オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『007 リビング・デイライツ』

The Living Daylights, 131min

監督:ジョン・グレン 出演:ティモシー・ダルトン、マリアム・ダボ

★★★★

概要

KGB将軍を亡命させたら速攻で奪い返される話。

短評

四代目ティモシー・ダルトンに代替わりしたシリーズ15作目。お気楽路線を突き進んだムーアボンドから一転してハードアクションなシリアス路線である。故ダイアナ妃が「最もリアルなジェームズ・ボンド」と評したように割と人気もあるイメージなのだが、残念ながら二作品の短命に終わっている。作品としても、敵の野望にショボさを感じさせるところがあるとは言え、スペクターとは異なる形で「金>イデオロギー」となる冷戦後の世界を予感させる内容だったかと思う。評価が通常よりも一段階上のなのは、ボンドガールの好みと作品の評価がイコールになっていることは否定しない。

あらすじ

ジェームズ・ボンドティモシー・ダルトン)は、ブラチスラヴァでのKGB将軍コスコフの亡命に手を貸して成功させるが、程なくしてKGBに奪い返されてしまう。コスコフは拉致される直前にプーシキン将軍が「スパイ暗殺計画」を企んでいることを明かしていたため、Mはボンドにプーシキンの暗殺を指示。しかし、独自の勘できな臭いものを嗅ぎつけていたボンドがブラチスラヴァに戻ると、コスコフの亡命が芝居であることが判明するのだった。

感想

前半は流れは非常に面白い。亡命したKGB将軍の争奪戦が行われたかと思えばヤラセで、コスコフの証言も邪魔になったプーシキンをボンドに始末させるためのもの。二つの意味でMI6が彼に踊らされていたという展開である。テンポもよく、説得力もある。この事実が判明した後に、彼がアメリカの武器密輸人ウィテカーと手を組んでアフガンで金儲けを企んでいたという“真相”には失速した感があったものの、上述の通り、終わりの近づく冷戦後の世界の変容を上手く捉えてはいただろうか。「敵の敵は味方」方式の仲間が後に……というのは、『ランボー3』と同じく皮肉である。

本作のボンドガールは、ボートで「いい男いないかな~」と嘆いていたらボンドが“降ってくる”リンダ(ケル・タイラー)、コスコフが亡命する際にスナイパー役を演じたチェリストのカーラ(マリアム・ダボ)の二人。リンダは純然たるちょい役のため、実質的にはカーラ一人である。“おっぱい圧殺拳”の色仕掛けをしていたロジーカ(ジュリー・T・ウォーレス)はカウント対象外だろう。理想の死に方ではあるものの、あまり羨ましくはなかった。ボンドがプーシキンの妻(or愛人)ルバビッチ(ヴァーニジア・ヘイ)の服を剥いで“おっぱいドッキリ”を仕掛けた際、彼女の“先端”が映り込んでいる。

ムーアボンド時代のボンドガールたちが“強く”なる傾向を見せていたのに対し、カーラは“世間知らずの小娘”の感が強く、これが可憐なビジュアルとマッチしていて非常に可愛かった。この“好み”というのは性差別的なのかもしれないが、三十郎氏が“守ってあげたくなる乙女”が好きだからと言って媚びてくる女性は存在せず、むしろ逆の方向性への成長を促しうるのだから、実際上の問題はあるまい。カーラも最終的にはボンドを救おうと雄々しく馬を駆るが、“助ける”というよりは“邪魔している”感が強く、シリアスな雰囲気に上手く緩急をつけていた。本作はカーラの“大冒険”でもあるのだ。

まあ、何だかんだ言ったところで、三十郎氏がブロンドとボブカットの組み合わせ、そしてパッチリお目々の“お人形タイプ”に心を奪われたことは否定しない。ナースコスプレも可愛かった。本作ではマニーペニーもキャロライン・ブリスに代替わりしているのだが、彼女が普通に美人なので、ボンドガールに魅力がないと「マニーペニーの方がよくない?」という疑問が浮かんでしまう。カーラにはそれがなかった。

冒頭のSASとの演習に紛れ込んだ敵との戦い、新ボンドカーのアストン・マーティンV8に搭載された“オプション”の数々、そして輸送機からの“ジープ着地”。この三つがアクション的な見所だろうか。もちろんスタントマン頼りの部分はあるのだろうが、ムーアに比べると本人が演じているところとのギャップが薄い。最後の着地シーンは輸送機の方が普通に着地体勢に入っていたので強いてやる必要はなかったように思うが、発想は面白かった。

シリアスボンドなティモシー・ダルトンではあるものの、リンダに誘われて本部との合流を延期したり、任務中に「あのチェロの子かわいいなあ」と言い出して同僚に呆れられていたりと、“ちゃんとボンド”な部分もあった。