オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『トワイライト・ゾーン シーズン1』

Twilight Zone

監督:グレッグ・ヤイタネス他 出演:クメイル・ナンジアニ、アダム・スコット

概要

未知の世界。

短評

2019年にジョーダン・ピールたちがリブートしたドラマ・シリーズ。とても有名なタイトルではあるが、オリジナル版を観たことはない。雰囲気から察するに『世にも奇妙な物語』のような内容であり、気に入ったエピソードは同シリーズと同じように“不思議な話”として面白かった。その一方で、テーマが前面に出すぎてまるで不思議ではなくなってしまっているエピソードが多く、ジョーダン・ピールが製作に関わった割にはエンタメへの昇華に失敗した印象である。

あらすじ

1『コメディアン』:不人気コメディアンのサミールが“身内ネタ”を披露してみると、これが大ウケ。しかし、彼がネタにした人が世界から消えてしまうという現象が発生する。

2『3万フィートの戦慄』:飛行機に搭乗した記者のジャスティン。彼が機内ポッドキャストを聞いていると、自分の乗っている飛行機が墜落するまでの話が流れはじめる。

3『巻き戻し』:息子の大学進学が決まったニーナ。彼女が息子を大学に連れていく道中、差別的な白人警察官に絡まられる。思わず持っていたビデオカメラを巻き戻すと、なんと時が遡るのだった。

4『旅行者』:クリスマスイブの夜。アラスカ州のとある警察署でもパーティーが開かれていた。しかし、留置所に「旅行者」だと名乗る謎の男が現れる。

5『神童』:有能な選挙参謀だったが、大統領選に敗北してしまったハンクス。失墜した彼が目をつけたのは、大統領選への出馬を表明して人気を集めている少年オリバー。ハンクスは見事にオリバーを当選に導くものの……。

6『火星への旅』:荒廃した地球を脱し、火星へと向かう宇宙船に乗り込んだ五人の宇宙飛行士たち。しかし、離陸の直前に核攻撃の情報が入ってくる。五人はそのまま飛び立ち、地球との連絡なきままに火星を目指すが……。

7『男の中には…』:流星群が降り注ぐ夜、アニー(タイッサ・ファーミガ)は同僚男からのセックスの要求を拒む。しかし、その日を堺に男たちが凶暴化を始める。

8『起源』:理由を知らされることもなくいきなり「国防上の問題」として逮捕されてしまった主婦のイブ。果たして、彼女はどうして逮捕されてしまったのか。

9『ブルー・スコーピオン』:帰宅すると父親が自殺していた人類学者のジェフ。現場にはサソリの描かれた銃が残されていたのだが、ジェフは次第にその銃に魅入られていく。

10『影男』:『トワイライト・ゾーン』の撮影現場にいるソフィー(ザジー・ビーツ)。ジョーダン・ピールの読むナレーションの内容に悩んでいるソフィーだったが、彼女もまたトワイライト・ゾーンに飲み込まれていく。

感想

「ポリコレがエンタメをつまらなくしている」という類の言説が存在するが、三十郎氏はそれに与するつもりはない。問題はポリコレによって旧来の価値観が書き換えられることではなく、その“自己目的化”だろう。EP1やEP2を普通に不思議な話として楽しんでいると、EP3『巻き戻し』はいきなり直球の黒人差別ものである。『男の中には…』はフェミニズム、『起源』は移民問題と、それらの問題を寓話として描く試みであればよいと思うのだが、本作は比喩の範疇を超えている。話のオチが分かった時に「そういうことだったのか」という気付きを観客に与えてこそのSFのはずが、始まった瞬間に狙いが分かってしまうのである。それでは興味を持って観られないし、未知の世界ではなくあまりに現実である。要するに、話の作りが下手なのである。

制作者にとっては立派な啓蒙活動のつもりなのだろうが、いずれも擦り切れる程に描かれてきた、言わば「テンプレ」と化してしまっている内容である。それをSFとして“別の角度”から見せることができなければ、ただ陳腐で説教臭いだけでしかない。「またか……」「もういいよ……」という感情が浮かんできて、遂にはポリコレそのものに対する嫌悪感を抱くようになる人がいるのも理解はできる。『巻き戻し』は「巻き戻すだけじゃ意味ないよ」というメッセージに繋げることで最低限のクオリティを保っていたかと思うが、『男の中には…』は「男は野蛮でどうしようもない連中」というだけの話だし、『起源』についてアメリカ人の視聴者がオチを見るまで分からなかったならば、そいつらはただの阿呆である。

『神童』は「子供を大統領にしてみたら、とんでもなくワガママなクソガキだった」という話。割とド直球のトランプ批判ではあるものの、これくらいがバランスが取れていてよいと思う。

逆に『旅行者』や『火星への旅』、『ブルー・スコーピオン』は“狙い”がよく分からないものの、その分だけ不気味さや理不尽さを楽しめた。『ブルー・スコーピオン』は銃社会の隠喩かと思ったのだが、オチがよく分からなかった。

最終話『影男』はメタフィクションなのだが、あのモノクロのおじさんがオリジナル版のナレーション担当なのか。「メッセージがなければただの怪談よ」と怪談をバカにしていた脚本家が怪談的世界に引きずり込まれる。“現実の一寸先”にトワイライト・ゾーンが存在するという形でシリーズを総括しているわけだが、オリジナル版も同じような“社会派”な作品なのだろうか。