オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『007 黄金銃を持つ男』

The Man with the Golden Gun, 125min

監督:ガイ・ハミルトン 出演:ロジャー・ムーアクリストファー・リー

★★★

概要

三つの乳首を持つ男。

短評

悪役が豪華になったシリーズ九作目。それ以外の見所に乏しい一作ではあるものの、ある種の美学を持った殺し屋が“好敵手”といった印象で好きである。それだけに最後の決闘シーンが“ムーア基準”のアクションでしかないのは残念だが(道場のシーンもキツい)、ボンドガールがコミックリリーフとして上手く機能していたり、あのペッパー保安官が活躍する点も嬉しかった。

あらすじ

MI6に「007」と刻まれた黄金の銃弾が届く。「S」と名乗る送り主はスカラマンガ(クリストファー・リー)と思われ、彼は黄金銃を武器とした殺し屋であった。Mから「お前は恨みを買いすぎてるから狙われても仕方ないね」と任務から外されたボンドは、他の殺しに使われていた銃弾の分析結果からマカオに飛び、アンダース(モード・アダムス)という女に出会う。

感想

ボンドではなくスカラマンガのエピソードから始まるという構成が新鮮である。遺産を狙う小人の使用人ニック・ナックが送り込んだ刺客と決闘して返り討ちにし、「今度の敵はただ者ではないぞ」とアピール。これはワクワクする。また、ボンドガールについても“敵から寝返る女”の方が正ヒロインではないという意外な構成になっており、本編であるはずのソーラーエネルギーの話があってもなくてもよいような内容の割には変化をつける工夫が見られた。

本作のボンドガールは、自分と交わっている際に腹上死(他殺)された男を貫いた弾丸をお守りとしてヘソにつけている女サイーダ(カルメン・デュ・ソートイ)、スカラマンガの愛人アンダース、そしてボンドの助手グッドナイト(ブリット・エクランド)の三人。グッドナイトが最も熱烈にボンドを求めているのだが、いつも寸前に邪魔の入る不憫キャラである。“敵から寝返る女”であるアンダースを正ヒロイン扱いするための噛ませ犬かと思われたが、より可愛いグッドナイトが最後の最後に報われてよかった。お楽しみを邪魔して「グッドナイトを出して」と電話口で言うMに対し、ボンドが「She's just coming」と下ネタを返すのが好きである。他には、拉致されたグッドナイトがトランクをこじ開けると……の場面が好きだった。あの空飛ぶ自動車は『ワイルド・スピード』で使えそうなネタである。

グッドナイト以外にも忘れてはいけないもう一人のコミックリリーフ。前作に続いて登場のペッパー保安官である。「諜報員の助手になったぜ!」とテンション上がるペッパー、無線でグッドナイトに「妻に伝言よろしく!」と頼むペッパー、車が“川越え”する前に「マジかよ……」という表情を見せるペッパー。シリーズ屈指の愛されキャラだと思う。ちなみに、川越えの場面は“横一回転”が加わっていて何気にハイレベルである。

ボンドが香港で合流した中尉の姪コンビと大差ないスタントしかできないため、最終決戦はお化け屋敷的な舞台設定の方に注力している。暗闇や証明、スクリーン、ガラスと様々な仕掛けが施されており、幻想的な空間に仕上がっていた。中には“合わせ鏡の部屋”もある。なお、最終決戦には細心の注意を払ったので大丈夫だったのかもしれないが(映り込んではいるらしい)、サイーダの楽屋のシーンでカメラマンたちクルーが鏡に豪快に映り込んでいる。あまり気をつけていなくて分かるレベルである。

沈没船が秘密基地になっているのが良かった。ちゃんと傾いている。現在は「ジェームズ・ボンド島」と呼ばれて観光名所になっているタプー島の奇岩も印象的である。どちらかと言えば「スカラマンガ島」だと思うのだが、伝わりにくいか。

スカラマンガが愛人に“黄金銃プレイ”をしようとして引かれていた。三つ目の乳首を必要以上に責めさせたりもするのだろうか。