”役にジャクリーン・ビセット。英語では「Miss Goodthighs」である。そんな名前を知っている豪華出演者が揃っていたが、ボンド卿が「スパイが女に弱いなんて」と嘆いて開始される訓練プログラムの選抜を担当した、マニーペニーの娘マニーペニー(バルバラブーシェ)が一番セクシーで可愛かった。なんだよ、あのスケスケドレス。