オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『007 トゥモロー・ネバー・ダイ』

Tomorrow Never Dies, 119min

監督:ロジャー・スポティスウッド 出演:ピアース・ブロスナンミシェル・ヨー

★★★

概要

メディア王の野望。

短評

危険すぎるフェイクニュースを扱ったシリーズ18作目。OPクレジット前のシーンからまるでクライマックスの如き“火薬量”であり、“派手さ”を追求したエンタメ路線のブロスナンボンド作品を象徴しているかのようにある。ストーリーについては多少は荒唐無稽でありながらも、従来の物理的戦力によるものとは異なる“支配”の形が示唆されている点が面白く、アクションについても車のリモコン操作やバイクの“二人乗り”といったアイディアが楽しかった。

あらすじ

南シナ海の公海上を航行中の英船デヴォンジャー号が、中国軍から領海侵入との警告を受けた後に撃沈。同時に中国軍機も撃墜され、両国間の緊張が高まる。軍部は艦隊の派遣を主張するものの、それは第三次世界大戦の勃発を招きかねない危険な行為であり、ジェームズ・ボンドピアース・ブロスナン)に調査が託される。ボンドはいち早く事件を詳細に報道したトゥモロー紙が怪しいと睨み、社長のエリオット・カーヴァー(ジョナサン・プライス)に接触を図る。

感想

カーヴァーの場合は「フェイクニュース」というよりも「自作自演」なのだが、彼のように秘密兵器を使った直接介入までせずとも、“メディアが事件を作る”という光景はそう珍しいものではない。劇中で「メディアが開戦を煽りだす前に事態を収集しなきゃ」というような台詞が出てくる通り、“扇動”という形で世論が、そして事件が生み出される。最近だと、「マスク不使用の人がいます」と批判的に報道した映像の直後にスタジオのアナウンサーがマスク不使用という間抜けな光景が象徴しているかと思うが、マスメディアというものは影響力や社会的責任の大きさの割に、営利企業としての私利私欲を優先しがちである。なかなか皮肉の効いた悪役だった。

本作のボンドガールは、デンマーク語の先生インガ(セシリア・トムセン)、ボンドに寝取られるカーヴァー夫人パリス(テリー・ハッチャー)、自称新華社通信の中国公安局員ウェイ・リン(ミシェル・ヨー)の三人。インガとベッドにいる時に招集を受けたボンドの「一時間で行く」がマネーペニーに「30分」と短縮されたり、これまでなら正ヒロインになりそうなパリスがあっさり殺される辺りに変化が感じられる。また、リンについてもラストシーン以外では恋愛要素が極めて薄く、ほとんど“サイドキック”とでも呼ぶべき役割が与えられていた。リンとボンドが手錠で繋がれた状態のアクションシーンは非常に面白く、この時代の映画の方が女性の活躍を上手くエンタメに組み込めているような気さえしてくるのだが、これは「最近の映画は主張がクドい」という先入観のせいだろうか。

冒頭の武器取引所襲撃シーンから迫力満点ではあるものの、やはりアクションシーンの見所は上述の通りボンドカーのリモコン操作とバイクの二人乗りか。前者はありそうでなかったアイディアで、まるでテレビゲームをしているみたいで楽しかった。後者はバイクのハンドルを“片方ずつ握る”という構図が素晴らしく、ボンドとリンの対等な関係を象徴していたかと思う。

中国での100年分の放映権を得る密約をチャン将軍と結んでいたカーヴァーだが、妻をボンドに寝取られて殺してしまい、100年分の権利を得たところで後継者はいるのだろうか。成功者らしく“若すぎる妻”と結婚していたが、本人にはまだ“作る”能力が残っているのか。立派な自社ビルも「短小コンプレックス」だとバカにされていたし、妻を満足させられずに逃げられるしで、偉そうにしている割には「薔薇の蕾」と言い残して死にそうな孤独感があった。

最終決戦の舞台はベトナムハロン湾。ずっと「行きたい行きたい」と思っている。先日、ようやく二回目のワクチン接種を終えたのだが(二回目の副反応はキツかった)、それだけでパンデミックが何とかなるわけでもなさそうだし、果たして、いつになったら海外に行けるのだろう。ワクチン接種を終えたからと言って行動を変えない方がよさそうではあるものの、映画館に行くくらいは“許容範囲”として回数を増やそうかと思う。