オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『007 ダイ・アナザー・デイ』

Die Another Day, 132min

監督:リー・タマホリ 出演:ピアース・ブロスナンハル・ベリー

他:ラジー賞最低助演女優賞(マドンナ)

★★★

概要

北朝鮮人が整形手術を受けて白人になる話。

短評

ピアース・ブロスナンの引退作となったシリーズ20作目。『ムーンレイカー』がシリーズで最も荒唐無稽な作品だと思っていたが、こいつの存在を忘れていた。北朝鮮という新たな脅威を悪役に選んではみたものの、究極のホワイトウォッシュによってそれすらも無関係になるというネタ映画である。また、CGのクオリティもまだ実写と区別できるレベルの時代の作品であり、それが阿呆っぽさに拍車を掛けている。ブロスナンボンドはエレガントで好きだったが、21世紀のアクション映画の潮流がシリアスへと傾いたことを考慮すれば、引退はやむを得なかったように思われる。

あらすじ

北朝鮮の非武装地帯での兵器取引に潜入したジェームズ・ボンドピアース・ブロスナン)だったが、何者かのリークによって北朝鮮軍人に正体がバレてしまう。捕らえられたボンドは14ヶ月に及ぶ壮絶な拷問の末に人質交換で解放されるものの、拷問に屈したことを疑われ、00ナンバーを剥奪されてしまう。これが気に入らないボンドは施設から脱走し、中国人諜報員チャンからボンドと交換されたザオがキューバにいるという情報を得て現地へと飛ぶ。

感想

ザオがキューバの秘密病院で受けていた治療は“DNA組み換え療法”である。理屈は分からないが、これをすれば東アジア人が白人に生まれ変わることができるそうである。桑田真澄の息子に執刀医を紹介してあげたい究極の整形手術とでも呼ぶべき治療法だが、治療の途中でボンドに襲われたザオは化け物のような容姿のまま逃走するハメになり、一足先に治療を終えていたムーン大佐だけが見事白人に生まれ変わっている。東アジア人時代に男前だった方だけがイケメン白人になっていて、なんだか理不尽だと思った。

謎治療によって顔から北朝鮮要素が消えた悪役だが、その目的の方にも北朝鮮要素は特にない。「イカルス」という強力な太陽光兵器を使って世界征服を目論むという、「このシリーズはレーザー兵器が好きだなあ」と笑ってしまうタイプの悪役である。“10万ボルトスーツ”なんて完全にギャグである。したがって、本作のボンドも『消されたライセンス』と同じく“はぐれ諜報員”となるのだが、そこには一切の悲壮感はなかった。氷の宮殿が融けるシーンなんかは非常に面白かったのだが、やはり“悪役の現代化”という意味では“情報”を支配しようとした『トゥモロー・ネバー・ダイ』がブロスナンボンド作品の中では一歩抜けていたか。

本作のボンドガールは、CIAではなくNSAなのが珍しいジンクス(ハル・ベリー)、敵のPR係だと思ったらMの部下で、Mの部下かと思ったら敵の手下だったミランダ(ロザムンド・パイク)の二人。ミランダ役のロザムンド・パイクは本作で劇業映画デビューを飾っている。本作で初めて彼女を見た時には透き通るような肌が綺麗な美女だとときめいたものだが、まさか後にあんな形で“氷の女”を再演するとは思わなかった。改めて観てみると、ミランダは冷酷な女でありながらもエイミーと比べれば初々しさがあった。『消されたライセンス』のボンド争奪戦とは異なり、本作の“女の戦い”は普通に見応えがある。ボンドガール扱いの対象外ではあるものの、マネーペニーが“VR機器”を使っているシーンは笑える。是非ともあのクオリティを実現してほしい。

Vanquish」と「Vanish」のダジャレのためなのか、アストン・マーティンに戻ったボンドカー。ジャガーとのイギリス車対決である。本作でボンドカーに搭載された“光学迷彩”の機能を見た時には「なんて阿呆な」と思ったものだが、『透明人間』でも似たような技術が使われていたことだし、実は既に実用レベルに達していたりするのだろうか。

本作の主題歌を担当し、フェンシングのシーンに登場するマドンナがラジー賞を受賞している。もっとも、彼女の出演シーンは非常に短く、演技やキャラクターがどうこうと評価できるようなレベルではないため、同じ年に公開された『スウェプト・アウェイ』とのバーターでラジー賞を独占させようという意思が働いたものだろう。