オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『007 ユア・アイズ・オンリー』

For Your Eyes Only, 128min

監督:ジョン・グレン 出演:ロジャー・ムーアキャロル・ブーケ

★★★

概要

沈没船とミサイル誘導装置の捜索。

短評

シリーズで最も荒唐無稽だった前作『ムーンレイカー』からの反動なのか、一転してリアルアクション路線に走ったシリーズ12作目。これまで前作に対しては悪いイメージを、本作に対しては良いイメージを抱いていたのだが、今回で完全に逆転した。本作も決して悪くないとは思うのだが、『ムーンレイカー』の直後だと物足りなく感じられて仕方がないのである。ストーリーも寄り道が多い割には小さくまとまっていたように思う。ただし、他作品とは雰囲気の異なるクールビューティーなボンドガールは素敵だった。まったく、自分の記憶も評価もまるで当てにならない。

あらすじ

アルバニア沖で活動中のイギリスの監視船セント・ジョージ号が沈没。船にはミサイル誘導装置“ATAC”が搭載されていたため、ソ連は早速その入手に動く。対するイギリス政府は海洋学者のパブロック博士に調査を依頼していたが、博士夫妻が暗殺されてしまう。ジェームズ・ボンドロジャー・ムーア)は暗殺犯を追ってマドリードに飛ぶも、暗殺者から情報を聞き出す前に博士の娘メリナ(キャロル・ブーケ)が復讐を遂げてしまうのだった。

感想

手掛かりを失ってしまわれたかに思われたボンドだが、紆余曲折を経て黒幕とATACに辿り着くという展開。この犯人探しの“ミステリー”があまり面白いものとは思えず、ただ地味なだけという印象を受けた。「真の敵は身内にいた!」という展開は定番かもしれないが、諜報機関がまんまと騙されているのは情けない。この犯人探しについてはボンドの活躍というよりも、Qの(メガネを買い換えるだけで機能しなくなりそうな)“似顔絵検索機”と愛人を寝取られたのに協力してくれたコロンボによるところが大きいだろう。

マドリードから北イタリアに飛び、スキーをはじめとする“ウィンタースポーツ”に挑むボンド。次はセント・ジョージ号の沈む海でのダイビング。そして、黒幕のいる僧院にロッククライミングで潜入。なんだか“スポーツ大会”の感のあるアクションだったのだが、金メダル獲得を目指すフィギュアスケーターの少女も登場することだし、意識した部分があるのだろうか。

スキーのシーンではスキーで逃げるボンドとバイクで追ってくる敵という構図なのだが、一見後者が有利そうに思えるが、雪山だとバランスが取りづらくて逆に不利という気がしなくもない。追手がコケた後にバイクを投げつけて怪力アピールしていたものの、ジョーズの後では雑魚である。

ダイビングのシーンにはサメが登場する。ボンド映画にはサメがよく出てくるため、サメ映画に脳を毒されてしまった後だと無駄に嬉しくなる。なお、サメが人間に食いつくシーンが本物にしか見えないのだが、どうやって撮影したのだろう。サメ映画にも見習ってほしい。

“楽しさ”重視のボンド映画にあって、ロッククライミングのシーンは珍しく“緊迫感”がある。「落下」と「宙吊り」はムーアが演じているわけではないだろうが、これも高クオリティである。

本作のボンドガールは、復讐に燃える娘メリナ、寝取られる愛人リスル(カサンドラ・ハリス。ピアース・ブロスナンの当時の妻)の二人。メリナはいかにもクールビューティーといった感じで素敵なのだが、中身は脳筋熱血乙女だった。黒幕が「彼女の脚は素敵だから縛らなくていいよ」と忖度したためにボンドたちが助かるシーンがあるように、確かに素敵な脚をしていた。ボンドが「おじさんに怒られる」と言って性欲爆発娘ビビ(リン=ホリー・ジョンソン)を拒んだのは、「少女はヤバい」という欧米の認識に基づく場面か。ボンドの下半身にも常識が通用するらしい。

映画冒頭に故テレサ(=トレーシー)の墓とブロフェルドが登場“らしき”ハゲが登場。今回は敵もスペクターに戻るのかと思いきや、権利の関係で『スペクター』まで使用できなかったらしい。したがって、ハゲはヘリコプターの遠隔操作でボンドを弄んだ後に、逆に弄ばれて終わりである。「お金ならいくらでも払うからやめて!」と懇願する小物ぶりが絶妙にブロフェルドだった。

Mが「休暇中」という理由で登場しない。これは演者のバーナード・リーが撮影前に亡くなったことによるらしい。