オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『007 ゴールデンアイ』

GoldenEye, 130min

監督:マーティン・キャンベル 出演:ピアース・ブロスナンイザベラ・スコルプコ

★★★

概要

ロシアの超EMP兵器。

短評

五代目のピアース・ブロスナンに代替わりしたシリーズ17作目。三十郎氏は世代的にボンドと言えばブロスナンである(後にクレイグに塗り替えられたが)。三十郎氏にとっては本作がシリーズの“入り口”となった作品でもあり、同世代であればNINTENDO64のゲームで遊んだ経験を持つ人も多いかと思う。荒唐無稽な兵器の登場やエレガントなブロスナンボンドのキャラクターはムーア時代への先祖返りを感じさせるものの、プロデューサーが父アルバートから娘バーバラへと引き継がれたこともあり、様々な点で現代の映画らしく変化した作品となっている。

あらすじ

006アレック(ショーン・ビーン)と共に化学工場に潜入したジェームズ・ボンドピアース・ブロスナン)。アレックが敵のウルモフ将軍に捕らえられてしまったものの、ボンドは無事に任務を完了。それから9年後、ロシアのセヴェルナヤ宇宙基地がEMP兵器“ゴールデンアイ”によって破壊される。ボンドは犯罪組織“ヤヌス”と捜査と基地の生き残りナターリア(イザベラ・スコルプコ)への接触のため、サンクトペテルブルクへと飛ぶ。

感想

ショーン・ビーンのメタな扱いを知ってからはネタ要素を強く感じてしまうものの、戦いは生きていたアレックとボンドの両者が激突という流れに。二人の格闘シーンでは、演者の格闘能力以上に短いカットを繋げる“編集”の力によって迫力を出しており、演出が現代的になったと感じられた。ただし、アクションの方向性についてはダルトンボンド時代とは違って“豪快さ”や“楽しさ”が重視されており、戦車でサンクトペテルブルク市内を爆走するシーンが象徴的かと思う。戦車ってドリフトするんだな……。

本作のボンドガールは、DB5でのドライブ後にボンドと一戦交える精神分析医のキャロリーヌ(セレナ・ゴードン)、EMP爆撃の生き残りナターリア、そしてウルモフ将軍の右腕ゼニア・オナトップ(ファムケ・ヤンセン)の三人。キャロリーヌは今まで通りの“ちょい役”ボンドガール。ナターリアはプラグラマーとしても奮闘する正ヒロインだし、顔もタイプなのだが、印象としては“もうひとり”に食われてしまっている。やはりオナトップである。彼女の“だいしゅきホールド殺法”は、本作に出会った頃の思春期三十郎氏にとって衝撃的であった。シリーズを順に観てみると、彼女がただ“戦う女”であるだけでなく、性的に受け身でない点にも時代の変化を感じる。

現実のMI5のトップが女性だったという事実を受けてMが女性(ジュディ・デンチ)となり、マネーペニー(サマンサ・ボンド)もボンドに対して「それはセクハラ」と苦言。更にはソ連の崩壊を受けてスパイが過去の遺物となり、Mはボンドに「冷戦の遺物の恐竜」と言い放つ。ボンドガール以外の部分でも女性の描写には大きな変化が生じていた。

Mに指摘された“スパイ不要論”は今後のシリーズに立ちはだかる大きな壁となっており、本作は“遺物”をそのまま利用する形で物語を形成したわけだが、やがて“戦うべき敵”がいなくなってしまったことがブロスナンボンド末期の失速に繋がっているように思う。それを敵の現代化と“精算”という形で乗り越えたのがクレイグボンド成功の一因ではないかと思うのだが、『スカイフォール』を頂点に『スペクター』で同じく失速した感がある。最新作の敵はどう出てくるのか。

最初こそDB5が登場するものの、Qに改造されたボンドカーがBMWだったり、腕時計がオメガになっていて(時計についてはムーア時代にカシオも出ていたが)、これまでの作品以上に“広告”の要素が強くなっている。確かスーツもブロスナンからイタリアのブリオーニに変更されたはずである。かつては特に意識もせず暢気に「格好いいなあ」とばかり思っていたが、この“イギリス離れ”をどう考えたものだろう。まあ、(ネクタイの柄以外は)格好いいのだけど。

ボリスがボンドの“ペンは剣よりも強し”なペンをカチカチするシーン。爆発の条件はQが事前に説明しているが、それがもっと分かりやすくなるように工夫していれば、ヒッチコック映画のようなサスペンスが成立したと思う。

四半世紀も前となると“一昔前”の感がありはするものの、本作以降の出演者には“007に出ている人”以外のイメージを持った知っている俳優が増えており、ようやく“最近”になってきたように感じられる。