オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『007 消されたライセンス』

Licence to Kill(License to Kill), 133min

監督:ジョン・グレン 出演:ティモシー・ダルトンキャリー・ローウェル

★★★

概要

フェリックス・ライターの敵討ち。

短評

ダルトンボンドの引退作となってしまったシリーズ16作目。これまでにも“辞める辞める詐欺”をしてきたボンドが本当にMI6を辞めて友人の敵討ちをするシリアスな話なのだが、最終的にやはり詐欺で終わるのはお約束といったところか。「敵討ち」の方向性だけが明確である一方、「では、実際に何をするのか」については少々迷走した感はあった。ボンドガールによる“ボンド争奪戦”が繰り広げられたり、“はぐれ諜報員”となったボンドをQが駆けつけて助けてくれたりと、他作品にない見所のある一作ではあったかと思う。

あらすじ

ジェームズ・ボンドティモシー・ダルトン)が親友フェリックス・ライターの結婚式へと向かっている道中、DEAがやって来て「麻薬王サンチェスが現れた」と言い出す。ボンドも助っ人として参戦し、フェリックスたちは見事にサンチェスを捕まえたものの、サンチェスは捜査官を200万ドルで買収。護送中に脱走したサンチェスはライター夫妻を襲い、新婦デラが死亡、新郎フェリックスは重傷を負う。ボンドは敵討ちを誓うもMに止められ、007の職を辞して単身サンチェスを追うのだった。

感想

ボンド映画はサメが好きである。拉致されたフェリックスは、肉の塊と“天秤状態”で吊るされてサメの水槽の上に。より重い肉が先に沈んで食べられ、食べられて軽くなると次はフェリックスが沈んで食べられる。何とも残忍な処刑方法に思えるが、準備が大変そうな割に肉の方で腹が膨れたのかフェリックスは脚を食われるだけに終わっており、少々間抜けでもあった。こんな奴に狙われるなんてCIAは危険な仕事だが、結婚式の直前に標的が出現したからと言って代替要員を使わずに緊急招集されるのもブラックだと思う。

普通「敵討ち」と言えば、「野郎、ぶっ殺してやる!」と“殺害”を最終目標にすることが多いかと思うが、それでは諜報員的に芸がないと思ったのか、ボンドは“サンチェス帝国”の解体を目論む。これが感情で突っ走ってMI6を辞めた割には随分と冷静に感じられ、復讐の物語としては“捜査パート”が中弛みしていたように思う。ボンドは別組織の捜査の邪魔をしており、友人思いはよいがちょっと迷惑な奴だった。

本作のボンドガールは、そもそもの事の発端となったサンチェスの愛人ルペ(タリサ・ソト)、フェリックスが残したサンチェスの資料に名前があったのでボンドが会いに行くパム(キャリー・ローウェル)の二人。サンチェスがアメリカにいた理由は、間男に寝取られたルペを奪還するためである。本人が直接乗り込むくらいだから入れ込んでいるのかもしれないが、その分だけ彼が何をしても「寝取られ男のくせに……」という嘲笑が紛れ込んだ。

本作は珍しく二人のボンドガールのいずれかが“途中退場”しない。二人が最後までボンドを奪い合うという展開なのだが、劣勢に見えるパムの方に『黄金銃を持つ男』の“グッドナイト感”があった。同作との違いはルペの方が美人という点だと思うが、“庇護者となる強い男”を求めているだけの愛人気質なルペでなく、共に戦ったパムを選ぶ辺りがボンドの男気である。三十郎氏ならルペにコロっと騙されている。

MI6を辞めたボンドを気にかけてくれる優しいマニーペニー。彼女がQに連絡し、Qが休暇をとって南米まで飛んできてくれる。いつもボンドに苦言を呈してばかりだが、優しいお爺ちゃんである。“掃除のおじさん”に変装しているのが可愛かった。

本作には“忍者”が登場する。これは香港の麻薬取締組織なのだが、日本文化のイメージが強い忍者の起源も中国にあったりするのか。もっとも、この忍者は明らかに浮いてしまっていて、こういう“遊び”をしてもいいのはムーアボンドまでという気がした。

ムーアボンドがお気楽路線だったため、ダルトンボンドになってからは話が“締まった”感じがして好印象だったのだが、偶数代目ボンドは基本的に短命である。ダルトンの降板には契約の問題で次作までの製作期間が空いたことや本人が役者としてのイメージの固定を嫌ったという事情があるようだが、ボンド役の人気を利用した方が結果的には他にも好きな役を演じられたのではないかというのはお節介か。

ライセンスはイギリス英語だと「Licence」で、アメリカ英語だと「License」らしい。邦題は一作目の劇場公開タイトルと被るのでこの形になったのかと思ったが、『Licence Revoked』の仮タイトルの翻訳がそのまま流用されたそうである。